第62話
翌日の放課後から英彦の言う通り、体育祭の練習が始まった。
騎馬戦の練習をしている俺は今、三人の上に乗っている。一人はもちろん英彦だ。残りの二人はソフトボールで一緒に悔しさを味わあったクラスメイトだ。
「佐伯君は高いところ平気な人なんだ」
「あんまり怖くはない、かな」
「じゃ、このスピードは?」
英彦がにやりと笑って俺のことを見上げて言った。
そして、三人が息を合わせたように、一気に走り出した。それももの凄いスピードで。
「ちょ、ちょっと待て、それは怖い!」
「ほら、もっとスピード上げるぞ!」
俺の意見を無視して、英彦たちはさらにスピードを上げていった。
まじか、本番でもこの速さで他のクラスメイトと対峙することになるのか。俺は、この速さの中で鉢巻きを取れるのだろうか。
「そろそろ止まってくれ~!!」
ようやく英彦たちが止まって俺を下ろしてた。
俺は校庭に寝転がった。絶対、こいつら楽しんでやがる。
「怖かったか?」
英彦が俺の隣に寝転がって楽しそうに笑った。
俺はふざけんな、と肘で英彦の横腹をつついた。
「悪かったよ。ちょっとふざけた」
「本番ではもう少しスピード落としてくれよ」
「分かってるよ」
「なら、いい」
俺たちは笑い合った。ああ、俺は今、青春をしている。楽しい、心の底からそう思っていた。
英彦は他の練習に向かった。俺は体を起こして、他の生徒の練習の様子をあがめてる琴美のところに向かった。
「蒼月君。楽しそうだったね」
「見てたのか?」
「うん。めっちゃ、叫んでたね!」
琴美はおかしそうに笑っていた。本当は、琴美も参加したいんだろうな。俺は琴美の隣に座った。
「早く治るといな」
「ほんとだよ。私も早く練習したいのに~。蒼月君とだって、二人三脚の練習をしたいのに~」
「そうだな。でも今は足を治すことに集中して」
「うん。明日には治ってるかな?」
「どうだろうな」
今すぐにでも練習に参加したいと体育座りをしている琴美はそわそわと体を左右に動かしていた。
運動が好きなのか、クラスメイトと練習がしたいのか、きっと琴美の場合どっちもなんだろうな。
「二人三脚、一位取ろうね」
「そうだな」
俺たちは肩を寄せ合いながらクラスメイト達の練習を見守っていた。
きっとこのクラスが団結すれば優勝できるんだろうな。俺はそう思った。
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