第102話 新学期(二年生)②

 新学期は何かとイベント続きだ。

 クラス委員決めに。身体測定。春の遠足。 

 四月だけでこれだけイベントが詰まっている。といっても四月が終わればこのイベントラッシュは終わるんだけどな。

 そんなわけで、俺たちは今クラス委員を決めている最中だった。


「この中で図書委員やりたい人いる~?」

 

 担任がそう言って俺たちのことを見た。 

 図書委員か。きっと……。

 俺が琴美の方を見ていた。思った通り琴美が手を挙げた。


「はい! 私やります」

「じゃあ、後一人ね」

 

 きっとそれはもう決まっている。

 ほら、思った通り。

 平子さんが手を挙げた。


「私もやります」

「七瀬さんと平子さんね。二人ともよろしくね」

「「はい」」

 

 琴美と平子さんがお互いに見合って嬉しそうに微笑み合っていた。

 よかったな琴美。俺は心の中でそう呟いた。

 去年も一緒にやって楽しかったって言ってたもんな。

 その後も順調にクラス委員は決まっていった。

 英彦は体育委員。俺は何も割り当てられなかった。正直ありがたかった。委員なんてめんどくさいだけだからな。

 

「クラス委員も決まったし、後は自習にしましょうっか」

 

 担任がそう告げると、生徒たちが一斉に歓喜の声をあげた。

 友達のところに自分の椅子を持って行き話す生徒がほとんどだった。

 それは琴美たちも同様で、示し合わせたかのように俺の席の周りに集まってきた。


「自習だってラッキーだね」

「そうね」

「なぁ、なんで俺の席に集まるんだ……」

「まぁ、まぁ細かいことはいいじゃないか。蒼月」

「そうだよ。蒼月君。せっかくの自習なんだから、お話しないと!」

「なら、琴美の席ですればいいだろ」

「それだと蒼月君来てくれないでしょ。動くのめんどくさいとか言って」


 よくわかってるじゃないか。加えて言うなら、俺は勉強がしたいんだよ。せっかくの自習なんだから静かに勉強させてくれ。


「あー。その顔は私たちのこと邪魔だって思ってるでしょ」


 琴美が頬を膨らませてぷんぷんと俺のことを睨んでいた。

 

「俺は勉強がしたいんだよ」

「勉強なんていつでもできるじゃん」

「おしゃべりだっていつでもできるだろ」

「ぶぅ~。アリス~。蒼月君がいじめてくる~」


 そう言いながら平子さんに抱き着く琴美。

 そんな琴美をよしよしといった感じで頭を撫でる。その手つきは手慣れた物だった。この二人の間ではもう何度も同じようなことを繰り返しているのだろう。


「佐伯君の勉強の邪魔にならないようにお話しましょうね」

 どうやら、平子さんは琴美側に回ったらしい。

 

「そうだね~。蒼月君のことはほっといてお話しよう」

「お前らな~」


 二人は俺のことなど気にすることなく話し始めた。

 

「なぁ、英彦。平子さんってあんなキャラだったか?」

「七瀬さんと同じクラスになれてテンションが上がってるんだろ」


 英彦はケラケラと笑った。

 どうやら、ここには見方はいないようだ。

 俺は問題集を開いて問題を解き始めた。

 まぁ、いっか。琴美の楽しそうな顔を見ることができるしな。俺と話しているときは別の楽しそうな顔がそこにはあった。




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