第11話 ロビンママ襲来
「お前さん、本当にやりおったんじゃのお」
朝食の席で、かいがいしく俺の世話をするマティルダさんを呆然とした顔で見ながらドクターが
「俺はやる時にはやる男だ」
「まあマディも幸せそうで良かったわい。それに何よりもキャシーに元気なロビンを返してやれそうでホッとしたぞ」
「そのロビンの母親は今朝にでも現れるかな?」
「間違いなく来るじゃろうな」
「なら急いで今後の事を決めておこう」
現時点ではロビン殺害の犯人は見当すらついてない。
ロビンの自宅が一番の危険地帯かもしれないんだ。
「ロビンの蘇生には成功したが、記憶障害があるし身体もまだ万全じゃないので医者であるクラウリーの家に入院するという事にしたいんだが、どうだろう?」
「キャシーが納得せんじゃろうなあ。必ず連れて帰ると思うぞ」
「そうか・・・なら通院するってことでどうだ?」
「それなら何とか説得できるじゃろう」
「助かる。通院の送り迎えはマティルダさんにお願いできるかな?」
「承知しました。さんは要りません。マティルダで結構です」
ふむ、俺たちは非公式だがもう夫婦みたいなもんだ。さん付けはおかしいか。
でも、マティルダというのも芸がない。ドクターだってマディと呼んでるし。
俺も何か自分だけの呼び方がしたいな・・・・・・
ルディはどうだろう? うむ、悪くない。
「じゃあ、ルディと呼んでもいいかな?」
「はい」
「よし決まりだ。ルディとドクターは俺の事をちゃんとロビンと呼んでくれよ。中身は別人だとバレないようにな」
「分かっとるわい」
「母親が来た時には病人らしくベッドで寝てた方がいいな。どこかに空き部屋はないか?」
「二階のマディの部屋の隣を使うとええ」
「ありがとう」
あとは母親が来るまで少しでも現状を確認しておきたいな。
「ロビンの家からここまではどのぐらいの距離なんだ?」
「馬車で20分というところかの」
「その間に危険な場所はあるかな?」
「襲撃されそうな所なら特に無いわい。ロビンの家の周りは人通りが多くて人目に付くし、ワシの家の周りは人目は無いが隠れる場所も無いからのお」
「それに私が付いていますから大丈夫ですよ」
ルディの頼もしい言葉には彼女の手をギュッと握って答えた。
「ロビンの家はかなり大きかったりするのかな?」
「中規模の屋敷じゃよ」
庶民の俺には想像しにくいがそれだと当然いるんじゃないかな。
「住み込みのメイドはいるのか?」
「そりゃおるじゃろ。ワシが出入りしとった時には住み込みが4人で通いでも4、5人来とったぞ」
「昨日教えて欲しかったよ。容疑者がさらに増えたな」
しかも血縁者じゃなくて赤の他人だ。
ロビンを殺すのに
これは下手したら自宅初日でバッドエンドもあるぞ・・・
「私が一緒にモア家に行きそのまま泊まり込みます」
「おお、それなら安心じゃわい」
そうしてくれたら心強いことこの上ないがモア家はそれを許すのか。
「ルディが泊る理由はどうする?」
「いざという時に治療すると言えば大丈夫じゃろ」
えっ!
ルディは医者の心得もあるのか?
俺の疑問を見透かしたルディが先回りして答えてくれた。
「私は治癒の奇跡が使えます」
マジかっ。
さすが異世界だな。ドラ〇エのホイミとかを現実でやっちゃうんだ。
「お前さんの頭の傷を治したのもマディじゃよ」
あっ、言われてみればロビンが致命傷を受けた後頭部に痛みも何も無い。
触れてみると、うっすら傷跡らしき感触があるだけだわ。
しかし、ルディは凄すぎるな。
一騎当千のアマゾネスでありながら治癒まで出来るとかもう反則だろ。
本当に最強の守護神を俺は手に入れたみたいだ。
「ありがとう、ルディ」
感謝のキスをしたいところだったが、ドクターがいるので止めておいた。その代わりに太ももを愛情を込めて撫でておく。
カン!カン!カン!カン!
玄関の方からけたたましい音が響いてきた。
「どうやら来たようじゃぞ」
「本当に早朝から来たな。じゃあ俺はルディと二階の部屋へ行くから予定通りに頼む」
「おお、抜かりないようにな」
「分かってる」
俺はルディと一緒に階段を上がって空き部屋に入りベッドへ潜り込んだ。
「ロビンは一時的に記憶を失っておる。くれぐれも驚かさんようにな」
ドアの向こうでドクターが俺(ロビン)の母親を
ふぅ、ついにご対面か。
ちゃんと記憶喪失のロビンを演じないとな。
俺は12歳の少年ロビン。無邪気で純粋でおっちょこちょい。
そして記憶が無い。
だから、今から入って来る女性が自分の母親とは分からない。
よし、これでバッチリだ。ドンと来い。
ガチャ
ドアが静かに開けられドクターの後ろについて一人の女性が入って来る。
俺はベッドの上で横になり目を閉じている。
ベッドの脇に置いた椅子に座っていたルディが立ち上がり場所を空ける。
そこへ女性が座った気配がした。
「あぁ、ロビン・・・私よ、ママよ・・・お願いだから目を開けて・・・」
俺はもう一度、ロビンを演じる上での注意事項を頭で繰り返した。
ロビンは記憶喪失なんだ。この女性が母親とは分からない。
だが、演技なんてする必要はまるで無かった。
何故なら目を開けた俺は本当に驚き信じられなかったからだ。
「えー・・・この若くて綺麗な女の人が・・・僕のママ・・・!?」
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