第17話 超絶美少女とご褒美(ケーキ)

「さっきのことは忘れてくれ」

「無理ですよ~。もう、目に焼き付けました」

「マジか……」

「マジです。ところで、その箱には何が入ってるの?」


 琴美が俺の持っている箱を見て首をかしげた。

 そうだった。ケーキを渡すんだった。


「一位おめでとう」

「……え」

「ま、ご褒美がないのは味気ないからな」

「そんな、わざわざありがとう」


 琴美に箱を渡すと、俺は隣に座った。


「開けてもいい?」

「ああ」

「わぁ~。美味しそうなケーキ」

「何が好きなのか分かんなかったから、とりあえず、店員さんのオススメのやつを二つ買っといた」

「二つもいいの?」


 俺はうんと頷いた。もともと、そのつもりだしな。でも、少し食べたかったりする。俺は甘いもの好きだから。

 

「でも、申し訳ないから、半分こにしない?」

「いいのか?」

「うん。てか、蒼月君、甘いもの好きでしょ」

「なんでそれを」

「なんででしょうね~」


 琴美がうふふと笑う。

 俺が甘いもの好きだって、琴美には言ってないはずだけど。思い当たる心当たりといえば、あいつらだな。


「どっちから食べたい?」

「それは、七瀬さんが決めて、一応、ご褒美だし」

「じゃあ、フルーツタルトからで。モンブランは蒼月君、好きそう」

「よくわかってらっしゃるようで」


 やっぱりね、と琴美は言って、フルーツタルトを半分にして、俺にくれた。

 半分になったフルーツタルトは一口サイズになった。


「ありがと」

「これって、私のご褒美なんだよね」

「そうだな」

「じゃあ、もう一個ご褒美もらってもいい?」

「……ん?」


 もう一個ケーキが食べたいってことか?

 俺がそう思っていたら、琴美が恥ずかしそうに言った。


「あ~ん。して……」

「え……」

「ダメ?」

 

 琴美が上目遣いで見つめてくる。

 まったく、いつの間に俺の扱いがうまくなったんだか。


「分かったよ。やるよ」

「やった……」

「じゃあ、いくぞ」


 俺は、琴美にあ~んをしてフルーツタルトを食べさせた。

 琴美は少し赤くなった頬に両手を添えて、本当に美味しそうに味わいながらフルーツタルトを食べていた。

 

「美味しいか?」

「うん。凄く美味しいよ」

「よかった」


 琴美が食べたのを見て、俺もフルーツタルトを食べた。さすが、店員さんがオススメするだけあって、とてもおいしかった。フルーツの酸味とクリームの甘みが絶妙だった。

 さすがに、モンブランは大きかったので、あ~んをするのは難しかった。

 なので、それは普通にスプーンを使って、食べることになった。モンブランも絶品だった。栗のクリームはちょうどいい味だし、スポンジケーキもしっとりでくちどけがよかった。


「こっちも美味しいね」

「そうだな」

「どこのケーキ屋さんなの?」

「駅前にある、有名なケーキ屋さん」


 そうなんだ、と琴美は呟いて、モンブランを一口食べる。

 その幸せそうな横顔を見て、俺も幸せな気分になった

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