第82話

 四人でご飯を食べ終わると、俺と琴美はすぐに俺の部屋に戻って本を読むことにした。それほどまでに、俺は読みかけの葵の小説の続きが気になっていたのだ。それは、琴美も同じだったようで、部屋に入るなりすぐにベッドにもたれて本を読み始めた。


 俺も琴美の隣に座るとほんの続きを読み始めた。場面は中盤。もうそろそろ、はんにんと対峙する場面と対峙するところではないかといったところだった。

 一時間ほど集中して読んでいたら、先に琴美が本を読み終わたのか。声を上げた。


「はぁ~。面白かった!」


 琴美はしみじみとそう言った。俺はその言葉で集中力が切れた。


「そんなに面白かったのか?」

「うん! もう、まさかの人物が犯人だったよ!」


 琴美は大きな瞳をきらきらと輝かせながら熱く語った。


「それ以上はストップ。俺も読むんだから犯人を言うのはやめてくれよ」

「あ、ごめん。蒼月君は今どのへん?」

「あと少しで、犯人の正体がわかるってところかな?」

「そっか。読み終わったらお話しようね!」

「そうだな」


 そこでちょうど、葵がお風呂が溜まったと俺たちを呼びに来た。


「琴美、先に入ってきていいぞ。俺はもう少し読みたいから」

「わかった。楽しんでね!」


 そう言って、琴美は俺の部屋から出て行ってお風呂場に向かった。


「さて、もう少し読んじゃいますか」


 俺は再び、ほんの世界に入った。最後まで読み終わったころには琴美がお風呂から上がってきてた。


***


 琴美と入れ替わるように俺はお風呂に入ってさっぱりすると、自分の部屋に戻った。


「おかえり」

「ただいま」

「本、読み終わった?」

「読み終わったよ」

「じゃあ、お話しよう!」

「そうだな」


 琴美はいつにもましてテンションが高かった。

 俺たちの読書トークはそれから数時間続いた。


「そろそろ、眠くなってきちゃった」


 琴美が大きなあくびをする。

 俺もそれにつられるようにあくびをした。

 ちらっと壁にある時計を見ると、二十二時を迎えようとしていた。

 まだ、寝るには少し早いけど、今日は結構歩いたから疲れていた。


「寝るか?」

「そう、だね」


 琴美は何だか名残惜しそうにそう言った。


「どうかした?」

「ううん。ちょっと寂しいって思っただけ」

「なら、一緒に寝るか?」

「え、いいの?」

「まあ、琴美がいいならだけど」

「一緒に寝たい」

「じゃあ、一緒に寝るか」


 というわけで、俺と琴美はシングルベットに二人で眠ることになった。勢いで言ったはいいものの、狭すぎて少し動いただけで背中と背中がくっつきそうだった。

 寝れない!?


「琴美。起きてるか?」

「起きてるよ」

「狭くてごめんな」

「いいよ。蒼月君のぬくもりを感じれるから……」

「そっか……」


 俺のぬくもりを感じるか。俺も琴美のぬくもりを感じれるから悪い気はしないんだけどな。

 今日は眠れそうにないなと思いながら、俺は目を瞑った。




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