第18話 超絶美少女と休日の図書館

 琴美がテストで一位を取ったお祝いをした翌日。

 いつも通りに一緒にお昼ご飯を食べて、俺たちは地元の図書館にやってきていた。


「もしかして、初めてきた?」

「ああ」


 俺がキョロキョロとしているのを見てそう思たのだろう。

 実際に俺は図書館に初めて足を踏み入れた。

 

「なんか、凄いな」


 言葉では言い表せない空気が図書館の中にはあった。


「七瀬さんはよく来るの?」

「うん、蒼月君とご飯を食べた後はたいていここに寄ってから帰ってるかな~」

「そうなんだ」


 それほどまでに琴美は本が好きだということなのだろう。

 俺は琴美の案内にしたがって、図書館の中を探索することになった。

 でも、その前に、琴美が本を返却したいと言ったので、一緒に返却コーナーまで向かった。


「こんにちは~」

「こんにちは。返却ですね」

「はい。お願いします」


 琴美は返却カンターにいる司書と挨拶を交わすと、ピンクのショルダーバックから、本を一冊取り出した。その本は、昨日、琴美が読んでいた本だった。

 

「さっきの本もう読み終わったんだ」

「うん。面白くて、昨日蒼月君の家から帰った後に読み終わっちゃった」


 本の話をしているときの琴美は本当に楽しそうな笑顔をする。

 琴美の案内に従って、図書館の中を回ることになった。

 まず、琴美と一緒に向かったのは、児童書コーナーだった。児童書コーナーは、子供向けの本がたくさん置いてあった。絵本とか、児童書とか。

 次に向かった先で琴美はさらに饒舌になった。


「ここはね、日本文学のコーナー。いつもここで本を選ぶんだ~」


 日本文学コーナーは三段の本棚が五つ。それが両側に並んでいた。どの本棚にも本がびっしりと入っていた。

 俺は、その光景に少し感動した。


「凄いな」

「だよね。ここにいると時間を忘れられるんだよね。背表紙を眺めてるだけで、時間が過ぎていくんだ。それが幸せなんだよね」


 琴美は最初、寂しそうな顔をしてから、幸せそうな顔をした。

 

「さて、本をどんどん紹介しちゃうよ」

「お、おう。ほどほどにお願いします」


 琴美は、昨日からオススメ本を考えていたらしく、次から次へと本を本棚から取り出して、俺に持たせていった。


「あの、七瀬さん……。多すぎませんか?」

「だって、たくさん読んでもらいたいんだもん」

「限度ってものがあるでしょ」


 俺の両手には十冊以上の本があった。

 さすがに読書初心者にこの量は多すぎる。


「せめて、二、三冊にしてもらえると、ありがたいんだけど」

「え~。しょうがないな」


 琴美は不満そうな顔で俺の両手にある十冊以上の本の中から厳選して三冊選んでくれた。


 まあ、三冊くらいなら読めるだろう。貸出期限も二週間みたいだしな。


「じゃあ、早速貸し出しに行こう」

「さっきのところか?」

「そうそう」


 ということで、琴美がさっき本を返したところに向かった。そこでは、本を返す以外にも借りることもできるらしい。専用のカードがいるらしく、俺はカードを作ってもらって本を借りた。ちなみに琴美は倍の数、借りていた。


「ゆっくりになるかもしれないけど、頑張って読むから」

「うん。感想楽しみにしてるね。だけど、本は頑張って読むものじゃないから、無理はしないでね」

「分かった」


 そうは言われたけど、俺はすべて読むつもりでいた。せっかく選んでもらったのに、読まないなんて、そんな失礼なことはしない。


「じゃあ、帰ろうっか」

「そうだな」


 図書館を後にして、二人で俺の家まで戻るとソファーに座って一緒に本を読んだ。

 それがなんとも言えない心地のいい時間だった。

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