貰ったその指輪は

オーク数体とオークリーダーを瞬殺し、貴族の娘とその護衛を助けたティールは少しだけ狩りを続け、いつもより早い時間帯に村へと戻った。


そしてそのままリースの元へと向かい、今日一日の間にどのような事が起こったのかを説明する。

ティールからの説明を聞き終えたリースはニヤニヤとした表情で一つ質問した。


「それで、その子はティールが見惚れてしまう程可愛かったのね」


「見惚れてって……まぁ、可愛かったとは思いますよ。というか、完全に自分とは違う人種だなと思いました」


「そうだねぇ……エルフにも、血統は存在する。だからその感覚は私も何となく分るよ。貴族と言うのは優秀な血筋同士を何度も何度も重ね合わせ続けているある意味、一般の者とは違う人種と言っても良いかもしれない」


「でしょうね。悪い印象は無かったですけど何と言うか……やっぱり自分が今まで見て来た人達とはオーラが違うというか、そんな感じでした」


「そうか、それならその少女はちゃんとした人格者だったという事だね」


リースは過去に何度か貴族を遠目から見る事もあれば、接触する機会もあった。

そして貴族には少なくとも二種類あると解かった。


一つは正しい意味で貴族としての自覚があり、それが解って行動している者。

もう一つは自分が貴族、もしくは貴族の子息や令嬢と言う立場を利用して我儘し放題な行動を繰り返すカス。


後者はリースからすれば吐き気がするような人種だった。

何故同じ貴族であってもここまで違うのか。そう頭に浮かんだ疑問は直ぐに解消された。


まだ何も知識が無い子供が悪い方向へと進んで行く最大の原因は周囲の環境。

それ以外の理由をリースは考えられない。


「ティールも将来冒険者になるな、貴族との接し方には気を付けた方が身のためよ」


「そうします。それで、この指輪にはいったいどんな効果があるんですか? 鑑定のスキルを持っていないんで俺には解らないんですよ」


「……もしかしてその指輪にどんな効果があるのか訊かずに別れたの?」


「はい、あんまり関わると面倒だと思ったので少し話してから速攻で別れました」


「ん~~~~……悪い判断では無いけど、正しい判断とも言えないわね。でも、一目でただの指輪じゃ無く……マジックアイテムだと解かる一級品ではあるわね」


リースはこれまで多くのマジックアイテムを見てきており、そのお陰もあって鑑定のスキルを習得した。

なので認識阻害や鑑定の効果を防ぐ魔法が付与されていない限り、大抵の物は鑑定することが出来る。


「どれどれ……ティールが出会った女の子は、もしかしたらかなり有名な貴族の令嬢かもしれないわね」


「そうなんですか? でも護衛の女性達は言ってはなんですけど、あんまり強く無かったと思いますよ」


「そういえばそう言ってたわね。それなら……もしかしたらだけど、その子が貴族の子息からはかなりモテる子なのかもしれないわね」


「モテるのと、そのマジックアイテムを持っているのが関係あるんですか?」


ティールにはリースの言葉の意味が全く解らなかった。

モテると性能が良いマジックアイテムが手に入るのなら、レントは冒険者になれば質の良いマジックアイテムをたくさん手に入れるのかもしれないのか。


なんて馬鹿な考えがティールの頭の中に浮かんだ。


「貴族の子息は親の爵位にもよるけれど、平民とは比べ物にならない程にお金を持っているのよ。だから気になる女の子の気を引こうと、親に頼んで高価なマジックアイテムをプレゼントしたのかもしれないわ」


「はぁ……まぁ、なんとなく解りました。それで、その指輪にはどんな効果があるんですか」


「このマジックアイテムの名前は守護の指輪。自分の意志で目の前に障壁を発動することが出来るの」


その指輪をはめ、リースは実際に魔力を消費して障壁を生み出す。


「おぉ~~~~、結構便利そうですね」


「ええ、本当に便利なマジックアイテムよ。今は私自身が魔力を消費して障壁を生み出したけれど、本当はこの指輪が常に使用者から魔力をほんの少しづつ吸収しているの。そして限界値まで貯まれば消費するのを止めて、その貯めた魔力を消費して障壁を生み出せる」


「なるほど。それなら冒険をしていない休日とかにいつの間にか必要な魔力が溜まっているということですね」


「そういうことね。ぶっちゃけ戦闘中にも魔力を消費しているのだけど、戦いの邪魔になるほど魔力を吸収している訳じゃない。あと、このマジックアイテムの本当の凄いところは本当に緊急事態になれば、勝手に障壁を展開する効果よ」


「自動で障壁を……それはとても有難い効果ですね」


「奇襲を防げるマジックアイテムとしては中々に有能ね。高質なマジックアイテムなだけあって障壁の頑丈さも期待して良いでしょう」


指輪を返されたティールはゆっくりと自分の指にはめる。

すると指輪は自動的にティールの指にジャストフィットするサイズへと変わった。


「しかも自動でサイズ変更が可能。もしかしたら侯爵家か公爵家の子息からのプレゼントかもしれないわね」

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