第78話

 ご飯を食べ終わった俺たちは琴美の要望で俺の昔のアルバム鑑賞会をすることになっていた。


「この蒼月君かわいい~」


 琴美が今開いてるページには俺が幼稚園の頃の運動会でかけっこをしている写真が貼ってあった。


「この蒼月君もかわいい~」


 次に開いたページには俺が小学生の頃の……。

 て、なんだこの仕打ち! 恥ずかしすぎるからそろそろやめてくれませんかね!?


「あの、琴美さん? そろそろやめてくれませんか?」

「え~。どうしようかな~。蒼月君も私のアルバム見て、さんざん私を恥ずかしい気持ちにさせたしな~」

「それは……」


 それを言われては何も言い返すことができなかった。

 もう、なるようになれだ!


「わかったよ。もう、好きなだけ見てくれ。俺は自分の部屋にいるから。ここにいたら、恥ずかしすぎて死んでしまう」


 俺は、リビングから逃げるように実家の自室に向かった。

 二階にある俺の部屋は、俺が一人暮らしを始める前と何一つ変わってなかった。


「懐かしいな……」


 中学生時代に使っていた勉強机。ベッド。


「お、ギターも残ってる」

 

 俺は、昔よく弾いていたギターを手に取った。そして、音を鳴らしてみる。


「うん。まだいい音を出すな」


 俺は少しだけチューニングをして、ギターで昔弾いていた曲を弾いた。

 うん。今でもまだ弾けるな。なまってるかと思ったけど、意外と指が覚えている。

 俺は夢中になってギターでいろんな曲を弾いた。

 

「懐かしい~」

「琴美。いつの間に」

「え~。やめちゃうの?」


 俺がギターを弾くのをやめると琴美が悲しそうな顔をした。

 てか、いつの間に部屋に入ってきてたんだ。アルバム鑑賞会をしてたんじゃないのか?

 

「もっと弾いてよ~」

「何かリクエストはあるか?」

「なんでも弾けるの?」

「う~ん。昔、流行った曲とかなら」

「じゃあ、あの曲がいい」


 そういって琴美が提案してきたのは五人組の大人気アイドルの超人気曲だった。今でも、いろんな町で流れてたりもしている。

 その曲なら、たくさん練習したから弾けるはずだ。

 俺はギターを持ち直して、その曲を弾き始めた。

 

 チャ、チャ、チャ、チャララ、チャ、チャ、チャ~。


 うん、弾ける。

 隣に座ってる、琴美を見てみるとノリノリで体を揺らしていた。そんな琴美を見ていると俺もノリノリになって楽しくギターを弾いた。


「やっぱりこの曲は名曲だね~」

「そうだな。中学生の頃ずっと聞いてたよ。解散したときは悲しかったな~」

「ね。ずっと続いてほしかったよね」


 永遠に続いてほしいと思っていても、いつかは終わりがやってくる。

 ずっと続くなんてことはないんだよな。だからこそ、今を大切にしなきゃいけないんだよな。そう分かってても、できないときがあるから後悔するんだよな。

 俺は琴美との今の時間をどれだけ大事にすることができるのだろうか。

 隣で楽しそうにしている琴美の頭をそっと撫でた。


「どうしたの?」

「なんでもない。次は何が聞きたい?」

「そうだね~。じゃあ、次は……」

 

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