第50話 超絶美少女と同棲開始

 今日の放課後から、いよいよ琴美との同棲が開始することになる。


「蒼月、おはよう」

「英彦、おはよう」


 朝の教室で英彦と挨拶を交わした。


「なんか、上機嫌だな。いいことでもあったのか?」

「どうしてそう思う?」

「いつもより雰囲気が緩いから」

「なんだ、その理由」


 まあ、確かに今日から琴美との同棲生活が始まるから、俺は若干浮かれていた。


「なぁ、英彦は平子さんと同棲とか考えたりするのか?」

「何だよ急に?」

「いや、ちょっと気になってな。忘れてくれ」

「どうだろうな。少なくと高校を卒業してからからかな」

「そうか」


 そんなもんだよな。俺だってこんなに早く琴美と同棲することになるとは思ってなかった。というか、英彦は二年後もアリスと付き合ってる自信があるんだな。

 俺は二年後も琴美の隣にいることができてるのだろうか?


「どうした? 女神さまと同棲でもするのか?」

「い、いや。なんでもない」


 妙に鋭いな。

 英彦にバレても別にからかわれる程度だろうけど、このことが他の生徒に知られてら、俺は殺されてしまう。


「まあ、ケンカするなよ」

「その心配はしてない」

「俺もそんなとこ想像できないわ」


 英彦は豪快に笑って自分の席に戻っていた。

 今日の一限目の授業は数学だった。

 


 放課後になって、俺は琴美と一緒に家に帰った。


「「ただいま~」」


 二人でそろって言った。

 そして、二人でそろって家に入る。

 

「なんかいいね。こういうの」

「そうだな」

「さて、今日から同棲が始まるわけですが、せっかくなら夫婦になりきりませんか?」

「また、唐突だな」

「いいじゃん。せっかく、同じ家に帰るんだから、それに予行練習ってことで……」


 そう言って、琴美は俺のことを家の外に追い出した。

 

「もう一回、入ってきて」

「分かったよ……」


 俺はもう一度、家の扉を開けて中に入った。


「ただいま」

「おかえりなさい。あなた」

「あ、あなた……」

 

 琴美が少し前かがみになってそう言った。

 なんという破壊力。制服姿なのに、まるで夫の帰りを待ってた妻のように見えた。


「ご飯にする? お風呂にする? それとも……」

「着替える!」

「ノリ悪いな~」


 琴美は頬をふくらませて不満そうにしていた。

 俺はお決まりの夫婦のやり取りを無視して自室に入った。

 

「危なかった……」


 逃げ出さなかったら、理性を保つことが難しかった。

 あれを俺はこれから毎日……。

 おかえりって言ってくれる人がいるだけでも嬉しいのに。その、おかえりを言ってくれるのが恋人だなんて、幸せすぎるんだが!!


「落ち着いた~?」


 琴美が部屋の扉をノックして、チラッと顔を出した。


「ごめんね。嬉しくて調子に乗りすぎた」

「いや、いいよ。俺も逃げ出してごめん」

「ご飯作っちゃうね」


 琴美は顔を赤くして逃げるようにキッチンに向かった。

 取り残された俺はベッドに倒れこんで天井を見上げた。


「俺の心臓は持つのだろうか……」


 心臓の音が静かな部屋に響いていた。

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