有難いが……無理
「な、なんなんだ?」
「ティール、多分バースさんに気に入られたのよ」
「そ、そうなのか? まだ会って大して時間は経ってないけど」
ティールとしては何故自分がバースに気に入られたのか全く解らない。
ただ、リーシアは何となく解っていた。
「ティールの強さは、戦いに対する意識的な部分が気に入ったんじゃないかしら。バースさんはそこそこ贔屓する人なのよ」
「……それは鍛冶師として良いのか?」
「えっと……どうなのかしら? でも、別に贔屓していない冒険者を適当に相手しているとは聞かないし……大丈夫だと思うわよ」
事実、バースはしっかりと仕事はしている。
あまり気に入らない客が相手でも、適当な武器を売ったりなどはしない。
そしてバースは店の奥から一つの武器を持って戻ってきた。
「ちょっとこいつを持ってみてくれ」
「は、はい」
箱を空け、取り出された武器をティールは慎重に受け取る。
(これって……どっかで聞いたことがある様な武器だな)
受け取った武器に見覚えは無いが、聞き覚えはある。
「あの、これってもしかして刀って武器ですか?」
「おっ、なんだ知ってたのか坊主」
「師匠からこういう武器もあるって聞いていて……それと見た目が一致していたので」
そう言いながら、恐る恐る鞘から抜く。
そしてその刀身をジッと見つめ……鑑定を使わずともこれは刀だと断言出来た。
(随分と……綺麗だな。ジンさんから貰った疾風瞬閃と同じぐらい価値が高いか?)
まだそこまで素の目が養われている訳では無いが、それでも今持っている刀が業物だということは解る。
「そいつはとある商人から仕入れた逸品でな。名前は豹雷……確かランク六の刀だったか?」
「ら、ランク六!?」
「嘘でしょ!!??」
ティールとリーシアは二人共驚いた。
それはそうだろう、ランク六の武器といえばBランクかAランクの冒険者が扱うレベルの武器。
Cランクの冒険者では、仮にダンジョン内で手に入れたとしても売ってしまう事が多く、持っている者は少ない。
「マジだぞ、マジ。本当にランク六の武器だ。効果としては持ち主の脚力上昇に魔力を消費せずとも刀身に魔力を纏うことが出来る。後は……一瞬だが、自身の体を雷に変えられるって効果か」
「自身の体を雷に……攻撃を躱すカウンター用の技って事ですか?」
「そういう事だ。技名は確か……雷雲だったか? 相手が武器か素手で攻撃してきたら回避だけじゃなく、雷を浴びせる事も出来る超優れた技だ」
「……確かに優れた技ですね」
自身が雷雲を使用してカウンターを仕掛けた場合、雷で相手の動きを一瞬止めてから一閃をぶち込めることが出来る。
(流石ランク六の武器だな。武器一つにそこまでの効果があるとは……それに魔力を消費せずとも刀身に雷を纏えるのは有難い)
魔力は自然回復するが、ラガスの様に特殊なスキルを有しているかポーションでも使わない限り直ぐに回復することは無い。
「でも、それは流石に魔力を消費しますよね」
「おう、大抵の攻撃は躱せるからなぁ……かなり魔力を消費すると思うぞ。でもまぁ……坊主なら大丈夫じゃないか? 多分、魔法剣士タイプだろ?」
「……なんでそう思うんですか?」
「なんでって言われてもなぁ~。この商売やってたらなんとなく解るんだよ。客がどういった戦闘スタイルなのか、な。見たところ、坊主は素手や武器だけじゃなくて魔法も使えそうな感じだからな」
あっさりと自分の特徴を見抜かれたティールは少々焦る。
(職人さん達って鑑定を使わなくても、そこまで解るものなのか?)
全員が全員その様な眼力を持っている訳では無いが、大抵の鍛冶師は鑑定スキルを使えるようになるので、ティールの力がバレやすくなるのは事実。
「ティール……いいえ、何ても無いわ。それで、バーズさんはこの刀をどうするつもりなの?」
「そんなの決まってるだろ。この坊主に買ってもらおうと思ってな」
「……いやいやいや、無理です」
その申し出は有難いが、ティールの懐的にランク六の武器など買うことは出来ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます