第33話 超絶美少女とバイトのこと
カフェ『エクレア』に訪れた翌日、琴美は何事もなかったかのように家にやってきた。
「おはよう」
「お、おはよう」
少しだけぎこちない挨拶を交わして、琴美を家の中に入れた。
まるで、隠していた秘密がバレた時のような緊張感があった。
その空気に耐えられなくなった俺は早速切り出すことにした。
「昨日、あのカフェで会ったよな?」
「な、なんのこと・・・・・・」
「とぼけるのかよ! 俺は見間違えないからな。自分の彼女のこと!」
「もう、そんな恥ずかしいこと大きな声で言わないで!」
琴美は逃げるようにソファーにダイブした。
「あーあ。せっかく隠してたのに、なんでバレるのかな〜」
「認めるんだな」
「認めます」
琴美は足をバタバタとさせてバイトをしてたことを認めた。
「でも、なんでバレちゃったのかな〜。ちゃんと、隠してたつもりなのに」
「それは・・・・・・」
まさか、後をつけてたなんて言えないよな。
「ねぇ、なんで分かったの?」
「・・・・・・」
俺が黙っていると、琴美が疑いの目で俺を見てきた。正直に言った方があとでわだかまりがない気がした。だから、俺は正直に白状することにした。
「実は、後をつけた・・・・・・」
「え・・・・・・」
俺の行動が予想外だったのか、琴美は驚いていた。当然の反応だなと思った。さすがに自分の後をつけられてそれが分かった時に無反応な人はいないだろう。
「ごめん。その、心配で」
「そっか。私こそ心配させてごめんね」
琴美はソファーに座り直して、しゅんとした顔をしていた。俺は琴美の隣に座って頭を優しくなでた。
「まあ、でも。俺のために頑張ってくれたんだろ」
「・・・・・・うん」
「じゃあ、もうそんな顔するなよ。ありがとな」
「でも・・・・・・蒼月君に心配かけた」
「ならさ、美味しいスイーツを作ってくれよ」
「何が食べたいの?」
「そうだな〜。じゃあ、俺に特製のエクレアを作ってください。琴美シェフ」
「分かった。お店より美味しいので作る!」
「それは、楽しみだな〜」
今日もこの後、バイトがあるということで、エクレアを作ってくれるのはまた今度ということになった。
「ところで、あのカフェにまた行ってもいいか?」
「え、ダメだよ! 恥ずかしい」
「そっか〜。あのエクレアめっちゃ絶品だったのにな〜」
「そんなに美味しかったの?」
「うん。あんなに美味しいの初めて食べた」
俺がベタ褒めすると琴美の表情は嬉しいそう頬を緩めていた。
可愛すぎるー!!
これからも、もっと褒めまくってやろう。
「とにかく、恥ずかしいからもう来ないで! エクレアならいくらでも作ってあげるから!」
「分かったよ。こっそり、行くことにするよ」
「ダメー!」
俺がからかうと琴美は頬を膨らませて肩を何度も叩いてきた。その仕草までも可愛い。
満足したのか俺を叩くのをやめると唐突に琴美はこんなことを言った。
「そうだ。夏休みの最後の日にアリスたちと海に行くことになってるから」
「初耳なんだが・・・・・・」
「あれ? 湯山君から聞いてないの?」
「何も・・・・・・」
英彦のやつ。わざと俺に伝えなかったな。会った時に痛い目に合わせてやるか。覚えとけよ。
「楽しみなんだ〜。アリスと一緒に海に行くの!」
「よかったな」
「なんで他人事なの〜。蒼月君も一緒に行くんだよ?」
「分かってるよ」
「私の水着姿楽しみじゃないんだ・・・・・・」
「そ、そんなことないぞ」
「ふ〜ん、じゃあ、見たいんだ?」
琴美はずいっと近づいてきた。琴美がいきなり水着の話をするもんだから、どうしても視線がその豊満な胸にいってしまう。
それに気づいたのか、琴美は両手で胸を隠す仕草をした。
「見過ぎだから! 蒼月君のエッチ!」
「琴美が水着の話なんてするからだろ!」
「でも、蒼月君なら、いくらでも見ていいよ・・・・・・」
「なっ・・・・・・」
不意打ちでその発言はずるい。
俺は自分の頭を抱えて理性を必死に抑えることになった。
発言した琴美自身も真っ赤を通り越して真紅色になっていた。よほど、恥ずかしがったようだ。
琴美は恥ずかしさを隠すようにキッチンに向かって料理を作り始めた。
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