第43話 超絶美少女と母親と姉の思い

「そんなことがあったんですね。あの日・・・・・・」

「もう、このまま琴美に会えなくなるかもしれないって思ってたわ。でも、琴美は帰ってきてくれた。空になったおでんの容器を持って」


 そのおでんを琴美にあげたのは俺だ。まさか、そんな事情があったなんて。


「おでんをあの子にあげたのはあなたなんでしょ?」

「はい・・・・・・」

「改めてお礼を言うわ。琴美をあの時救ってくれてありがとう。琴美を見つけてくれてありがとう」

「・・・・・・」

 

 琴葉はまた深々と頭を下げた。

 そして、顔を上げて言った。

 

「あの子のことをこれからもよろしくね。あなたが支えてあげて」

「もちろん・・・・・・そのつもりです」

「うん。君になら琴美のことを安心して預けれるわ。あの子が男の人にあんなに懐くのってお父さん以外で初めてなのよ」

 

 琴葉は寂しいような、嬉しいような複雑な表情を浮かべていた。

 

「と言うことでさっきのは全て忘れてね。あなたを試しただけだから。琴美に相応しいかどうかを」

「どうでしたか?」

「もちろん合格よ。というか、試す前から合格は決まってたんだけどね。琴美ったら、家にいる間ずっと君の話ばっかりしてるのよ。全く嫉妬しちゃうわ」


 琴美は琴葉が自分たちのことは二の次なんて言ってたけど、それは全くの間違えだ。この人はいつだってこと見たのことを最優先に考えてる。


「あの、頼りないかもしれないですけど、ちゃんと琴美のそばにいますから。いつまでも」

「うん。よろしくね」


 琴葉は優しい笑顔で微笑んだ。その顔は琴美たちを育ててきた母親のものだった。

 ちゃんと期待に応えよう。琴美を悲しませないように。この家族を悲しませないように。


「さて、込み入った話も終わったし、ご飯にしましょうか。二人を呼んできてもらえる?」

「分かりました」

 

 終えはリビングから出て、隣の部屋にいる二人を呼びに行った。二人は楽しそうにおしゃべりをしていた。


「あ、蒼月君。お母さんとの話は終わった? 変なこと言われなかった?」

「終わったし、変なことも言われてない」

「よかった」


 琴美はホッとしたような顔をした。


「ご飯にするって」

「もう、そんな時間か〜。私手伝いに行ってくるね」


 琴美はリビングに向かった。その部屋に俺と琴音が取り残された。


「蒼月君」

「はい・・・・・・」


 琴音が静かに俺の名前を呼んだ。


「琴美ちゃんのことをよろしくね。泣かせたら容赦しないからね」


 琴音の顔は笑っていたがその声には琴美のことを大切に思う気持ちが乗っていた。

 

「はい。泣かせたりしません」

「よろしい! 私たちも行こっか」


 琴音は俺の頭を一回ポンとしてリビングに向かった。俺もその後を追ってリビングに向かう。

 四人で談笑をしながら、なんだかんだ楽しい母親との面談になった。

 

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