第27話 超絶美少女と母親の手料理(オムライス)
久しぶりに葵の料理を食べる。一人暮らしを始めて、もうすぐ4ヶ月が経とうとしていた。その間に、何度、琴美の手料理を食べだだろうか。口がすっかりと琴美の味になっていないか心配だった。
「さ、できたわよー」
葵が料理をテーブルに運んできた。
オムライスだった。それは、琴美と一緒にご飯を食べる約束をした時に食べたものだ。もしかして、葵はそのことを知っているのではないだろうか。
「なんで、オムライス?」
「あら、嫌いだったっけ?」
「そうじゃないけど」
「ならいいでしょ!」
葵の顔が物語っている、この顔は知っている顔だ。まったく、わけが分からん。
俺と琴美が隣同士に座って、俺の前に葵が座った。
「冷めないうちに食べましょ」
「そうですね」
3人でいただきますをして、オムライスを食べ始める。俺は一口スプーンに取って食べる。
葵のオムライスはケチャップをかけて食べるシンプルなやつだった。もちろん、味は美味しい。でも、やっぱり少し物足りない感じがする。それでも、母の味に懐かしさを感じていた。
「どっちが美味しい?」
「どっちって? ここには一つしかないけど?」
俺は何のことを言っているのか分かっていたけど、あえてそう言った。
「分かってるんでしょ。私と琴美ちゃんのオムライスよ」
「それは・・・・・・」
俺はそこで言葉を切って、琴美を見た。琴美は俺のことを見つめ返していて答えを待っているようだった。まいったな。琴美のふわふわのたまごのオムライス。葵の堅めのたまごののオムライス。正直、優劣をつけづらいほどどちらもおいしいと思ってしまっていた。
「・・・・・・引き分けかな」
「つまんないのー。ねぇ、琴美ちゃんもそう思うでしょ?」
「ですねー」
なぜだか、琴美は葵に同意していた。いつの間にそんなに仲良くなったんだ。どうやら、ここには俺の味方はいないらしい。
「まあ、いいや。それより蒼月。中間テストはどうだったの?」
「どうせそれも、七瀬さんから聞いたんだろ」
「もう、そんなに拗ねないでよ。教えてもらってないわよ。教えてくれなかったし」
「え・・・・・・」
「私の口から言うのは変だと思って。ほら、そういう大事なことは自分の口で言った方がいいでしょ」
その言葉に俺はジーンときた。たしかに、俺にとってテストの結果は大事なことだった。実際に母親が家に来た時に話そうと思って連絡していなかった。だから、その気遣いが嬉しかった。
「七瀬さん。ありがとう。5位だったよ」
「そう。おめでとう。でも、残念だわ〜。家に連れて帰れると思って、お泊まりの準備してくるの
忘れたじゃない」
「泊まる気だったのかよ」
「まあ、いいわ。来年は琴美ちゃんと一緒に家に帰ってらっしゃい。ねぇー。琴美ちゃん」
そう言って、葵は琴美に抱きついた。
抱きつかれた琴美も満更でもない顔をしていた。来年ね・・・・・・。来年の今頃も琴美とこの関係は続いているのだろうか?
それとも、もっと先の関係になっているかもなら・・・・・。
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