第16話 超絶美少女と一緒に料理(ハンバーグ)
「さて、聞きたいことも聞けたし、ご飯作っちゃうね~」
そう言って、琴美はスキップしながらキッチンに向かった。
俺の誕生日を聞けたことがそんなに嬉しかったのだろうか。体中から嬉しいオーラが溢れていた。
ちなみに今日のご飯はハンバーグらしい。
「なあ、俺も手伝っていいか?」
「え、どうしたの急に?」
「まあ、なんとなくだ」
俺はキッチンに行って、琴美にそう言った。
そろそろ、自分でも作れるようになりたいとは言わなかった。
琴美の料理は美味しいから、作ってもらえなくなるのは惜しい。
それでも、平日は自分で作らないといけないわけだから、ちょっとずつでもできるようになった方がいいだろうと思った。
「いいけど、じゃあ、玉ねぎ切ってくれる?」
「分かった」
俺は琴美の指示通り玉ねぎをみじん切りにしていく。琴美のように綺麗なみじん切りにはできないけど、それなりにうまくいったと思う。
次第に涙が溢れてくる。玉ねぎって、切ってると涙が出てくるんだよな。
隣でミンチをこねている琴美が、そんな俺の姿を見て笑ってる。
「てか、こうなること分かってて、俺に玉ねぎ切らせただろ」
「何のことかな~」
「そういうこと言うんだな。覚悟しとけよ」
琴美は両手にビニール手袋をつけミンチをこねているので、両手がふさがっている。
俺は、琴美の横腹をこちょこちょしてやった。
「ちょ、っと、やめてよ」
「やめない」
「謝るから、許して」
琴美はこちょこちょに弱いらしく、笑いながら体をよじらしていた。
ま、このくらいにしといてやるか、機嫌を悪くしてご飯を作ってもらえなくなったら、困るしな。
「もう、蒼月君のいじわる!」
「ごめんって、でも、先に仕掛けてきたのはそっちだろ。俺の泣いてる姿見て笑ってたし」
「そ、それは……」
「まあ、許すよ。七瀬さんの弱点知れたし」
琴美の顔が一気に赤くなった。それから、もう知らない、っと頬をぷくっと膨らませて、ハンバーグの調理を再開した。よかった、作ってはくれるらしい。
「よし、後はタレを作って焼くだけだね」
ハンバーグ作りも佳境に入った。俺が手伝ったのは、玉ねぎを切るのと、琴美がこねたミンチをハンバーグの形にしたくらいだった。もう、手伝えることはなさそうだったので、俺はソファーに戻った。
琴美が冷蔵庫を開けて調味料を取り出していると中に入っている箱に気が付いたらしく、訪ねてきた。
「ねぇ、蒼月君。この箱には何が入ってるの?」
「ああ、それか。まあお楽しみだ」
「え~、何それ」
実は琴美が一位を取ったお祝いにケーキを買っておいたのだ。喜んでくれるといいんだけど、どんなケーキが好きなのか分からなかったので、この店のオススメをくださいと言って、モンブランとフルーツタルトの二種類を買った。
このケーキは食後にでも出すとしよう。
そんなことを思っていたら、ジューっとフライパンから心地のいい音が聞こえてきた。
「そろそろ焼きあがるよ~」
「分かった」
俺は食器棚から二人分のお皿と茶碗を取り出した。お皿はそのままキッチンに。茶碗にはご飯をよそって、テーブルに持って行った。
「じゃあ、食べよっか」
琴美がハンバーグをテーブルに持ってきた。
綺麗な焼き色、美味しそうなソース、彩の綺麗な野菜。
やっぱり琴美の料理は見てるだけでよだれが出てくる。
二人でいただきますを言って、俺はハンバーグに箸を入れた。
「凄い、肉汁」
「ほんとだね」
ハンバーグを半分に切ると、中から大量の肉汁が溢れてきた。
そのハンバーグを口に運んで噛むとさらに肉汁が。
「美味しい」
「ありがと。蒼月君が作ったやつも美味しいよ」
どうやら、俺が形を作ったハンバーグは琴美が食べているらしい。
人に料理を食べてもらうって、こんな気持ちになるのか。少しむず痒くて、嬉しくて、心がほっこりとする。
「そうか。ありがと」
何だか、褒められたことが恥ずかしくて、俺は琴美から顔をそらして、お礼を言った。
「ごちそうさまでした」
二人で一緒にお皿を洗って、一息した。
さすがに満腹でケーキは食べれそうになかった。
「ちょっと休憩しよう」
「そうだね」
二人でソファーに座った。
琴美はカバンから本を取り出して、開いていた。
「七瀬さんは、本読むの好きだね」
「うん。蒼月君は本読んだりしないの?」
「あんまり読まないかな」
「そっか。ならさ、明日、一緒に図書館に行かない?」
「図書館か~。そうだな。行ってみるかな」
「やった。オススメ本たくさん教えちゃうから」
琴美はどれにしようかな、とウキウキしていた。
本か。琴美があまりにも楽しそうに読んでるから、読んでみたくなってしまった。最近は、勉強ばかりだったからな。たまには、勉強以外のことをするのも息抜きとしていいかもしれない。
それから、琴美は本に没頭していた。
俺はその間、タイマーを三時にセットして昼寝をすることにした。
「蒼月君、起きて」
琴美の声が上から聞こえてくる。
目をゆっくりと開けると、目の前には大きな山があった。
これって……。俺は自分が今どんな状態なのかを確認しようとした。
起き上がって、ようやく理解した。どうやら、俺は琴美の膝の上で眠っていたらしい。
「わ、わるい」
「いいえ、ビックリはしたけど、あまりに寝顔が可愛いのでそのままにしておきました」
「起こしてくれよ」
「うふふ、膝枕くらいいつでもしますよ」
なぜか、丁寧口調の琴美。
その琴美はいたずらな笑みを浮かべていた。その顔があまりにも大人ぽく、色っぽく見えたのは、今さっきまで、琴美の素肌の足の上に頭を乗せていたからだろう。
俺はいてもたってもいられなくなって、話を変えるために冷蔵庫に向かった。
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