第3話 一難去って
もしゃもしゃもしゃもしゃ
『
うん。
試してみたけどこれで食べ物には困らなそう。
むしゃむしゃと植物の葉を食し続ける私。
うむ、美味である。
…………けど。
『食糧問題は解決したけど、そもそもどうしよう』
そうなのだ。
いつだって私は問題に直面している。
健康で文化的な生活を送る上での支柱。
衣食住。
衣……については問題ない。
そもそも既にこの身は兎。
人間だったら全裸の変態になってしまうけど、今の私はキュートな兎。
裸でも問題はない。
食……も問題ない。
『
現実だった食糧不足問題を解決できるね。
で。
ぶるる、と私は震える。
住……これが一番に問題だ。
そもそも私は野兎の生態というものを知らない。
普段野兎はどこに住んでいるのか。どうやって暮らしているのか。
全然見当がつかない。
もちろん。
私の姿は兎であるが、中身はれっきとした人間。
感受性もどちらかというと人間に近い。
『どこか洞窟とか見つけて野宿とか……?だっるい』
自分でよさそうな住まいを見つける。
なんとも怠いことか。
兎の不動産なんか存在する筈もなく。
仕方がない、と腹をくくった私はぶるる、と身体を振るって一歩を歩き出す。
瞬間だった。
ぐにぃ、と何かを踏んだのは。
「ぶぅ?」
鳴き声を漏らして踏み出した前足を見る。
いつみてもモフモフふわふわの前足。
その下に、私が踏んずけたであろう……何かの尻尾。
『あ、やば』
恐る恐る前を向くと、そこにはものすっごい怒ってそうな視線で私を見つめる大トカゲの瞳。
ごめんね、起こしちゃったのかな。
それは地球に存在する事のない異様な存在。
強いていうのなら、クラスの男子たちがやってたゲームに出てきたモンスター。
あぁ、薄々感じてはいたけどここはそういったモンスターみたいなのが出る世界なのね。
「ぶぅーーーー!!」
私は逃げた。
それこそ脱兎のごとく飛び出して必死に。
けれども、大トカゲは私に習いを定めて後ろから追いかけてくる。
私がすっぽりと丸のみ出来そうなその大顎から涎をだらだら垂らしながら。
木々の合間を走って走って走って。
それでも、大トカゲは余裕で私を追ってくる。
恐らく、私が疲れてスピードが落ちるのを待っているのだろう。
そう、これは狩。
食物連鎖。
『うぅ……なにこれだるっ。恨むよ兎神様』
私は腹をくくる。
このまま逃げ続けてもいつか私の体力が無くなって食べられるのがオチ。
食物連鎖というものは常に残酷だ。
ならば。
私は立ち止まって、後方に思いっきりタックルをかます。
「ぐぎゃっ!?」
と、私の兎タックルを喰らった大トカゲは不意打ちに驚きながら衝撃で吹き飛んだ。
木々を吹き飛ばし、飛んでいく。
『お、おお……』
私は驚いていた。
一瞬ひるませようと思ってタックルをかましたんだけど、まさかあんなに吹き飛ぶなんて。
もしかしてこれが……『兎神之寵愛』の恩恵。
『兎神之寵愛』_全能力値に成長補整(大)・特殊耐性・超回復(夜間時)・身体能力強化(大)(夜間時)
気が付けば、既に辺りは夜。
満月が輝いて、私を照らしていた。
これが、身体能力強化(大)(夜間時)の恩恵。
吹き飛ばした大トカゲはピクピクと身体を震わせて気絶していた。
なんだか可哀そうになってしまうけど、仕方のないこと。
私も生きるのに必死だから。
転生一日目で死ぬわけにはいかないの。
『モンスターいる世界とかだっる』
私は呟くけど、兎だからぶぅ、と鳴き声が漏れるだけ。
ピコン!!
と脳内に何とも言い難い音が鳴る。
なんの音……?
私は身体の隅々を見るが、特に変わったところもない。
と、思ったところで。
目の前に、シュン!!とステータス画面が現れた。
――――――能力が追加されました。
[
[種族]:魔兎(劣種)
[加護]
『兎神之寵愛』_全能力値に成長補整(大)・特殊耐性・超回復(夜間時)・身体能力強化(大)(夜間時)
[
『
『
New!!『鑑定』_情報解析・情報分析
[
『物理耐性』
『貫』lv9(最大補整)
『魔法耐性』
『火』lv1
『闇』lv5
『精神』lv9(最大補整)
『鑑定』という能力が増えている……。
試しに私はさっき吹き飛ばした大トカゲを見て。
『鑑定!!』
と心の中で唱える。
すると私と同じくステータス画面が大トカゲの前に映し出された。
――――――解析
[――]
[種族]:蜥蜴(子)
[状態]:気絶
[加護]
『蜥蜴眷属』_索敵能力上昇(小)
[
[
[兎への敵性]:大
私のステータスとは真逆で、加護もスキルもレジストもほとんど書いていない。
これを見てしまうと私はものすごい恵まれているのだと、実感してしまう。
これが持たざる者と持つ者の差。
兎神様ありがとう……。
私は心の中で祈るが……そもそも私をあのまま天国に行かせてくれたらこんなことにはならなかったのでは?
と疑問が浮かんでしまって祈るのを止める。
―――――――――――
――――――――――
――――――――
――――――
――――
―――
――
―
「ぶぅ……」
朝日がまぶしい。
私が眠る岩場に出来た空洞に朝日が差し込む。
蜥蜴を倒したあの後、私は宛もなく森を彷徨って、今寝ている岩場に出来た空洞を見つけて昨日は夜を越した。
兎になっての初めての朝はお世辞にも快適とは言わないけど気分は悪くない。
『
目の前に申し訳程度に生えていた草たちは往々と多い茂り。
ブルーベリーのような果物も所々生えてきた。
その果実に狙いを定めて。
『鑑定』
――――――解析
[ミニベリー]
[種族]:果実
[状態]:良
[効能]:身体能力更新・栄養豊富
[兎への敵性]:安全
『食べれそう……』
『鑑定』で安全性を確認した私はガブリ、とミニベリーに噛みつく。
むしゃむしゃむしゃむしゃ。
うん。
これ美味しいやつ。
普通の葉っぱも十分に美味しかったけど、果実はやっぱり兎になっても格別だ。
むしゃむしゃ
むしゃ
――――――――
―――――――
―――――
――
―
豪華なブレックファストタイムを過ごした私は満腹なお腹を摩りながら、寝ころんでいた。
至福の時間。
ぐーたらタイム。
うん。意外と兎生いいかもしれない。
食べて寝食べて寝の生活が出来る。
あとは住処さえどうにかすれば究極の怠惰な生活も夢ではない。
昨日の蜥蜴のような天敵にまた遭遇するのも嫌なので、この岩場の周りの草木を『
日光がさえぎられて少し薄暗くなって。
うぅ、余りに気持ちいので眠くなって……
…………
……
…
どれくらい経ったのだろうか。
太陽も下がり始めた頃。
がさがさ、と草木を分ける音が聞こえる。
「うぅ」
がさがさ、とうるさい。
思わず目が覚めてしまって、前足で朧げな視界を擦る。
段々と覚醒していく意識の中で。
草木を分ける音は徐々にこちらに近づいてきて。
「いやぁ、レッサーオーガを討伐できるなんてな。今日は宴会だぞ」
「うん。凄い戦果。嬉しい。」
「つか、なんだここら辺。草木がすごいことになってるぞ」
「確かにな。不思議であるな」
「不思議ね。誰かが植物促進魔法でもかけたのかしら?」
草木を分ける音に加えて聞こえてくるのは人の声。
恐らく声の数的に4人くらい。
……………。
人……人……人!?
『人がいた世界だったんだ……』
なら人に転生させてよー!?
と、兎神様に心の中で叫ぶが……ただ空しいだけだ。
なんとなく見つかったらまずそうな気がして、私は直ぐにその場を離れようとしたけど……。
「あ、魔兎」
目が合った。
草木をかき分けてきた4人のうちの1人。
魔法使いのような恰好をした少女が私を見ながらに呟いた。
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