多分……アウト

エリックとのお茶が終わったティールは暇つぶしにブラブラと街を散策していた。

腹はやや減っているが、夕食を食べるにはまだ早い。


(もう少し時間が経つまでこうしてブラブラしてるか)


そう思っていると、不意に肩を誰かに叩かれた。

後ろから流れて来る匂いから察するに、女性だという事は解かる。


「誰だ……って、リーシアか」


「なによその不満そうな顔は」


「別にそういう訳じゃない。ただ急に肩を叩かれるとだれだって驚くだろ」


見知らぬ人物よりリーシアだったのは嬉しいと感じるが、それでも多少は驚いたことに変わりない。


(今日はこの二人に縁があるかもな)


なんて考えていると、手を握られてある店に連れていこうとされる。


「おい、いきなりなんなんだよ」


「ちょっとティールとお話がしたいの。道端で話すのもあれだし、どっかカフェに入って話そうと思ってね」


「分かった。分かったから手を離してくれ」


日に二度もカフェに入って何かを食べれば夕食はいらなさそうだと思いながらも少々強引に手を振り払った。


「あら、ごめね……もしかして照れちゃってた?」


「そんな訳ないだろ」


「ティールは弟みたいな感じだし、私はあんまり気にしないわよ」


「そうかもしれないが、お前はもう少し周囲から向けられる気持ちを考えろ」


弟みたいな感じ。


その言葉は今はもう完全に諦めているティールでもあっても、少々ダメージを食らってしまうワードだ。


そしてリーシアがティールの手を握った場面を第三者から見れば、リーシアはエリック以外にも手を出そうとしているビッチ……そう思われる可能性がある。


ただ、リーシアとしては本当にティールの事を弟の様に思っており、気を許せる相手だからこそ手を握って店に入ろうとした。


(あんまり本人は解っていないのかもしれないけど、人間関係……特に女子同士の関係を上手くやるにはそこら辺を気を付けないと思うんだけどな)


ジンから冒険者時代の話を色々と聞いているティールは冒険者同士の間で実際に起きた問題を知っている。

その中で、女性冒険者同士で起こった問題を当然ある……異性絡みの問題がだ。


「……適当に頼むか」


店に入ったからには何か頼まないといけないと思ったティールはとりあえず軽食を店員に頼んだ。


「夕食前にそんな食べて大丈夫なの?」


「これくらい特に問題はない……多分な」


「そう、男の子だからやっぱりいっぱい食べるもんね。それで一つ質問があるんだけど」


「なんだよ」


「最近、ガレッジさんと色々と話したでしょ」


リーシアの言葉にドキッとしたティール。

確かにティールがガレッジと色々と喋っていた。


だが、討伐が終わってからは全くリーシアと出会っていないので、自分があの件に関わっていたとはバレていないと思っていた。


(もしかしガレッジさんがポロっと喋ってしまったのか? いや、流石にベテランなんだしそこら辺はしっかりとしてる……筈だよな)


ガレッジの口は固いと信じたいところだが、うっかり喋ってしまう可能性は否定出来ない。


「た、確かにちょっと喋ったが、それがどうしたんだ?」


「ティール……明日私に付き合いなさい」


「??? と、唐突だな。買い物に付き合えば良いのか?」


「……それもありかと思ったけど、やっぱり冒険者なんだから冒険よね」


「つまり街の外に出てモンスターを狩るってことか」


「そういう事よ」


いきなりの冒険の誘いに戸惑うティールだが、まだ肝心なことが解っていない。

ティールがバーバスが暴走しないようにリーシアを利用したらどうなのかと、ガレッジに助言した件がバレていないか……まだそこを知れていない。


(とりあえずバレたのかバレていないのかが知りたいんだが……こ、これは下手にその辺りを聞かない方がよろしいパターンなのか?)


もしかしたらそうした方が良いかもしれないと感じたティールはバレたか否かについて聞こうとはしなかった。


「まぁ……別に良いぞ。明日は特に予定はないしな」


「言ったわね、約束よ。時間は……朝の十時にギルドの前に集合よ」


「分かった朝十時にギルド前だな」


「ちゃんと来なさいよ」


こちらを見る目がキラリと光るのを感じたティールは絶対にあの件がバレていると確信したのだった。

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