第3話 異精神転生か。笑えねぇ
……は?
理解が、できない。
もっと、わかりやすく、教えてくれ。
「つまり、ここは空想上の世界なの。現実には存在しない。記憶がないのは体内時間をいじった事による反動。他にも色々異変があるかもね。それは全てこの体内時間移動のせいだと思ってもらっていい。ここが元々の世界に酷似しているのは、あなたの中の記憶から再構築したため。まとめちゃうと、んんんん〜〜……。VRMMOみたいなものなんだよ。実際貴女は死んでいる。でも精神だけが『手続き』によってこの世界に囚われた。そこで仕事……魔法少女の任務を課せられたんだよ。」
VRMMO……?あのみんなで一緒にゲームをプレイできるやつか?あまり詳しくないのでなんとも言えないが。つまり、本来あの事故で死ぬ予定だったが、それを精神のみ生きながらえさせて魔法少女として酷使しようって魂胆か。この全員がNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の世界で。
「いや、違う。NPCなんかじゃないよ。みんな情報の開示度の違いこそあれ、精神が入ってるれっきとした人間だよ。」
ん……?理解力が乏しいわけではないと自負しているが、その説明じゃあピンと来なかった。
「なんで一から十まで説明しないといけないのかなぁ……。まったく。まあいい。えっとね、貴女がこの世界を想像して、総合して創造した時点で、『この世界』は生まれ落ちてるの。人間の想像力を舐めたらいけない。ここはちゃんとした現実。空想ではない。あの契約書には、魔法少女として働いてもらうのの他に、記憶の断片や想像によって作られた世界の生成を手伝う役割もあったんだよ。さっき誰かが作った世界かもしれないって言っただろう?なにもあんただけの世界じゃあない。転生してくる魔法少女が増えるたびに世界は改変するし、時には守るべき対象もずれる。言うなれば、大きな大きな創作物を、魔法少女が増えるたびにちょっとずつ作っていってるようなものなわけ。新しいパーツを、誰がどのくらい持ってくるかや、なにを持ってくるかはその人次第。同じような形でも、色が違えば見栄えも変わる。そうやってこの世界はどんどん作り替えられているんだよ。ここにいる人間は自我を持ってるし、当然魔法少女もいる。これからは仲良くやってね。」
正直その例えはあまりわからなかったが、まあそういうものだと理解しておこう。私の取り柄は気にしない事だ。
「なるほど。ここは私の妄想だけで構築されてるわけじゃあないんですね……。なんだか意識が現実と理解についていけないんですけれども。」
「理解はしないでいいよ。ここにいる魔法少女たちは、情報を全く開示されてない子だっているんだから。あ、そうそう。この世界もいくつかの国に分けられてんだけど、この国には大体600人くらいいるかな。ここは47個に区画分けされてるんだけど。それぞれに大体満遍なく分かれてるね。まずは彼女らから事情を聞くことをオススメする。習うより慣れろって言うしね。」
「どこに行ったら会えるんですか?そもそも彼女らは私に友好的に接してくれるんですか?」
「知らないよ、そんなの。自分で探しなよ。」
うわぁ死ね。
「じゃっ……、じゃあ、私の魔法はなんなんですか⁉︎魔法少女なんですから何か魔法を持ってるはずでしょう?それにコスチュームとかもあるんじゃないですか!?」
「落ち着けよ、焦ってもいいことないぜ?それについては安心しろ、今から付与するよ。……ちょっとこっちに来てくれる?」
言われた通りに彼女の方ににじり寄る。なにをされるのか不安だったが、自分の魔法が気にならない、わくわくしないと言えば嘘になる。
「それじゃあ、服を脱いでくれる?」
「なのに言ってるんですか。冗談はよして下さい。早くやって下さいよ。」
「人を疑うのは良くないよ?誰もあんたの半裸なんか見たくない。それが必要だから言ってるんだよ。服を脱いだあとは、背中に浅く長く傷をつける。それを私が修復することで、過剰修復される、または修復力のあまりのあおりをくらって、体内のウィッ値と結合して魔法が開花するってわけ。わかったらさっさと傷をつけさせてくれ。」
「そんな方法なんですか……。なんか思ってたのと違いましたが、まあ、分かりました。ちょっと待ってくださいね。」
ぬぎぬぎ。服を脱ぎ、それを傍に置いて、下着も外してから彼女に背中を向ける。
「はい、どうぞ。ちゃちゃっとやっちゃってください。なにで傷つけるんですか?爪ですか?」
「いや、ナイフだよ。この傷付けるステップから、もう能力の上振り下振り上限が決まっちゃうからね。なるべく繊細な傷がいいらしいから、ナイフを使って裂いていくよ。」
そう言われた途端、背中に痛みが走った。耐えられない程度ではないが、かなりひちひりして血が出ているのが分かる傷だった。痛い。グッと目の前にあったテーブルの端を握りしめる。直後、するぅっ……と痛みが抜け落ちていった。さっき言っていた魔法とやらを使って傷口を塞いだのだろう。妙な高揚感と愉悦感があった。浅ましいと思われるかもしれないが、この時の私は何にでも勝てると錯覚するくらいには興奮していた。しばらくしてから声がかけられた。
「よし。完了だよ。服を着てもいい。……っと、その前に。これを渡しておくよ。」
そう言って手渡されたのはナイロンのような手触りの服だった。ふんわりした、着飾られたジャージみたいな感じだ。パジャマとしても使えそうなくらいジャージ色が強かった。なんだこれは?
「それは魔力の残滓で作られたコスチュームだよ。魔法を付与された時の副産物だね。これも人によって、固有の魔法によって能力や見た目が変わる。普通はゴスロリの衣装みたいになるんだけどね……?なんでそんな服なの?」
それがこっちが聞きたい。だよな、普通コスチュームといえばフリフリでファンシーで、マジカルっぽいものを思い浮かべるもんな?
プリ〇ュアとか。
なんでこれはジャージなんだよ。
「ちょっと待ってね。まずコスチュームの仕組みを説明するね。コスチュームに与えられる魔力は1000Pなんだよ。これは本気出したらこの区域潰せるレベル。それが2つの方向に割り振られるんだよ、大体。それによって見た目も変わる。」
彼女が言うには、
①魔法攻撃力
②身体能力強化
の二つらしい。
そして続けられた言葉に、言葉を失わざるを得ない。
「平均としては半々くらいが普通なんだよね。いや、魔法の方にやや傾くのが大半。8割5分はそう。でも、貴女の場合魔法攻撃力に12ポイント、身体能力強化に988ポイント割り振られてたんだよね……。それによって付与された魔法も相当尖った物になってるよ。……聞きたい?」
「聞きたいです当然でしょう」
即答した。
「そう。それじゃあ教えるけれども……。期待しないで?いい?」
「貴女の付与魔法は『物理特効』。それ以下でもそれ以上でもない、純粋な攻撃力増幅魔法。マジカルな要素なんて全くないよ(笑)」
……???はい?ぶっ……物理特効?ちょっとなに言ってるかわかんない。kwsk。
「手順としては、魔法を使う→なんか力がみなぎってくる→強くなるみたいな感じじゃないかな?」
「なんで断言してくれないんですかぁ……。」
「え?だって私が教わった限りではそんな魔法発現した人なんていないんだもん」
は?えぇと……。うん。
わーいオンリーワンだー(白目)
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