第73話
学校が終わって、家に帰ると琴美がアルバムを見せてくれた。
「ほんとに見てもいいのか?」
「いいよ。少し恥ずかしいけど」
「じゃ、じゃあ見るよ?」
「どうぞ」
ソファーにもたれるように座って、俺は琴美の小学生時代のアルバムを開いた。琴美は自分のアルバムもすべて、俺の家に持ってきていたみたいだった。家を転々としている琴美は大事なものをいつでも持ち運べるように一つにまとめているらしい。その中にアルバムもあるというわけだ。
「これが琴美?」
「そうそう。それが私……」
「可愛いな」
写真に写っている小学生の琴美はカメラ目線でピースサインを作って笑顔を向けていた。どうやら、どこかの公園に遠足に行っている時に撮った写真のようだった。
「今とあんまり変わらないんだな」
「……」
「可愛いな」
「……」
小学生の頃の琴美は今とあまり変わらず、可愛らしい顔をしていた。
俺は次々とページをめくっていった。
どの写真も琴美は笑顔で写っていた。お姉さん(琴音)と一緒に写っている写真も、お母さん(琴葉)と一緒に写っている写真もあった。
「ほんとに可愛いな」
「……」
「どうしたんだ?」
俺は隣に座っている琴美を見た。
琴美はすっかりと顔を赤くして、ソファーに置いてあるクッションに顔をうずめいてた。
「もう、可愛いって言いすぎ……」
「だって、可愛いんだからいいだろ」
「もう終わり!」
そう言って、琴美は俺の手からアルバムを取り上げた。
「もう少し見たかったのに」
「ダメ、これ以上は私の心臓がもたない……」
仕方がない。今は諦めるとしよう。
琴美は自分の部屋に逃げ込むようにアルバムを持って入っていった。
「それにしても本当に可愛かったな。もしも、琴美との間に子供ができたら、あんな子になるのだろうか……」
俺はそんな先の未来のことを考えながら、琴美にオススメしてもらった本を開いた。
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