第13話 異世界の魔力事情

 俺(ロビン)には魔力があるってことか。

 いや、あの口ぶりだとこの異世界の人間全てが魔力を持ってるのかもしれん。

 ここは注意深くドクターたちの会話を聞いておいた方がいいな。


「でも、先程はとても元気そうでしたわ」

「本当は二三日にさんにち動かさずにここで安静にしておいて魔力が戻ってから家に帰った方がええんじゃがのう」

「あぁお願いよドクター!私がずっとそばにいて気を付けますから!」

「どうしてもと言うなら治癒師のマディを同行させるんじゃ。そうせんとワシはもう責任持てんぞい」

「もちろんそうします! あぁドクターには本当に感謝しておりますわ」

「何かあったら直ぐに対処できるようにマディをずっとロビンのそばに置いておくんじゃぞ。ロビンの為に絶対じゃからな」

 ドクターは護衛のルディが俺から遠ざけられないよう念を押していた。GJだ。

「ええ、ええ、必ずそうしますわ。ロビンの為に」


「よし、それじゃあ家に帰る為に少しロビンを寝かせてやれ」

「分かりましたわ」

「夕方までにはマディがロビンを連れて行くからの。それまでに家族へ説明をしておいてくれ。間違ってもよみがえりなんて言うんじゃないぞ。あくまでも頭を強く打って失われた意識が戻っただけじゃなからな」

「承知しておりますわ。復活したなどと噂されてはロビンの周りが騒がしくなってしまいますもの」


「しばらくは家族以外と会わせるのも厳禁じゃ。脳に障害が残っとる内にたくさんの人と会わせると混乱して性格にまで影響してしまうからの」

「はい、常に私が世話をしてメイドとも距離をおかせます」

「それがええ。できるだけ他人は遠ざけるんじゃ」

「必ずそう致しますわ」


「あとは毎日ここへ通院させるんじゃぞ。脅すつもりはないがまだ魂の定着が不安定じゃから処置が必要なんじゃ」

「はい、毎日私が付き添って通いますわ」

「それは駄目じゃ」

「どうしてですの!?」

「お前さんが一緒じゃとロビンが興奮して不安定な魂によーないわい」

「そんな・・・」

「お前さんは年頃の男には魅力的過ぎるんじゃ。家だけで我慢せい」

 魅力的なママさんにここへ付き添われるのは確かに困る。

 クラウリーの家はロビン殺害犯からの避難所にしてトレーニングジムだからな。

 この過保護な母親がいたらランニングすらできないだろう。


「ママ、僕も我慢するから、ママも我慢して。ね?」

「ロビン・・・・・・分かりましたわ。ドクターの仰る通りに致します」

 ふぅ、何とか引き下がってくれたか。

 家に帰ったら、たっぷりと甘えて母性本能を満たしてやらないとな。

 

「そろそろロビンを寝かせてやらんと。お前さんは早く家に帰ってロビンを迎える準備をしてやるとええ」

「そうですわね」

 言葉とは裏腹にまだロビンと一緒にいたそうなママさんは、それでも不満と不安を飲み込んで帰る決心をしてくれた。

「ロビン、ママはお家で待ってますからね・・・」

「安心してママ、僕は絶対にママの所へ帰るから」

「ええ、必ず帰ってくると信じてるわ」

 ロビンの頬に熱いキスをしてから美貌の母親は帰っていった。




「魔力について教えてくれないか?」

 ロビンママが帰ったあと、少し早めの昼食の席でドクターに問いかけた。

 空き部屋での診察では俺にも魔力があるような口ぶりだったよな。

 ということは、俺にも魔法が使えるってことじゃないのか?

 ファイアボールで攻撃したりホイミで体力回復できたりするのか?


「ほ、お前さん何でそんなことも知らんのじゃ?」


 しまった!

 魔力を知らないってことは俺がこの世界の住人じゃないとバラすのと同じだ。

 うーん、まぁいいか。

 この二人には教えても支障はないだろう。


「俺は魔力などない別の世界から召喚されたからな」

「な、何じゃと! そんな世界が他にあると言うんか?」

「おいおい、俺を召喚したドクターが知らなったのか?」

「悪いが全く知らんかったわい」

「無責任にも程があるな。まぁとにかくそういう訳だから教えてくれ」


「まあ魔力というのは心の力、精神力みたいなもんじゃの。この世界では誰でも持っとるし、逆に魔力が無くなると死んでしまうわい」

「そういえば、俺に変な紙をくわえさせて魔力を調べてたよな?」

「あれはビラノバ試験紙じゃよ。唾液に含まれた魔力量によって色が変わるんで簡易の魔力残量テストとしてよく使われとるんじゃ」

「それで俺のテスト結果はどうだったんだ?」

「残量20%というところかの」

「どうしてそんなに少ないんだ?」


「そりゃお前さん・・・昨夜マディとやったからに決まっとるじゃだろが」


 セリフの後半はルディを気にして小声になっていた。

 当のルディは恥ずかしそうに顔を赤くして伏せていてる。

 だが今はアマゾネスメイドに気を使ってる場合じゃない。許してくれ。


「なるほどな。そういうことだったのか。ルディの中に子種を出した時に体中からエネルギーも一緒に吐き出されたような感じがしたんだ。あれは魔力が抜けていってたんだな?」

「その通りじゃ。しばらくは体が動かんかったじゃろ?」

「ああ、三回で精魂尽き果てて指を動かすのもしんどかったよ」


「さ、三回じゃとおおおおおお!!」


「お、驚かすな。紅茶まで吐き出すところだったぞ」

「驚かしとるのはお前さんの方じゃ。昨夜、三回もやったっちゅーのは事実なんか?」

「嘘を言ってどーする。信じられないならルディにいてくれ」

「マディ、本当に本当なのか?」

 うわ、マジでルディに訊きやがったこの爺さん。

 

「・・・事実です。三回子種を注いで頂きました」

 淡々と答えているけど、声がちょっと震えていたのを俺は聞き逃さなかった。

 照れているのか、興奮しているのかポーカーフェイスで分からんがな。


「嘘じゃろお、お前さんもどうしてロビンを止めなかったんじゃ。下手をしたら昨夜で腹上死しとったぞ。というか今生きとるのが奇跡じゃわい」

「何の冗談か知らないが、大袈裟にも程があるだろ」

「大袈裟なもんか!立て続けに三回もやったら魔力枯渇で死ぬぞ。じゃから普通は二回目で気絶するんじゃ。本能がヤバイと告げてこれ以上やらせんようにのう」

 

「しかし、ロビンは疲れてはいましたがまだ元気でしたので・・・」

 そうだね。下半身はまだギンギンだったから快く受け入れてくれたよね。

「ルディを責めるのは止めてくれ。俺から求めたことだからな」

「いえ、ロビンの体をもっと気遣うべきでした」

「いいんだよ。どうやら俺は特別みたいだからな。そうだろドクター?」


「そうみたいじゃのお。もともと魔力を持っとらんかったお前さんの魂は、体が魔力切れになっても平気なのかもしれん。じゃがそれはあくまで推測じゃ。ハッキリするまで無茶はせん方がええぞ」

「そうだな。たった三回で体が動かくなったのは事実だ。無理せずに少しずつ探り探りやっていくさ」

「それがええじゃろ。しかしたった三回とか言うとったが、普段は一晩で何回ぐらいやっとったんじゃ」

「ルディのような魅力的な相手となら六回はいけてたな」

「ふぉっ、お前さんの世界の男は性獣みたいじゃな。さぞかし人間が増えて仕方なかったじゃろうに」


「そうでもない。俺の国はむしろ人口がどんどん減っていた」

「一晩で六回もできる性獣が揃っとって何でそうなるんじゃ?」

「・・・本当にどうしてだろうなあ」

 ドクターは呆れた顔をしていたがそれ以上は突っ込んでこなかった。


「そんなことより、魔力が全回復したら使えるか俺にも魔法が?」

 そう、ここが大事だ。

 魔法が使えれば戦闘力が上がって生存率も上がる。

 期待に胸を膨らました俺に返ってきた言葉は想定外のものだった。 


「男が魔法を使える訳ないじゃろが」

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