第81話
葵が俺たちを呼びに部屋にやってきた。
「二人とも~。ご飯できたわよ」
葵の呼びかけで俺は現実に戻ってきた。正直に言おう、今まで、読まなかったことを後悔するほど葵の書いた小説は面白かった。
「蒼月。どうだった私の小説は?」
「面白かったよ」
「あら、やけに素直ね」
なぜか、葵は俺が素直に答えたことに驚いていた。
「面白いものは面白いって言わないと」
「そ、そう。なんだか、そんなに直球に言われると照れるわね」
そう言って葵は恥ずかしそうに視線をそらした。
たまには、素直にならないとな。いつもそっけない態度をとってしまうからな。
俺はそんな葵から琴美に視線を移した。
琴美はまだ、ほんの世界に入っているみたいだった。邪魔をしてしまうのは少し気が引けたが、俺は琴美の肩をさすって現実に戻ってくるようにした。
「琴美、ご飯だって」
「え、もうそんな時間?」
「らしいぞ」
「いいところだったのに」
「そうだったのか。ごめん」
「ううん。大丈夫、ご飯食べ終わってからまた読むから」
「ん~。琴美ちゃん!」
葵が琴美にいきなり抱き着いた。そんな葵の行動に困惑する琴美。そりゃあ、いきなり抱き着かれたら誰だって困惑するわな。俺は慣れてるけど。
「お母さん、琴美が驚いてるから、離れて」
「え~。だって嬉しいんだもん!」
「でもいきなりはダメだ」
「じゃあ、一言声をかけたらいいの?」
「それは琴美次第だな」
「いい? 琴美ちゃん?」
「は、はい」
琴美は何が何だか訳が分からないっといった顔で俺のことを見て助けを求めていた。俺は、こうなった、葵は何をやっても止まらないことを知っているので、諦めてという視線を送った。
「やったー。琴美ちゃんの許可ももらったし、これからたくさん抱き着いちゃお!」
「ちゃんと許可を取れよ」
「わかってるわよー!」
本当にわかってるんだかな。
「それより、ご飯で呼びに来たんだろ」
「そうだった! 二人ともご飯一緒に食べましょ!」
読みかけの本に栞を挟んで俺たちは一階のリビングに向かった。
「めんどくさい、お母さんでごめんな」
「ちょっと、びっくりしたけど、大丈夫だよ」
「それならいいんだけどな。嫌だったらちゃんと言ってくれよな」
「うん」
リビングに降りると、雄二が出来上がったご飯をテーブルに並べているところだった。
「手伝うよ」
「ありがと。じゃあ、これを持って行ってくれるかい」
「了解」
ご飯をすべて運び終えると、四人でテーブル席に座ってご飯を食べ始めた。
肉じゃがに卵焼きに鮭の塩焼きといかにも家庭的な料理が並んでいた。琴美の料理に口がすっかりと染まっていたけど、たまに食べるおふくろの味(葵の料理)はやっぱり美味しい。
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