まだまだ差はある
お互いに身体強化を使っての追いかけっこ。
ティールもマックスも鍛えているとはいえ、所詮は子供大して速くは無い……なんてことは無く十分に速い。
だが、二人共マナーを守って他人に迷惑にならない様に走っている。
(へぇ~……本当にちょっとは成長したんだな)
ティールが思っていたよりもマックスは成長しており、現時点での脚力で引き離せると思っていたがそうはかない。
しかしティールは身体強化こそ使っているが、直ぐにはバテないように余裕を持って走っている。
それに対しマックスは……残念ながらティール程余裕そうな表情はしていなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……クソがッ!! 逃げ足だけは、速いな!!!」
「逃げ足って……この勝負は俺が逃げ切るかマックスが俺を捕まえるかで決着が着くんだろ? それなら俺がお前から距離を取ろうとして走るのは勝負的に考えて勝ち脚だろ」
「お前の屁理屈なんか、興味ねぇんだよ!!!」
負けてたまるかという思いが強くなり、マックスの速度が少し上昇する。
それに対してティールも追いつかれない様に速度を少々上げる。
そんな二人の様子を村の人々は子供のじゃれ合いの様に見守っていた。
(ん~~……これだけ走って激的に速度が上昇しないって事は、マックスは脚力強化のスキルは持っていないってことで確定だな)
自分が脚力で負けることは無いと思ったティールは徐々に速度を緩めだす。
その抑え方が絶妙に上手く、マックスは自分の脚力の方が勝り始め、距離が縮まっているのだと思っていた。
「へっへっへ、こりゃ追いつくのも時間の問題だな!!!」
「それはどうかな?」
ティールがガチの本気を出せばマックスがどんなに頑張ったとしても追いつくことは出来ない。
徐々に、徐々に徐々にティールとマックスの距離が縮まっていく。
そして、もう手を伸ばせば掴めそうという距離になり……一気に手を伸ばして掴もうとするマックス。
「もう逃がさねぇーーぞッ!!!!」
「いいや、まだまだ逃げるよ」
マックスの手がティールの体に触れそうになった瞬間、一瞬でマックスの視界からティールが消えた。
「なッ!!??」
捕まれそうになった瞬間、ティールは後方に体を捻りながら飛び、マックスの視界から一瞬で消えてしまい、動揺を誘った。
そしてそのままマックスは前のめりになり……地面に激突する。
「へぶっ!!??」
「じゃあな、地面が恋人のマックス。そのまま延々とキスしてろ」
速度を一気に上げ、そのままマックスとの距離を突き放すティール。
直ぐにティールを追おうとするマックスだが、顔面へのダメージと両膝を地面に激突した時のダメージが抜けておらず、直ぐには立ち上がれなかった。
「く、っそが!! ま、待ちやがれッ!!!!」
「誰が待つかよ」
数秒もマックスが動かなければ距離はどんどん離れ、ティールは最初にマックス達と出会った場所まで戻った。
その場にはまだマックスの腰巾着達やリット達が喋りながら立ち止まっていた。
「あれティール、マックスはどうしたんだい?」
「地面と盛大にキスしてた。後はどうなったのか知らない」
ティールの言葉にマックスの腰巾着達はそこまで驚かなかった。
なぜなら過去にティールを追いかけようとしたが振り切られた過去があるからだ。
自分達の大将であるマックスもこの数年で強くなっているが、足の速さだけならもしかしたらという思いがあり、そしてそれは現実となった。
そんな腰巾着達に対してティールの強さを一ミリも知らないリット達はかなり驚いた表情になっていた。
投擲の腕を見せられたらティールがかなり訓練を積んでいるのは知っているので、そこまで驚くことは無い。
だが、身体能力という点でマックスに勝てるとは思っていなかった。
「随分と、足が速いんだね」
「投擲だけを鍛えている訳じゃ無いからな。冒険者の資本は自分の体だ。それを鍛えて無かったら、冒険者として上に行けないだろ」
「……ふふ、そうだね」
リットにとって、ティールは最近は関りの無い同世代の子供。そんなイメージしかなかった。
だが、今目の前に立つティールからは将来自分と肩を並べる存在……の様な雰囲気を感じた。
しかし現実としては肩を並べるどころか、ティールはリットの遥か先に立っており、前に進み続けている。
「良かったらティールも僕達が参加している訓練に参加してみないかい?」
「あぁ~~……悪い、俺一人で訓練している方が集中出来るタイプだから遠慮する。誘ってくれてありがとな。そんじゃ、俺はもう家に帰るよ。そろそろマックスが戻ってきそうだし」
そう言いながらティールはやや速足で自分の家へと向かった。
そんなティールを見て、久しぶりに面と向かって話したが読めない性格をしているなと感じる。
(ちゃんと会っていなかったから余計にそう思うのかもしれないけど、本当に解らないな)
本当に自分達と同年代なのか……リットにそう思わせるほどティールにはミステリアスな雰囲気があった。
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