第64話
俺たちは校庭に並んでいた。
今か今かと体育祭の開始を待っている生徒もいれば、友達と話して、体育祭には興味がないという生徒もいた。
校長先生の話が終わって、生徒会長が体育祭の宣誓の挨拶をして、開会式が終わった。その後は、全校生徒で準備運動をして、それぞれのテントへと戻っていった。
「最初は一年生の百メートル走だな。これは全員参加だから入場門のところに移動するぞ~」
英彦がそう呼びかけて、俺たちは入場門に向かった。
走るのは正直苦手だ。でも、クラスのためにも少しでもいい順位でゴールしたいな。どの学年もクラスは全部で五つ。得点的には一位が二十点。二位が十点。三位が七点。四位が五点。五位が三点といった感じだった。
個人的には相手次第だけど、三位か四位になれればいいかなと思っていた。
「それでは、一年生の皆さん入場してください~」
三年生の体育祭の係りの人の呼びかけで、俺たちは校庭の真ん中に移動した。
俺の順番は前から十番目だった。
一番目の走者がスタートする。男子生徒、女子生徒の順番で走る。当然だが、足の速い生徒もいれば遅い生徒もいる。この百メートル走は出席番号順だから、どんな生徒にあたるのかは完全に運次第だった。どうか、足が速くない人にあたりますように。そう、願っていたら俺の番がやってきた。
俺のところに琴美と英彦がやってきてくれてエールを送ってくれた。俺はそれを受け取て、スタートラインに立った。
今のところ、俺たち三組は一位を獲得した生徒が五人だった。なかなかの成績なのではないだろうか。
パンッ。
ピストルの音が空を切って、俺たちはいっせいに走り出した。
全力で必死に腕を振って、ない体力を絞り出して、俺は走った。その結果、俺は二位でゴールすることができた。どうやら、他の走者も足が遅い生徒だったらしい。運がよかった。俺は、二位の生徒が座っているところに並んだ。
次は琴美の番だった。
万全の状態の琴美ならまず負けはないだろう。でも、今日の琴美は足が治ったばかりだ。無意識に足をかばっていつもの力を出せないかもしれない。そう思っていたのに、琴美は二位と圧倒的な差をつけて一位でゴールした。
やっぱり琴美は凄いな。足を捻挫してたなんて嘘のような綺麗なフォームで走り切った。思わず、俺はその姿に見惚れてしまっていた。
「おめでとう」
「ありがと!」
俺が一位の列に並んだ琴美に声をかけると、はじけるような笑顔が返ってきた。
本当に体育祭を楽しみにしてたんだな。これは、なんとしても騎馬戦でいい結果を残さないとな。俺は気合を入れなおした。
当然の結果というか、英彦もぶっちぎりで一位でゴールをしていた。
俺たちの最初の競技の合計点は二位で終わった。一位は二組だった。
その後は俺は出番もなく、自分のクラスのテントでクラスメイトの応援に精を出していた。
そして、いよいよ琴美との二人三脚がやってこようとしていた。
※ 三年生にぶっちぎりに早い男子生徒がいたのはまた別のお話。
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