第6話 三ヶ月後 魔核は美味い
私は多数の魔獣と相対していた。
知恵を持ち、群れを為し、人を食らう怪物。
「グキャ」
「グガ」
「ギャギャッググ」
そうゴブリンだ。
彼等は何でも食べる。当然、美味しそうな私も食べるだろう。
涎を垂らし此方を見る目は食欲一色だ。
全身緑の身体は細く骨が浮き上がっている。
余り食事を取れていないのかもしれない。
私はこの森の中で弱者に分類される種族であるがその次に弱いとカテゴリーされるのは恐らくゴブリンなんじゃないかと思っている。
というのも。
『鑑定』
_____
[――]
[種族]:ゴブリン(劣種)
[状態]:空腹
[加護]
[能力スキル]
『棍棒術』
[兎への敵性]大
_____
見ての通り弱い。
それに魔兎と同じ劣種に分類される魔獣はゴブリン以外見ていない。
しかし彼等は格上の魔獣を糧にし生きている側面もあるのだ。
それが出来る一番の理由は大規模な群れをなしているという点だと思う。
私が見た限り一番大きい群れは50はいた。
そして今回、私が
ふふふ……そう、私は今ゴブリンの群れを襲いに来ているのだ。
只一方的に襲われる側では無くなったのだ。
「グギャグギャ」
私という獲物を見つけ近寄ってくるゴブリンに対して私は氷で造られた矢を放つ。
その予期せぬ攻撃にゴブリンは反応すら出来ずに脳天に突き刺さり絶命する。
今私が放ったのは、人間の少女が使っていた『
驚いた事についに私は『魔法』を習得したのだ。
かつては魔法があればだらけて暮らせるのにと何度も思い、手を振りかざしたものだ。
けど、今なら頭の中で念じるだけで簡単に出来る。
兎に転生されて最悪な気持ちだったが、魔法が使えるようになったときはすこしだけ兎神に感謝した。
そんな訳で襲ってきたゴブリンを簡単に返り討ちにしたわけだが、突然死んだ仲間を見てか他のゴブリン達が喧しく鳴きながら此方に一斉に襲いかかってきた。
数の暴力とは恐ろしいものでこれだけの数が一斉に襲いかかってくればオークですら一堪りもないだろう。
しかし、今の私には恐れるに足らず!
氷の矢を幾重にも生成し撃ち放つ。
それだけでゴブリンは地面に倒れていく。
結果としてゴブリンの討伐はものの数分で終わった。
一段落がつき、ステータスを確認するも特に変化はなかった。
やっぱ今のじゃ増えないかぁ。
さてさて、月日の流れは早いものでレッサーデーモンとの戦いの後から既に
あれから私は草を食しは今のようにゴブリンと闘い、木を食しは更なる敵に闘いを挑む日々を過ごしていた。
ひとえに己が強くなることだけを目標に頑張ってきたのだ。
しかしながら、あれだけ怠惰で無気力であった自分がこれだけ目標に向かって頑張れるなんて思いもしなかった。
もし、今の私の姿を両親や知り合いが見れば恐れおののく事は間違いない。
それだけ私が頑張るのなんて稀少なのだ。
その原因は生存本能なのか、兎に転生したからなのか、加護の影響なのか定かではない。
けど、まあ頑張れることは良いことなのだから気にする事でもないだろう。
というわけで三ヶ月間頑張ってきたのだから能力も沢山増えたに違いないと思うだろう。
だが、今のように魔獣を倒せば『能力』が手に入るという訳では無いことが後に判明したのだ。
____________
[
[種族]:魔魔兎(中位種)
[加護]
『兎神之寵愛』_全能力値に成長補整(大)・特殊耐性・超回復(夜間時)・身体能力強化(大)(夜間時)
[
『
『
『鑑定』_情報解析・情報分析
『突貫』_突貫(突進時貫通補整(大))
『氷魔法(低級)』
『感覚強化』_五感の継続的強化
『敵性感知』_敵性意思を持つ生物を感知
『大食らい』_食欲増加・胃袋拡大
[
『物理』lv2
『貫』lv9(最大補整)
『斬』lv1
『魔法耐性』
『火』lv1
『闇』lv5
『氷』lv2
『精神』lv9(最大補整)
_____________
三ヶ月間で新たに増えた能力は5つだけだ。
だけと言って良いものなのか分からないが自分の当初の予定よりは少ない。
まず、『突貫』は突進攻撃を何度も繰り返して敵を倒していたらいつの間にか手に入れた能力で能力自体は単純で突進したときに良く分からない加速がかかって貫通力が増す。
これのおかげで格上のオーガやファントムシャークといった魔物も突進で貫いて倒せるようになった程で個人的には最高の能力だと思っている。
次に『感覚強化』と『敵性感知』はいつの間にか手に入っていた能力だ。
魔獣を倒したタイミングではなく、食べて寝て起きた時に増えていたのだ。
能力の内容は言葉通り、五感が鋭くなったのと自分を害そうとする存在を感知する能力でこれのおかげで睡眠をしっかりととれるようになった。
そして今しがたゴブリンを蹂躙したのが『氷魔法(低級)』だ。
これもかなり有用な『能力』で威力は低いが遠距離攻撃が可能なので非常に重宝している。
しかし、ゲームでいうMPのようなものがあるのか確認した時に限界を見誤り、意識を失ったので使用には注意が必要だろう。
で最後の『能力』であるがこれはまあ使えない。
『大食らい』。食欲と食べる量が増えるだけという余り使いどころがない。
もしこれが、現代日本とかであるなら大食い選手権にでも出たものだが、こんなサバイバル生活には完全に不要な代物だ。
これで分かったが『能力』も全てが有益に働く訳ではない事がよくわかった。
結局『能力』に関して生活の中で習得する能力と戦闘後に突発的に覚える二つがあるように考えられた。
まだ、能力に関しては分からない事が多いので引き続き試行錯誤は必要みたいだ。
そして、ステータスの中で一番の変化はやはり[種族]だろう。
[種族]:魔魔兎(中位種)
劣種から下位種、中位種とこの三ヶ月で二段階も進化したのだ。
まあ進化したといってもサイズが手のひらサイズから二回り程大きくなったくらいではあるが私の目標を目指すにあたってこの結果は非常に重要だった。
何故なら進化した理由が分かっているからだ。
『突貫』で魔獣を殺した時、偶然魔獣の内部に青い核を見つけたのだ。
それは鑑定の結果、魔核と呼ばれるもので魔獣の心臓らしい。
何を思ったかその時の私は興味本意でそれをかじり口にした。
そして気付いたとき私は下位種に進化していたのだ。
魔核を食べれば進化し強くなる。
これは『能力』の習得方法が不明な今の状況では強くなるための最適解だった。
魔獣を倒して魔核を食べる。
これの繰り返しで一ヶ月程で中位種まで成長する事が出来たがそれから2ヶ月上位種には到れないでいた。
兎としての限界なのかあるいは進化の条件が必要なのか分からない状況なので引き続き、ゴブリンといった魔獣を狩って魔核をかじっているが、今回のゴブリンの魔核でもどうやら駄目のようだった。
これからは別のアプローチを考えなければならないかな?
私は魔核をかじりながらこれからの事を思案するのだった。
うまうま。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます