第6話
「はぁ……」
俺は今、ギルドの酒場で途方に暮れていた。
というのも、武器屋で武器を調達するハズだったのだが、一番安い剣で5万エーン。せめて今持っているナイフよりも戦闘向けのナイフくらいは、と思ったのだが、それですら2万エーン。値引き交渉をしたら、キレられて逆に値段を上げられてしまう始末。
うん、無理。
いや、無駄遣いしていなければ剣も買えたんだ! だが、串焼きだの果物だの、この町は魅力的なものが多すぎるんだよ!
「ぬわぁあああああああ!」
思わず頭をかきむしりながら声を上げると、近くでゲッソリとした顔で酒を飲んでいた冒険者の人を驚かせてしまった。
「あ、す、すみません!」
「いえいえ、いいんですよ。冒険者って、色々大変ですよね、はは。分かりますよ、声を上げたくなる気持ち。ホント、辛いことばかりです」
そう言うと彼は、乾いた笑い声を上げながらどこかへと行ってしまった。
いや怖いよ。駆け出し冒険者になんてこと言うんだよ。デビュー初日くらい、希望に満ちていたいよ!
はぁ、もうこの木刀でクエストに行くか? ここら辺のモンスターはよろいムカデであれだったし、苦戦する気がしない。そんなに難しくないクエストならこなせるんじゃないか?
「……は?」
そう思って、クエストボードを見に行くと、貼り出されている依頼は、どれも報酬が3000エーンほどのお手軽クエストだった。
大袋二つ分の薬草集め、2000エーン。カインバードの卵採取バスケット一籠(分、2800エーン。
おつかいか!!
一般人はモンスターがいるから外に出られないのは分かる。ただ、採取のクエストって、こんなに緩いのかよ!
後は……剣の鍛造代理、時給3000エーン。
自分でやれよ!
このクエストの依頼者は鍛冶屋だ。それ人にさせたら、あなたは何をするんですか。
とまあ、こんなクエストばかりだ。
戦闘経験を積みながら金を稼げるクエストは、この辺りにはないらしい。この際、よくばってはいられまい。鍛冶屋を手伝って、自分で武器を鍛造できるように……。
「少年、お困りかい?」
俺が血迷った選択をしそうになっていると、後ろから、少女が話しかけてきた。
自分よりも年下の赤髪の少女で、なぜここにいるんだと思ったが、よく見ると杖を背負っている。魔法を扱う冒険者のようだ。
にしても、年下のくせに少年とは、おかしな子だ。
「どうやら、クエスト選びで困っているようだね。この町のクエストは、ぼったくりが多いんだよ。例えばこのカインバード。カインバードは、普段はとても温厚な鳥なんだが、卵を獲ったら最後、100mを3秒で走る強靭な脚力で追ってきて、龍の皮膚をも裂くと言われる鋭い爪で襲い掛かってくる。このクエストは、最低でも5万エーンくらいないとダメだね」
この町は、店から住人までぼったくりの常習犯らしい。
少女はその後も、聞いてもいないのにモンスターの生態について解説してくる。この子、こんなに小さいのに随分とモンスターの生態に詳しいんだな。
「なあ少年」
「な、なに?」
「私の知識はスゴイだろう。ほら、褒めたまえ」
「す、すごいね……」
な、なんなんだこの子は……。
「そうだろう? どうだ、そんなすごい私と組んで、一つどかんとデカいクエストをこなさないか?」
そう言うと少女は、1枚の、クエストの依頼書を取り出した。
そこには、「ドラゴンムカデの討伐、30万エーン」と書かれていた。
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