意外とやる

(……結構やるな)


少々特殊なラージアスキャットは四つの脚と尻尾に牙を使ってティールを攻め続ける。

爪やティールの長剣とぶつかっても欠けることは無い。


前足による連撃をサラッと躱し、前蹴りをぶつけようとする。

しかし後ろ足で跳んで躱しながら尻尾で顔面をぶっ叩こうとする。


「よっと」


膝を折って尻尾を避け、長剣を振って斬撃を放つ。

空中に跳んでいるので避けようがない筈だが、体を捻って無理矢理躱す。


「元が猫だからか、随分と軽やかに動くな」


今の斬撃はティール的には仕留めるつもりで放ったもの。

だが、それをラージアスキャットは容易に躱してしまう。


「あらよっと」


遠距離から連続で刺突を五発放つが、それも軽やかなステップで躱される。


(……え~~~、マジ? 全部躱しちゃうのか。一発ぐらいは当たると思ったんだけど)


これまた予想外の結界に思わずため息がこぼれる。

仕留められずとも、どれかしら当たると思っていた突きが全て躱されてしまう……ティールとしては予想外の展開だ。


「これは……ちょっと本気になった方が良い感じかもな」


脚力強化のスキルを使用したティールは再びラージアスキャットに接近し、全方向から斬撃を繰り出す。

そして緊急時として爪撃を使用して鋭い爪に対応。


ラージアスキャットも脚力強化を使用しているが、練度はティールの方が上なのだで徐々に傷が増えていく。


(全身を使って攻撃してくるのは厄介だが、慣れれば特に問題はないな)


体の動かし方は人型のモンスターと完全に違うが、大体を把握してしまえばそこまで慌てる事無く対処出来る。


「シャーーーッ!!!」


前足二本を使った爪撃をティールに放つが、しっかりと長剣の刃でガード。

ただ、刃には魔力が覆われていた。


(スピードと動きばかりを気にしていたけど、力と鋭さもちょっと厄介だな)


一般的なラージアスキャットと比べて体格が大きいので、その分力も上がっている。

このままで長剣が大きく欠け、最悪折れてしまうかもしれないと思ったティールは慌てて刃に魔力を纏った。


「よっ!!!」


「ッ!!??」


まだまだ腕力では負けていないティールはそのまま押し返し、ついでに腹に蹴りを加えた。


「ギャウッ!?」


不意を突かれたラージアスキャットは蹴りをモロに食らってしまい、後方へ大きく吹き飛ばされる。


(一気に仕留めるか)


戦いが長引くのは少々面倒だなと思い、距離を詰める。

斬って斬って払って突いて斬る。どんどんティールの攻撃速度が加速していく。


その変化にラージアスキャットも気付き、徐々に焦り始める。

そして殆ど攻撃が防げ無くなった瞬間にティールは拘束を使用。


「ニャッ!?」


突然動かなくなった自分の体に驚き、一瞬……ほんの一瞬であるが固まってしまった。


「隙あり、だ」


その決定的な瞬間を逃さず、ティールは刃を振り下ろした。

振り下ろされた刃はラージアスキャットが拘束を振り解くまえにその首を斬り裂いた。


「ふぅーーーー……本当に、強かったな。というか、面倒だった」


もちろん強くもあった。

ただ、それ以上に戦い辛いなと思えるモンスターであった。


(最近、人型の相手に慣れていたかもな)


獣系のモンスターは戦い方にセオリーが無い。

戦っていれば今回のティールの様に慣れていくという場合はある。


だが、大半の者はその型の無さに対応出来ず、傷を負ってしまう。

しかしティールのスピードと反応速度、そしてパワーがラージアスキャットを上回っていたので大きな怪我を負うことなく、無事討伐することが出来た。


「さて、さっさと解体するか」


信じられないかもしれないが、ラージアスキャットの肉は食べられる。

美味いかと訊かれたら……それは少々意見が分かれる。

不味くはないが、上手くはないと答える者が多いかもしれない。


美味ではなく、どちらかといえば珍味といった感想を持つだろう。

なので、一応買取はされる。


ただ、キャット系のモンスターは肉よりその皮が高値で取引されている。

そして錬金術師たちからは眼が需要がある。

勿論、爪も需要があるのでティールは丁寧にラージアスキャットの解体を行った。


(面倒だったが……良い緊張感は得られたな)

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