第4話 脱兎
草木をかき分けてきた4人のうちの1人。
魔法使いのような恰好をした少女が私を見ながらに呟いた。
「あ、魔兎」
そう呟かれた瞬間、全身の毛が逆立った。
「
少女が此方に手をかざし、言葉を呟いた瞬間。
私を捕らえるように周囲に氷の壁が立ちはだかる。
その現象から即座に一つの結論に至る。
魔法っ!?
――――――解析
[リナ]
[種族]:人
[状態]:疲労(小)
[加護]--------
[
『氷魔法(低級)』
『魔導強化』_魔導強化(小)・魔力回復(小)
『氷魔法』!
やはり予想通り、能力の欄に魔法の表記が存在した。
ファンタジーの大定番である魔法があると言うことに僅かばかり興奮を覚える。
しかし、魔法ばかりに気を取られている場合ではない。
私を囲うように放った魔法は明らかに獲物を逃がさない為のものだ。
「ラッキーだな。今日の飯は魔兎か」
後ろに剣を携えていた男は腕を組みながら此方を見ている。
つまり次に飛んでくるのは。
「
目の前に立つ少女の視線を戻した直後。
少女の手元に生成された氷で形どられた矢が私目掛けて放たれる。
危なっ!
ぴょん、と飛びはね何とか避ける。
「嘘!避けられた!?」
「はははっ、兎に舐められてるぞ」
筋骨隆々の男は豪快に笑い少女を冷やかす。
「うるさい」
続けて放たれる氷の矢も何とか避ける。
緊張感のない彼らの様子から私はやはりこの世界で相当弱いのだろう。
只の夕飯としか認識されていないみたいだ。
しかし、ムカつく。
此方は今一方的に殺されかけたのに、あっちは楽しく談笑しているのだ。
理不尽だ。
だが、彼等に対抗すべき手段は今はない。
日が沈み始めていると言ってもまだ夜にはなっていない。
大蜥蜴を倒した時のようにはいかないだろう。
つまり、油断している今。
初手の動きが非常に重要だ。
倒す……。は恐らく無理だと思う。
相手は自分より格上+人数差がある。
となると私がとれる選択肢は逃げの1手しかない。
「おいおい何度外すんだよ」
「リナがそんな外すなんて珍しいね」
「にがすんじゃねえぞ」
「むぅこの兎すばしっこい」
後ろの三人は相も変わらず、剣すら抜かず高みの見物をしていた。
――――――解析
[ガイド]
[種族]:人
[状態]:良好
[加護]--------
[
『剣術』
『小剣術』
『斧術』
『健康』
――――
[ミーナ]
[種族]:人
[状態]:疲労(小)
[加護]--------
[
『弓術』
――――
[タール」
[種族]:人
[状態]:疲労(小)
[加護]--------
[
『剣術』
『解体』
『毒学』
他の三人には魔法の欄は無い。
代わりに剣術や弓術といった技能がスキル欄にのっていた。
前衛二人に魔法使いと弓使い。
ゲームで考えるならバランスの取れたパーティに見える。
とりあえず今回隙を着いたときに警戒しなければならないのはこの包囲網から抜け出した後に襲い掛かるであろう氷の矢ともう一人の少女の弓矢だろう。
氷矢を避け、着地した直後。
彼等がもっとも気を抜いていたその瞬間を狙って私は能力を発動した。
『
周囲の植物に促進・生命の付与をし、少女達に放つ。
威力なんて微塵も出ない。
しかし、突然にょろにょろと動き出した植物達に彼等は意識をとられる。
「なにこれっ」
「うおっなんだなんだ……」
今だ!
真っ直ぐに彼等の間を駆け抜ける。
その俊敏な動きに気付いたの先程から魔法を放っていた少女だけであった。
「あっ逃げたっ」
逃げた私を狙うように氷の矢を幾重も出現させる。
待って。
それはヤバイ。
「リナっそれよりも此方だ!」
ガイドの声にリナは渋々その矛先を変えて魔法を植物達に放つ。
ああ、私が与えた命が狩られていく。
しかし、ありがとう。
そのおかげで私は生きられる。
脱兎の如く私はその場から逃げ出すのであった。
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