第71話

 琴美の誕生日当日。

 昨日、英彦と別れた後、俺は学校の近くにあるあのお店でケーキを買って帰った。ここは、ケーキ以外にもいろんなスイーツを置いているのだが、どれも絶品だった。なんでも、そのお店のパティシエが世界的に有名な人らしい。いつ行っても、結構お客さんがいる。

 今度、琴美と一緒に行ってみるのもいいかもしれない。


「琴美、誕生日おめでとう」

「え、ありがとう!」


 その日は夜まで家でダラダラと過ごして、琴美の誕生日会は夜行うことにしていた。


「覚えててくれてたの?」

「当たり前だろ。忘れるわけがないだろ」

「嬉しい」

「はい。これ、誕生日プレゼント」

「開けてもいい?」

「もちろん」


 琴美が包装紙を丁寧に破いて中の箱をそっと開けた。


「うわぁ~。素敵なネックレス。これってもしかして?」


 俺が仕組んだ仕掛けに気づいたのか、琴美が嬉しそうな顔でこっちを見た。


「蒼月君の名前にちなんだネックレスだね!」

「うん。俺の誕生日の時にこれをもらたからな。同じようなものをあげたいな思ってた」


 俺は自分の首についているネックレスを見せながら言った。それは、琴美が今年の俺の誕生日の時にくれたものだった。


「つけてよ!」


 俺は琴美の手からネックレスを取ると、琴美の後ろに回ってつけてやった。

 うん。よく似合ってる。


「めっちゃ素敵……」

 

 琴美は俺があげたネックレスをうっとりとした目で眺めていた。上に掲げてみたり、手のひらに置いてみたり、いろんな見方をしていた。よほど、気に入ってくれたらしい。


「ありがとね。蒼月君!」

 

 そう言って、琴美は俺に抱きついてきた。

 俺はそんな琴美を受け止めて、軽いキスを唇にした。


「これからもよろしくな」

「うん! 最高の誕生日だよ!」


 琴美は最高の笑顔を浮かべて、俺のあげたネックレスを顔の横に持ち上げていた。

 

 

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