第4幕 初めての御祓い―3
そうして迎えた翌日の朝。
虎鉄は出発の前に、必要な荷物を検めていた。着替えや日用品はもちろん、妖を祓う為に必要な武器、
実家から今のアパートに引っ越す際に無理矢理渡された祓魔刀。『
あの『青い世界』を除けば妖との実戦は今回が初めてであり、同時にこの祓魔刀を実家以外で扱うのも初めてだった。それでも刻まれている祓魔式はあくまでも付呪のみ。虎鉄でもきっと上手く扱えるだろう。
そしてもう一つ忘れてはいけないものがある。妖狐から渡されている、
大切な幼馴染の魂を持ち歩くと言うのも変な話だと思ってはいるが、家に置きっぱなしにする訳にもいかないので、あの日から首元に下げているのだった。
今回の御祓いの目的は3つ。生活費を稼ぐ事、
忘れ物の確認を終え、必要な物は揃っている。目的を再確認した虎鉄は前向きな気持ちを掲げ、立ち上がった。
「――――よし、じゃあ行くか!」
『参るのじゃ! いざ
こうして虎鉄達は、初めての御祓いの為に御岳峠へと向かうのであった。
◇
電車に揺られること3時間。途中、霊体化した妖狐が遥か後方に置いて行かれてしまうと言う珍事もあったが、なんとか無事御岳峠の最寄り駅まで到着することが出来た。
『――――で、でんしゃとは、速い物なのじゃな……まあ私なら追いつく事など余裕じゃったがのう……!』
「……嘘つけ、めっちゃ必死な顔になってたぞ最初」
『な、なっておらんわ! 私は偉くて強い妖なのじゃぞ!!』
「はいはい……分かりましたよ、
『……何か
電車が動き出した瞬間『ぬしさまぁぁぁ!!!』と叫び散らしていた妖狐を適当に小声であしらいながら、虎鉄は無人駅の改札を抜ける。
虎鉄の目に飛び込んで来るのは一面の緑と山、そして今にも折れそうな、錆び付いた観光案内板。人の住む家屋等は一切見当たらない。
その他にあるのは蝉の鳴き声と土の香り、快晴の空から照り付ける夏の日差しだけだ。初めて来る場所ではあるが、かなりの僻地であることが一目で分かる程であった。
ここ御岳峠は、峠と言う名前に合わずれっきとした山だ。観光地としての名は薄いが、比較的新しい信仰を持つ霊山として知られており、頂上付近には土地神を
そしてその神社の管理者である
どうやら宮司は見鬼の才を持ってはいるものの祓魔式に明るくない人物であり、妖を自ら祓うことが出来ない。山や畑等が荒らされた付近で、妖の痕跡を感じ取ったはいいがどうする事も出来ず、陰陽師達に依頼を出したそうだ。
駅から出た虎鉄達はこの後バスで中腹の宿泊施設へと向かい、一度荷物を預けてから依頼に取り掛かる手筈なので、スマートフォンの地図と受け取った依頼書を元に現地へと出発した。
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