第48話 超絶美少女と授業

 翌日から琴美の荷物が少しずつ俺の家に送られてきた。

 あのボロ家によくこんなにも入っていたなというくらいのたくさんの荷物が。

 そして、今はある授業の真っ最中である。

 俺たちのクラスで授業をしてるのは、この学校一の変わり者の教師だった。


「この問題を解ける人いますか?」

 

 先生がそう言って生徒を見回す。もちろん、俺は解ける。でも、自らすすんで手をあげることはしない。先生に当てられたならしぶしぶ答えるけど。


「はい。私分かります」


 学年一位の琴美が手を挙げた。

 琴美にかかればこの程度の問題は分かって当然だろう。

 黒板の前に立って琴美がスラスラと問題を解く。


「正解です。ありがとうございます。七瀬さん」


 クラスメイトが琴美に拍手を送る。そんな琴美と視線が合った。これからあの超絶美少女と一緒に暮らすことになるんだよな。琴美が言うにはとりあえず一年は一緒に暮らすことになるかもしれないということだった。琴音がこっちに戻ってくるまでということだろう。


「一年か~」

 

 長いようで、きっと短いんだろうな。楽しい時間はあっという間に過ぎるっていうしな。 

 琴美との生活がどんなものになるのか未だに想像ができないけど、楽しくなるってことだけは分かる。


「じゃあ、今日の授業はこの辺にして、残りは私の昔話でもしようかな」 

  

 その後、先生は雑談を十五分もした。


「あの先生の話面白いよね」

「そうだな。しかも、毎回雑談をしてるはずなのに、あの先生以外のクラスより授業の進みが早いし」

「だよね。凄いよね」

     

 昼休憩、俺と琴美は一緒にご飯を食べていた。

 この頃、俺たちに視線を送ってくる生徒はほとんどいなくなった。

 おかげで、穏やかな学校生活を送ることができている。もはや、俺と琴美が付き合っているのは全校生徒が知っているのではないだろうか。

 

「ところで、琴美。あの荷物はなんなんだ。なんであんなにあるんだよ」

「う~ん。服でしょ。カバンでしょ。食器でしょ。アクセサリーでしょ……」

「もういい。分かった」

「蒼月君の家は広いから大丈夫でしょ?」

「まあ、そうなんだけど……」


 なんか、さすがあの社長の娘って感じだな。琴美もたまに人の話聞かないんだよな。俺の母親も強烈だけど、琴美の母親もかなりの癖の強い人物だった。


「今日、帰ったら一緒に整理な」

「分かった」


 ほっとくと大変なことになってしまいそうだからな。

 家に帰ったら一緒に片づけをすることを約束した。


「そういえば、そろそろ体育祭があるね」

「そんなのあったな」

「楽しみじゃないの?」

「運動はあんまり得意じゃないからな」

「そうなの?」

「うん。球技とか全然できない」

 

 ちなみにこの学校には球技大会もある。球技大会は文化祭の前に開催されるらしい。正直、体育祭も球技大会も文化祭も憂鬱だった。


「琴美は楽しみなのか?」

「う~ん。どうだろう。どの競技に出るかによるね。二人三脚とか面白うそう。蒼月君と一緒にやりたい」

「そんなのあるのか?」

「一緒にできたらいいね」

「そうだな。それなら楽しそうかな」


 琴美と二人三脚。一位になる未来しか見えなかった。もしも、その競技に選ばれるのなら、少しは体育祭が楽しくなるかもな。

 授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。

 次の授業は国語だった。         

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