第5話 クラシック

上野から徒歩10っ分ほど小さなビルの3階にある。

薄暗いこじんまりとした空間にオレンジのライト、そして手元には蝋燭。

昔のレコードとともにお酒を飲める場所。私は飲めないからゆう子さん特製手作りデザート。大人の方の玩具箱のような存在の場所。ここにくるひとは懐かしいレコードを流してもらい、お酒とともに、至福の時間を過ごす。

今日もひとりまたひとり。


カウンターに座るのは40代くらいの方たちが多い。今日はまだ3人くらい。1番左端の方はサラリーマンだろう。ネイビーのコートにマフラー、パソコンの入っていそうなバッグを左のスペースに置いている。

音楽が止まると言った。

「ゆううこさんデヴィッド・ボウイあるかな」

「ありますよ」

ゆうこさんはにこっと笑った。


さっき流れていたテクノとは一変して、ノリノリのドラムの音。ギターが走り去るように店内に流れる。

かすかに木琴のような音も聞こえる。


音楽に浸っていると目の前にはカウンターを挟みゆうこさんがいた。

「で❓それでお金もなし、身分書も消えたと・・」

まこ「そうなんです・・」

「あらーヤーバイじゃない」

「やーばいんですよ」

「そうねえ。お店に電話しないとね、、、、でもー助けてくれた人❓今時そんな優しい人いるのね」

「悪い人ではなかったです」

「どんな人なの」

「、、、」

「その顔は・・・さては話したくないな❓」

「・・・ごめんなさい」

「まあいいのよ〜。大物俳優だったりして・・」

「❗️」

「うそうそ〜」


まこは一息ついた。するとさっきのサラリーマンの横に座っていた髪の白いシンガーらしき人が言った。

「今日誰歌うの❓ゆうこさん」

「・・もうそんな時間ですか」

まこ「私歌いたいです」

ゆうこ「まこちゃん歌歌えるの」

まこ「歌えるちゃ歌えますよ」

お客さんは拍手で歓迎してくれた。

ゆうこ「決まりね〜。じゃあ・・・用意しないとね・・曲は何にするの・・・・・・あれ❓はや前説しっちゃてるわ」


まこはマイクを片手に前説を終わらせ

「それでは聞いてください。judyandmaryさんでクラシック。」

「あっその歌ねおけい・・あーあの表情。もう歌に入っちゃてるは・・・待ってね今・・」

ゆうこさんが音源準備をしている間、


カランころん


入り口のベルが鳴った。

ゆうこ「いらっしゃい。。あ。今から週末限定カラオケタイムの時間で、今日はあの子が歌うんですけど・・・大丈夫ですか❓レコードはこの時間少しストップさせてもらうんですけど・・」

男「あ全然。ちょっと飲んで、帰るんで」

ゆうこ「ありがとうございます。」

男「コーヒーください」

ゆうこ「はい。待ってくださいね〜」


クラシックの音源は店内に響いた。

まこ「baby・・・」

まこの声は綺麗に透きとおりさっき入ってきた男にも届いたのか、男はまこから目を話さなかった。


コーヒーが冷めているのも気づかずに。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る