1-3

 部活動紹介自体は見ていて退屈はしなかった。それぞれの部員たちが自らの所属している部活の魅力を全力で伝える。

 バレーボール部の華麗なトス回しやバスケットボールの澱みないリズムでのレイアップシュートや見ていて気持ちのいいフリースロー。野球部が伴奏も自分達の口で歌う全力の校歌は全校生徒の笑いを誘った。

 文化系も部活も負けていない。演劇部のユーモアのある寸劇や吹奏楽部の迫力のある演奏。将棋部などの人数が少ない上にこの場で活動を実際に見せることに向いていない部活は大会に対する熱い思いを語ってみせた。

 全部活素晴らしいパフォーマンスだとは思う。それでも最初から部活に入る気のない僕の心は全く動かなかった。

 各部活の部員たちがそれぞれの情熱を傾けて、僕たち新入生に対して魅力を伝え、その情熱を共有するためのパフォーマンスのはずなのにそれを冷めた心で見てしまう。

 どうせその道のプロになるわけではないのに。所詮学校の部活じゃないか。そんなドス黒い気持ちが僕の心の中を渦巻いている。

 そんなことを考えてしまう自分がどうしようもなく情けなく、自分のことが嫌になった。

「この学校の応援部ってすごいらしいよ」

 近くにいるクラスメイトのそんな声が聞こえる。

 僕が自己嫌悪に陥っている間に、部活動紹介は最後の応援部の番になっていた。

 応援部のパフォーマンスは和服を身にまとい、赤い和傘を見事に使った圧巻とも言うべきものだった。

 それはまさに新入生である僕たちを歓迎し、応援してくれているようなものだ。

(少しは頑張ってみるかな)

 そう考えつつも、僕は何を頑張るかもよくわからないままだ。

 桜色の紙吹雪が舞うなか、結局もやっとした気持ちを抱えていた。

「今日の放課後から部活見学が解禁されるので、新入生の皆さんは興味のある部活をどんどん見学してください」

 司会の生徒のその声で、部活動紹介の時間は終わる。

 クラスメイトが、放課後どの部活を見学に行くかを話し合っている。ふと先ほどの女子が気になってチラッと見てみると、やはりどこか冷めたような目で、教室に帰る準備をしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る