第38話 超絶美少女と夏休み最終日(とんかつ)
充実した夏休みも、とうとう最終日となってしまった。名残惜しいような、悲しいような、離れたくないような。まあ、つまり琴美とこうして一緒にいる時間が少なくなるのが寂しいということだ。
そんな、俺の気持ちは露知らず、琴美はキッチンでお昼ご飯作っていた。
毎日見られたこの光景が、これから週二日に戻ってしまうのかと思うと、寂しくてたまらなかった。
まてまて、なんでそんなにいつも通りでいれるんだ。俺と琴美は昨日、キ、キスをしたんだぞ。もちろん俺は初めてのキスだった。琴美はどうなのだろうか。昨日が初めてのキスだったのだろうか。
俺はいつもの手際のよく調理をしている琴美のことを見た。それも、琴美の艶のある薄ピンク色の唇を注視いていた。
俺は昨日、あの唇とキスをしたんだよな。今でも、その感触は残っていた。俺は人差し指でそっと自分の唇を触れた。
「どうしたの?」
そんな俺の視線を感じたのか、琴美が料理の手を止めて顔を上げた。
「いや、なんでもないよ。今日のお昼は何?」
「今日はね、トンカツ! ほら、明日夏休み明けテストがあるから。今回も、蒼月君に勝たないと。そして・・・・・・」
「そしての後を教えてくれ」
「秘密だよ〜!」
琴美はそう言って、再び料理を再開した。
明日は、夏休みテストがある。もちろん、毎日琴美と一緒にいたが、勉強の手を抜いてなどいなかった。毎日、琴美がバイトをしている時間を俺は勉強に使っていた。たまに、息抜きで琴美にオススメしてもらう本を読みながら。
さっきまで考えていた煩悩はどこかえ消えてしまった。今回のテストは俺にとってもリベンジマッチだった。本当は、今回のテストで買って琴美の誕生日を聞くはずだったのだが、それは、もう知ってしまったので別のやつを考えないとな。
そんなことを考えているうちに、とんかつを揚げてる音が聞こえてきた。
ジューっと気持ちのいい音。この音は食欲増幅剤なのではないだろうか。聞いているだけで、お腹が空いてきた。
「そろそろ出来上がるよー」
「了解」
俺はソファーから立ち上がってお皿の準備をする。俺が出したお皿に琴美が切り分けたトンカツを乗せていく。綺麗な焼き色に揚げた上がったトンカツは黄金色に輝いていた。
「美味そう」
「綺麗に揚がってよかった〜。揚げ物って苦手なんだよね〜」
「そうなのか? めっちゃ綺麗だと思うぞ」
琴美はそう言っていたが、本当に綺麗で、少なくとも料理初心者の俺には無理だなと思った。俺がやったらたぶん出来上がりは真っ暗だ。まあ、俺と比べるのも失礼な話だけど。
「食べよっか!」
「そうだな」
ソファーに移動して隣同士に座っていただきますをした。
早速、トンカツを一切れ口に運ぶ。
サクッ。噛むたびにそんな音がした。しっかりと衣付けされたトンカツは最高に美味しかった。
幸せだ。琴美の料理を食べれることがどんなに幸せなことか。俺はトンカツを一切れ一切れその幸せを噛み締めるように食べていった。
「ごちそうさまでした」
俺は最大級の感謝の気持ちを込めて言った。
「お粗末様です」
琴美は俺の気持ちを受け取ったかのように最高の笑顔をしていた。
やっぱり寂しな。だから、俺はこんな提案を琴美にすることにした。
「なぁ、もしも夏休み明けのテストで俺が勝ったら
・・・・・・」
俺はそこで一旦言葉を止めた。
俺がこれから言おうとしている言葉は琴美の負担になったりしないだろうか。ふと、そんなことを思った。夏休みの間だけなら、そんなに長くないし期限も決まってる。だけど、俺がこれから言おうとしている言葉は期限がない約束だ。
果たしてら言っていいのだろか。
「勝ったらどうしたの?」
「いや、なんでもない」
やっぱり、言うのはやめておいた。週二日だけでも作りに来てくれるだけでも充分ありがたいと思った。だから、この言葉はいつか、俺たちが形式上で結ばれる時が来るとに言うことにする。と思っている時だった。
琴美がそう言ったのは。
「あ、そうだ。明日からもご飯作りに来ていい?」
「え・・・・・・?」
完全に予想外だった。まさか、琴美の方からそんなことを言ってくるなんて。
「でも、バイトがあるんじゃ・・・・・・」
「ああ、それなら大丈夫。蒼月君への誕生日プレゼント買いたかったから頑張って働いてたけど、学校も始まるし、今まで通りに戻してもらうことにしたんだ」
「そうなんだ」
「それに、来月からお母さんが一年くらい家開けるらしくってさー」
「へっ! どういうこと?」
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