第72話 超絶美少女と冬休み

 季節は冬となり、うっすらと雪が積もっていた。

 今年は例年よりも寒く、雪がかなり降るとニュースで言っていた。


「もうすっかりと冬だね」

「そうだな。来週から冬休みだもんな」

「そういえば、俺の実家に行く話だけど、年末になりそうなんだが、大丈夫か?」

「全然、大丈夫だよ」

「そうか。じゃあ、そういうことでよろしく」

「はーい」


 ということで、俺たちは年末に実家に帰ることになった。夏休みに帰る予定だったがすっかりと忘れてしまっていた。


「蒼月君の実家に行くの楽しみだな~」

「相変わらず、お母さんと電話してるのか?」

「してるよ~。蒼月君の子供のころの話したくさん聞かせてくれるよ」

「マジか……」

「アルバムも見せてもらう約束もしたよ!」

「俺のいないところで……」


 まあ別に聞かれて恥ずかしい話も写真もないからいいんだけど。普通の人生を送ってきたからな。


「ダメだった?」

「いや、いいよ。琴美が聞きたいなら好きだけ聞いてくれ……」

「じゃあ、たくさん聞いちゃお」

「どうぞ、さて、そろそろ学校に行くか」

「そうだね」


 俺たちはそれぞれ自分の部屋に戻って着替えをして、一緒に学校に向かった。


「おはよう。二人とも」


 教室に入るといつものように英彦が挨拶をしてくる。


「おはよう英彦」

「おはよう湯山君」


 俺は英彦に挨拶をすると自分の席に座った。

 体育祭以来、英彦の他にも俺に挨拶をしてくれるようになった。


「蒼月君も変わったね」

「そうかもな」


 俺が変わったのか、クラスメイトが変わったのか、多分両方だろうな。

 人が変わるのはほんの少しのきっかけ。そのきっかけが今までの噛み合ってなかった歯車が噛み合いだすことがある。もちろん、その逆もある。

 

「私は嬉しいよ。クラスの人たちと蒼月君が仲良くしてるのが」

「そうなのか?」

「うん。だって、最初は私と湯山君意外とは誰とも話さなかったじゃん」

「あんまり、人と話すのって得意じゃないからな」

「そうなの? でも、私とは普通に話してたよね?」

「それは、琴美がぐいぐい来るから仕方なくだよ」

「へ~。私と仕方なく話してたんだ」


 琴美が俺のことを睨んでいる。


「昔は、だから、今はそんなことないからな!」

「その必死さが逆に怪しいー」

「怪しむなよ! 今でもそう思ってたら、琴美と付き合ってなんかないよ」

「分かってるって! ちょっとからかっただけ!」


 そう言って、琴美はゲラゲラと笑っている。


「そんなに笑うなら、アルバム見せないからな」

「えー。それはいや! 謝るから許して」

「じゃあ、今日帰ったら琴美のアルバムも見せて。それなら、許してあげる」

「そ、それはちょっと……」

「じゃあ、俺のアルバムは見せない……」

「ぶー。いいもん。蒼月君に見せてもらわなくても、葵さんに見せてもらうから!」

「ぐっ……」


 そう言われると、俺は何も抵抗することができない。

 

「ちゃんと、蒼月君の気持ちは伝わってるから安心して」

「それは、左様で」


 俺は少し照れながら、頬をかいた。

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