第49話 超絶美少女と片づけ(ニラたま豆腐丼)
学校が終わって、俺と琴美は一緒に段ボールの山を片づけていた。
「マジでこれ、どれだけ時間がかかるんだ……」
「三時間? 大変だね~」
琴美は笑いながら言った。
「いや、笑い事じゃないから……」
「だね。ごめん」
「まあ、いいけど。とにかく頑張ろう」
それから、片づけは本当に三時間もかかった。
琴美の部屋は俺の家の余っていた部屋をあてた。あっという間に琴美仕様のかわいらしい部屋になっていた。
「やっと終わった~」
「だな。少し休憩しよう」
俺はソファーにもたれかかるように座った。
チラッと時計を見てみれば十九時を回っていた。
「ご飯作っちゃうね~」
「休憩しなくていいのか?」
「うん。お腹空いてるでしょ?」
「空いてる……」
「大丈夫だよ~。蒼月君は休憩してていいよ」
「わるいな」
琴美は疲れなど微塵も見せることなくキッチンに向かった。
なんか、このやりとり、前にも思ったことあるけど、夫婦みたい……。
こんなやり取りを俺は明日から一年近くすることになるんだよな。入学式の時の俺はこんな未来になるとは想像してなかっただろうな。
「できたよ~」
「今日はどんぶりか」
「うん! 今日はニラたま丼だよ~。ニラ食べれるよね?」
「食べれるよ」
「よかった」
琴美は俺の隣に座って一緒にいただきますをした。琴美の手料理を食べると、さっきまでの疲れはすっかりと消えてなくなった。
「美味しい。疲れが吹き飛ぶ」
「大袈裟!」
「いや、マジで。琴美の料理を食べたら疲れが一気に消えた」
「ありがと」
「これが毎日食べれる俺は幸せものだ」
「もう! 大袈裟だから!」
琴美は頬を赤くして顔をそらした。
「そうだ。琴美にあれを渡しとかないとな」
「なに?」
俺は自分の部屋に行ってこの家の合い鍵を持ってきた。
「はい、これ」
「これって……合い鍵?」
「そう。必要ないかもだけど渡しとくよ」
「ありがと」
琴美は俺から受け取った合い鍵を胸の前で大事そうに抱えていた。
「改めて、明日からよろしくね。蒼月君」
「こちらこそよろしく」
俺たちはお互いに頭を下げあって、笑いあった。
「なんか夫婦になるみたい」
「そうだな……」
「ほんとになっちゃう?」
「え……」
琴美はいたずらな笑みを浮かべていた。
まあ、そうなれるならいつかは……。
その瞬間、テーブルに置いていたスマホが鳴った。
「うわ! ビックリした。お母さんからだ。出てもいいか?」
「もちろん」
俺は琴美に断りをいれてから電話に出た。
話を切り上げるにはちょうどいいタイミングだった。あれ以上、あの話題で話してたら、また……。
「もしもし……」
『蒼月! あんた、なんで夏休みの間に家に戻ってこないのよ!』
「あ……」
すっかりと忘れてた。そういえばそんな約束してたな。
「忘れてた……」
『でしょうね。毎日琴美ちゃんといちゃいちゃしてたみたいだし』
「し、してないから!」
『毎日琴美ちゃんと一緒にいたことは否定しないのね』
「そ、それは……」
なんでこの人はそのことを知ってるんだ。
俺は琴美のことを見た。なぜか、琴美は楽しそうに微笑んでいる。
『まあ、いいわ。私も忘れてたし』
「あんたも忘れてたのかよ」
『家にいなかったからね』
「またどこかに取材に行ってたのか?」
『まあ、そんなとこ』
相変わらず、俺の母親も強烈なキャラだ。
『と、に、か、く! 年末には帰ってきなさいよ。琴美ちゃんを連れて』
「分かったよ。今度はちゃんと帰るから」
『なら、許してあげる』
あんたも忘れてたんだろ。
お互い様じゃねえか!
とにかく、冬休みはちゃんと実家に帰るとするか。お父さんにも会いたいしな。
『ところで、蒼月~。明日から琴美ちゃんと同棲するんだって?』
「な、なんでそれを……」
俺はまた琴美を見た。
まさか、琴美のやつ。葵に言ったのか?
『もちろん。本人から聞いたからよ。この前会った時に連絡先交換したからね。たまに、電話したりしてるわよ~』
「マジかよ……」
母親からの爆弾発言で俺は少しの間、フリーズしていた。
『ちょっと聞いてるの? 蒼月~。琴美ちゃんに代わってちょうだい』
「あ、ああ……」
俺はスマホを琴美に渡した。
二人は楽しそうに話をしていた。そんな様子を見ると、本当に電話をしてたんだなと思ってしまった。そういえば、初めて会った時から妙に息が合ってたことを思い出した。
「はい。必ず蒼月君を連れて伺います」
二人がどんな話をしているのか大体想像ができる。きっと、年末に俺をちゃんと実家に連れてくるように言われたのだろう。
「蒼月君。お母さんから最後に一言あるって」
「お、おう」
俺は琴美からスマホを受け取って耳に当てた。
「代わったよ」
『蒼月。琴美ちゃんのこと大事にしなさいよ。あなたにはもったいないくらいのいい子なんだから。泣かせたり喧嘩したりしたら、私、許さないからね』
「分かってるよ。同じことを琴美のご家族からも言われた」
『へぇ~。もう、琴美ちゃんのご家族と会ったんだ』
「まあな」
『とにかくそういうことだから。また年末にね』
「分かった。またな」
俺は電話を切った。
怒涛のような葵からの電話を終えて、俺はソファーにもたれこんだ。
「お疲れですね」
「まあな。てか、いつの間に仲良くなったんだよ」
「もともと息が合ってましたから。割とすぐに」
琴美がうふふと笑っている。
葵とは初めて会った日にすでに電話をしていたらしい。
「ここ、使いますか?」
琴美が自分の膝をぽんぽんとして俺の顔を覗き込んだ。
どうやら膝枕をしてくれるらしい。
「じゃあ、遠慮なく」
「どうぞ。今日は私の荷解きを手伝ってもらいましたから。ご褒美です」
俺はありがたくそのご褒美を受け取ることにした。
今日の琴美はスカートを履いていて、真っ白な生足が出ていた。
「今日はお疲れ様でした。年末楽しみですね」
「そうだな」
俺はその感触を感じながら静かに目を閉じて眠りについた。
「ありがと」
琴美は眠っている俺の唇にそっとキスをした。
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