第66話

 体育祭の昼休憩。俺は、琴美と英彦と平子さんと一緒に中庭で昼食を食べていた。今日は体育祭ということで、各々が好きな場所で昼食を食べていた。屋上で食べる生徒もいれば、教室で食べる生徒もいた。


「「「「「いただきます」」」」


 四人で声を合わせていただきますをする。俺の隣に琴美。英彦の隣に平子さんが座っている。

 今日の俺の弁当は久しぶりに琴美が作ってくれたものだった。英彦の弁当も平子さんが作ったものらしい。

 

「美味しそう!」


 久しぶりの琴美の弁当は俺の好きなものばかり入っていた。


「久しぶりだからね。気合い入れて作っちゃった!」

「ありがと」

「ほんとにどれも美味しそうだな」


 横から俺の弁当を見て英彦がそう言った。


「ま、俺の弁当も負けてないけどな」

 

 英彦が平子さんに向かってそう言うと、


「恥ずかしいからそう言うのはやめて」


 と、平子さんは顔を逸らして言った。


「やっぱり仲いいな」


 俺がその様子を見て呟いた。


「お前たちには負けるけどな」

「そんなことはないだろ」

「いやいや、一緒に暮らしてる時点で俺たちの負けだよ。俺たちはまだ一緒に暮らしてないし」

「でも、歴はそっちの方が長いだろ」

「そうだけど、て、二人ともどうしたんだ?」


 俺たちがそんなくだらないやり取りをしていたら、琴美と平子さんは顔を真っ赤にして、俺たちから少し離れたところに移動して座っていた。


「恥ずかしいからそれ以上続けるなら、私たちは教室に帰る……」

「蒼月君、テンション高すぎ!」

「ごめん。なんだか、嬉しくって」


 俺が謝ると二人は元の位置に戻ってきた。

 どうやら、俺はテンションが高いらしい。自分ではいつもと変わらないつもりだったけど、きっと、琴美の料理を久しぶりに食べれるのと、予想以上に体育祭が楽しいから、テンションが上がっていたのだろう。


「まあ、ワクワクするのは分かるけどね! 体育祭楽しもんね!」

「てか、二組強すぎじゃない?」


 一組の平子さんがそう言った。一組は現在三位の位置にいる。


「湯山君がクラスをまとめてくれてるからね」

「なっ……。英彦のせいか!」

「俺たちのクラスは団結力が違うからな!」

 

 英彦が胸を張ってそう言った。

 英彦がいるのといないのとでは大違いだったろうなと俺は思った。こんな俺にも他のクラスメイトと変わらない態度で接してくれるしな。


「英彦と同じクラスでよかったよ。ありがとな」


 俺はそう呟いた。


「どうしたんだ!? 蒼着がそんなこと言うなんて……。俺は嬉しいぞ!」


 そう言って英彦が俺に抱きついてきた。


「ちょ、離れろよ!」

「悪い、嬉しくてなつい!」


 まあ、友達とこういう熱いやりとりは悪い気はしないのだが、さっきから琴美の視線が……。

 

「さ、ご飯食べて、午後の競技も頑張ろう」

「蒼月は騎馬戦しか出ないだろ」

「そう、だったな。あはは」


 琴美が顔を俺の肩にこてんっと置いた。

 

「蒼月君! 体育祭が終わったら私にもさっきのして……」

「わ、わかった……」

「じゃあ、許してあげる!」

「許すって……」


 まったく、どこに嫉妬してんだよ。俺の彼女は!?

 まあ、そんなところも可愛いんだけど。

 俺たちはご飯を食べ終わてそれぞれの教室に戻っていった。


「アリス~。また後でね」

「はいはい。また、後でね」


 一組の教室の前で平子さんと別れて、俺たちは自分のクラスに入って、弁当を置くと校庭に出ていった。

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