第65話
午前中最後の競技が二人三脚(各学年)だった。
ここまでの三組の成績は最初と変わらず二位だった。ライバルはどうやら三組のようだ。三組はずっと一致をキープしていた。その点差は僅かなものだった。どっちかのクラスが、一個でも多く優勝を取ったら一気に順位が変わるそのくらいの点差だ。
「いよいよだね。蒼月君!」
「そうだな。緊張する……」
「大丈夫だよ。私たちなら。私が蒼月君に合わせるから全力で走ってね!」
「分かった」
体育祭の係りの誘導に従って俺たちはスタート位置に着く。二人三脚は各クラス五組が選出される。ちなみに、一年生は二人三脚だが、二年生になったら四人五脚、三年生になったら全員でという感じになるらしい。プログラムにそう書いてあった。
俺たちの順番は三番目だった。
一番目の走者がスタートした。
各々練習の成果を見せつけるように一心同体で走っていく。最後までこけることなくゴールする組もあれば、途中でこけてしまった組もあった。
「俺たちはこけないようにしないとな」
「大丈夫だって」
「その自信は一体どこから湧いてくるんだ? 俺たちは一回も練習してないんだぞ」
「そうだね。でも、どのチームより私たちの愛は深いと思うけど?」
琴美がいたずらな笑みを浮かべて俺の顔を覗き込んできた。
まったく、そんなことを言われたらますますこけるわけにはいかないな。
「そう、だな」
「でしょ~。だから大丈夫だよ! ほら、次だよ」
俺たちはスタートラインに移動して、お互いの足をひもで結んで、腰に手を置いた。
パンッ。
ピストルの音が空を切る。
俺と琴美は「せーの」っと掛け声をして走り出した。
練習なんて一度もしていない。だけど、まるで一人で走っているかのように俺たちは息をぴったりと合わせて走っていた。琴美が俺のスピードに合わせて走ってくれている。その心づかいが何よりも心強かった。周りの様子を見る余裕はなかったけど、俺たちの前に生徒はいなかった。
そして、俺たちは誰にも抜かれることなく、一位でゴールした。
「やったー!」
琴美がハイタッチを求めてくる。俺はそれに応えるように琴美と両手を合わせた。
「やっぱり、私たちの愛に勝てるチームはいなかったね」
「そうだな。俺に合わせてくれてありがと」
「こちらこそ。いつも私に合わせてくれてありがとう」
琴美が最高の笑顔で俺にそう言った。
俺も琴美に最高の笑顔を送り返した。
二組は俺たち以外にも二ペアが一位を獲得していて、午前の総合順位を一位で終えることできた。
このまま、午後も……。
残る、俺の役目は騎馬戦。そこで、どれだけ点を取れるかだな。
午前の授業がすべて終わって俺たちはそれぞれの教室へと帰っていくのであった。
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