第63話 (久しぶりの琴美の手作り弁当)

 いよいよ体育祭当日がやってきた。

 秋の涼しい風が心地のいい、いい天気だった。まさに、運動をするには絶好の日だった。

 

「蒼月君。お弁当は持った?」

「もちろん持ったよ」

「それじゃあ、行こう!」

「朝からテンション高いな」

「だって、足、治ったんだもん。こんなに嬉しいことはないよー」

「よかったな、治って。でも、また無理して捻るなよ」

「大丈夫。もしまたなったら、蒼月君に看病してもらうだけだから」

「そりゃあ、するけど……。ならないのが一番だからな?」

「はーい」

 

 琴美のやつ絶対に分かってない。また無理をしてケガをしないか心配だった。まあでも、せっかく、足が治ったんだし琴美には楽しんでもらいたいな。俺も琴美とする二人三脚楽しみだし。

 結局、琴美の足が完全に治ったのは今朝のことで、二人三脚の練習は一度もできていなかった。これで、優勝できるのだろうかと不安ではあったが、琴美となら優勝できる未来が見えてしまうから不思議だ。


 そして、足が治ったということで、今日からまた琴美の料理が食べれる。俺はそれが何よりも嬉しかった。琴美の足が治るまではコンビニの弁当だったり、パンだったりと手抜きのご飯ばっかりだったからな。そろそろ、琴美の料理が食べたくなっていたころだった。


「それじゃあ、まあ。行くか」

「行こう~」

 

 俺たちは手を繋いで横に並んで一緒に学校に向かった。

 学校に到着して、教室に入るとクラスメイト達はやる気に満ち溢れていた。絶対に優勝してやるという熱い想いがひしひしと伝わってきた。


「みんな気合入ってるみたいだな」

「だね~。私もみんなと同じ気持ち」

「俺も琴美と同じ気持ちだ」


 俺たちに気が付いた英彦が近づいてきた。


「お、七瀬さん。足治ったみたいだね」

「おかげさまで治ったよ」

「これは優勝はうちのクラスがもらったな」

「だね!」

 

 二人でがんばろーっと手を上に突き上げていた。

 そして、英彦は蒼月も頼んだなと俺の肩をポンと叩て、他のクラスメイトのところへ向かって行った。


「ほんとに、あいつはクラスをまとめるのがうまいよ」

「だね。湯山君がいるからクラスが一つになってる気がするね」

「そうだな」


 俺はそんな英彦を見ていて、友達になれてよかったのと思った。もしも、英彦と友達になっていなかったら、今、こんな風に体育祭を楽しみたいなんて思ってもいなかっただろうな。

 ほんとに、英彦は感謝しかない。いつもありがとな。俺は心の中で呟いた。


 

 

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