第10話 初夜と手錠

「この手錠をお使い下さい」


 ど、どういうことなんだ?


 深夜、クラウリー邸の二階にあるマティルダさんの部屋に入り、勧められるままベッドに腰かけたらいきなりこれだった。

 この頑丈そうな鉄の手錠をどうすればいいんだろうか。

 しかも二つも渡されたぞ。

 両手を相手と手錠で繋いで子作りするのがアマゾネス流なのか・・・ゴクリ

 意図が分からずに茫然としていると筋肉娘が助け舟を出してくれた。


「これで私の両手をベッドに繋いで下さい」


 えっっっ!

 初手からそんなアクロバティックな種付けを所望されるとは。

 これがアマゾネスの掟なのか、この異世界の常識なのか知らんが凄いな。

 だがここでひるんではいけない。とにかくやらナイト。


 まず先に寝巻を脱がさないとな。

 手錠をかけてからでは脱がせなくなってしまう。

 しかし、ワンピースタイプなのでこの身長差では辛いものがある。

 何しろこっちは150センチ程度で相手は2メートル近いんだ。

 しかも筋肉モリモリで胸も相当でかくて脱がせにくい。

 結局、俺が苦労してるのを見かねたマティルダさんが自分で脱いでくれた。

 

みにくい身体でしょう?」


 俺がアマゾネスの肉体美に見惚れていたので勘違いさせてしまったようだ。

「そんなことありません。俺はむしろ美しいと思います」

「・・・お世辞は結構です」

 お世辞でも思い遣りでもなく本心なんだけどなあ。

 まず目に付くのは、俺(ロビン)のウエストよりも大きな太ももだ。

 そこには紋様の入れ墨もあってとにかく目立つ。


 腹筋も見事なシックスパックだった。

 アスリートとして俺も見習いたいぐらいの鍛えっぷりだ。

 そしてその上にある巨大な胸は逆にとても柔らかそうで、腹筋とのコントラストが半端なかった。

 しかも乳首が陥没しているというオマケ付き。

 人にも寄るだろうが初めて見た俺にとってはご褒美に思えた。

 

 両腕も脚ほどではないがバランス良く筋肉が盛り上がっている。

 そして両肩から二の腕にかけて太ももと同じ紋様の入れ墨が施されていた。それはマティルダさんの性格に合っていないがこの肉体には完璧にマッチした装飾に見えた。


 そんな彼女のボディは褐色がベースだと思っていたが違うようだ。

 まるで競泳水着のような日焼け跡がある。

 焼けてない部分は割と白い肌をしていた。

 そしてその日焼け跡もマティルダさんは醜いと気にしている様子だ。

 俺にはむしろ魅力的に映るのだけどな。

 きっとこの世界の男たちには不評なのだろう。


「本当に魅力的ですよ。これからそれを証明してみせます」


 真剣な目で見つめていると隣に腰かけていたマティルダさんは意を決したようにベッドで横になり両腕を上に投げ出した。 

 俺は手錠の一方をベッドの角の鉄棒にかけてもう一方をマティルダさんの左手にかける。右手も同様にベッドの角と手錠で繋いだ。


 そうしてる内ににぶい俺にもやっと意味が分かった。

 これは安全対策なのだ。

 アマゾネスメイドが俺を抱き殺してしまわない為の。


「マティルダさんは、初めてですか?」

「当たり前です」

 とても心外そうな顔で筋肉娘はピシャリと答えた。

 

「それでは全て任せて下さい。とはいえ俺もアマゾネスとは初めてなので、もし痛かったり気持ち悪かったりしたら教えて下さいね」

 不安を与えない様に笑顔を見せて明るく優しい声で言ってみた。

 やはりロビンの無邪気で純粋な見た目に弱いようだ。

 マティルダさんは頬を染め目を閉じてモジモジしている。


「・・・覚悟は出来ています」

 では、遠慮なくいただきます!

 俺はまずその覚悟を口にしたぷっくりと柔らかそうな唇から塞いでいった。




「本当に申し訳ない。こんな筈じゃなかったんだが・・・」

 体感的にはちょうどサッカーのハーフタイムになった頃(45分後)、俺はマティルダさんの巨体の上でぐったりと横たわっていた。

 駄目だ。

 このロビンの身体は子作りに向いてない。

 圧倒的に体力が無さ過ぎる。

 煉獄れんごくでの走りっぷりを見て何とかなると思ったがそれは間違いだった。

 明日からでもトレーニングを始めるべきだ。

 プロスポーツ選手のはしくれとしてこの体には我慢できん。


 それに他にも変な感覚があった。

 マティルダさんの中へ子種を放った時に、まるで体中のエネルギーも一緒に吐き出してしまったような虚脱感に襲われた。

 そのせいで三回しかしてないというのに、この体たらくだ。情けない。

 何とか震える手でアマゾネスメイドの手錠を外したところで力尽きた。

 今は指一本動かすのも億劫おっくうな身体をマティルダさんが優しくいたわってくれてたりする。本当に情けない。

 日本では真逆だったのに。

 俺の攻撃でヘロヘロになった女性を優しく介抱してあげていたのに!


 ただロビンの身体にも一つだけ長所があった。

 意外にもデカチンなのだ。

 俺の元の体と同じぐらいの大人チンポだった。

 しかもまだ12歳だから、今後さらに大きくなるポテンシャルを秘めている。

 何とも末恐ろしい話だ。

 こんな少女の様に可愛い顔をして下半身はモンスターとか、家を出て独立する必要に迫られた時は、ジゴロとして食っていけるかもしれんな・・・


「謝罪の必要などありません。とても素敵でした」

 ありゃりゃ、マティルダさんに慰められてしまった。

 それなりに楽しんでくれていたようだが、あの程度のパフォーマンスで本当に満足してくれたのだろうか。子種欲しさの演技だった可能性も否めない。

 だが、せっかくの好意なのだ有難く受け取っておこう。


「俺の方こそとても素敵な体験でした」

「・・・本当ですか?」

 おや、どうやらマティルダさんも俺と同じことを憂慮ゆうりょしてたみたいだ。

 体だけじゃなく心も通じ合った気がして嬉しくなる。

「もちろん本当です。この体さえ動けばあと三回はやりたいぐらいですよ」

「・・・また私と出来るのですか?」

「そりゃ出来ますよ。それが何か?」


「先程、三度も致しましたが、続けて私と種付けが可能なのですか?」

 あ、ドクターの言ってた三回ルールか!

 妻と三回やったら娼婦で一回リフレッシュしないとまた妻と出来ないっていう。

 だが、そんなこの世界のローカルルールなんて俺には関係ない。


「何の問題もありません。体力が回復したらまた直ぐにでも是非!」


「やはり奥様との話は嘘ではなかったのですね」

「はい、この国の常識は俺にとって驚くことばかりですよ」

「フフフ、私も話で聞いていたのと実際の殿方の違いに驚きました」

「というと?」

「男の方は一回すると力尽きて二回すると気絶する、そのまま三回すれば死んでしまうと聞かされていました」

「さすがにそれは冗談だと思いますよ」


「そのようですね。他にも、挿入して6回も抜き差しすれば男の方は果ててしまう、などというのも信じてしまっていました」


 ドキドッキン!

 いや、それはあながち嘘でも冗談でもなく事実だったりすることもある。

「貴方が中々果ててくれないので、私の体では気持ち良くなれないのではないかと心配してしまいました」

「少しでも長く繋がっていたくて我慢していたんですよ」

「・・・嬉しいです」

 今回は素直に喜んでくれたな。

 もしかしたら例の超能力で嘘でもお世辞でもないと見抜いたのかもしれん。

 その辺も含めてこれから少しずつマティルダさんのことを知っていこう。

 まずは最初に確認しておきたかったことを訊かないとな。


「もしこれで孕んだら俺を置いて故郷へ帰るのですか?」


「・・・迷っています」

 迷う?

 アマゾネスの掟みたいなものがあるんじゃないのか。

 よく分からんが、迷っているのなら俺が背中を押すべきだろう。


「事情が許す限り、俺と一緒にいて下さい!」

 掛け値なしに死活問題なんだ。本当にお願いします。


「・・・はい」

 よっしゃー!!

 嫁さんと守護神ゲットだぜ。

 これで生存率がグッと上がったぞ。

 それに思春期の青い性欲も解消できる。


 異世界に来て早々、ロビンが殺されたらしいと知って先が思いやられたが、何かこう光が見えてきたな。

 ぶっちゃけ、少し楽しくなってさえいる。

 それも全てマティルダさんのお陰だ。

 これは御礼をしておかねばなるまい。

 

「キスがしたいのに動けません。俺の体を上へずらしてくれますか?」

 巨乳の谷間に顔を埋めた情けない姿でお願いした。

 アマゾネスメイドは直ぐに要望を叶えてくれた。

 俺は飽きるまでぽってりしたピンクの唇を堪能してから眠りについた。

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