第8話 旅の前の一休み
金剛熊の魔核を食べ終えた私は四人の冒険者が怯えるのを傍目に森の中に姿を隠した。
殺せなかった訳ではない。
逆だ。殺人に対して忌避感すら感じなかったのだ。
人を殺すことに躊躇いを感じない。
自分に害を成したのだから殺すなんて安直な理由で人が殺せてしまいそうになる自分に戸惑ってしまった。
だから、とりあえず彼等を殺すのを辞めた。
殺す意味を考え直して、彼等が生きて、あるいは死んで何か変わるのかと。
そして結果、殺すだけの意味がないと私は判断した。
逆に今の不安定な心のまま彼等を殺してもしこりが残るそんな予感があった。
だから今回は殺さない。
けど、次会ったとき。
また、彼等が私に挑むというなら私は私の安寧の為に彼等を殺そうとと思う。
そんな冷淡な思考をしている自分に気付き、私は僅かばかりへんこむ。
はあ、けど……ほんとに人じゃなくて、兎になったんだぁ私は。
__________
食事は人の心を落ち着かせ豊かにしてくれる。
もぐもぐ。
むしゃもぐ。
私は池のほとりで草木を頬張りながら寝転んでいた。
普通の兎ならこんな事していたら直ぐに鳥やらゴブリンに捕まって食べられてしまうが中位種まで成長した私はこの森ではすでに生態系の頂点に君臨していると言って良いと思う。
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[
[種族]:魔魔兎(中位種)
[加護]
『兎神之寵愛』_全能力値に成長補整(大)・特殊耐性・超回復(夜間時)・身体能力強化(大)(夜間時)
[
『
『
『鑑定』_情報解析・情報分析
『突貫』_突貫(突進時貫通補整(大))
『氷魔法(低級)』
『感覚強化』_五感の継続的強化
『敵性感知』_敵性意思を持つ生物を感知
『大食らい』_食欲増加・胃袋拡大
[
『物理』lv2
『貫』lv9(最大補整)
『斬』lv1
『魔法耐性』
『火』lv1
『闇』lv5
『氷』lv1
『精神』lv9(最大補整)
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やはり先程の戦闘では何も変化を得られなかったようだ。
というより
だけど理由がまだ分からない。
この欄は『兎神之寵愛』の固有のものなので他の生物とは比較が出来ない今、これからも手探りで少しずつ調べていく他無いだろうけど、耐性を実際に体感するには攻撃を受けなければならないし試す気にもならない。困ったものだ。
一通りステータスを確認した後、私は巣穴に戻り眠りに付くことにした。
満月といってももう夜になってからだいぶ時間が経ってしまっている。
万が一、今から新天地に向かったとしても直ぐに夜が明けてしまうだろう。
その時、未知の魔獣にでも教われてしまったらもともこもない。
となると私の活動を昼夜逆転させ夜間行動し日中は身を潜めるのが得策だと考えた。
そしてその慣れの為にも住み慣れた巣穴で今日はだらだら夜更かしをしていた訳だ。
私の新天地に向けての冒険が吉と出るか凶と出るか分からないが遠足前の子どものように今日は寝付きが良くなかった。
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