第15話 超絶美少女と中間テスト結果発表


 テストの結果は上位二十人の分だけが廊下に張り出されていた。

 その前に立ち止まると琴美が俺に向かってⅤサインをしていた。

 どうやら俺の方が順位が下だったらしい。俺も張り出されたテスト結果を見た。

 5位。それが俺の結果だった。十分にいい結果だ。目標の十位以内に入れたし、俺としては満足だった。対する、琴美の結果は……。


「まじか。凄いな」

「へへん、どうだ」


 琴美が俺の前にやってきて、どうだと言わんばかりに腰に手を当てて胸を張った。

 負けた。正直、いい勝負になると思ったのに。

 まさか、一位だとは。さすがとしか言いようがない。


「勝負は私の勝ちね」

「そうだな。負けたよ」

「土曜日が楽しみだな~」

「頼むから変なことは聞かないでくれよ」

 

 俺がそう頼むと、琴美はどうしような〜と意地悪な顔をしていた。

 覚悟を決めるしかないようだな。


 テスト結果の紙の前にはたくさんの生徒がいて、琴美のことをみんな話していた。

 中には妬みを言っている人もいる。

 まあ、あれだけ外見が完璧でスポーツもできて、勉強もできたら嫉妬されるわな。

 俺は聞き耳を立てながら、教室に向かった。

 それにしても、英彦のやつ。勉強できるんじゃねえか。

 英彦は十位だった。


「よう。蒼月。テストどうだった?」

「結果見てないのかよ」

「ああ、どうでもいいしな」


 教室で一限目の予習をしていると、英彦が声をかけてきた。

 そんなこと、頑張って勉強してるやつに言ったら絶対に怒られるだろうなと思った。どうでもいいなんて、勉強ができるやつのセリフだ。


「英彦、頭いいんだな」

「そうか? 俺の順位そんなによかったのか?」

「まあ、俺よりは下だったけどな」

「なんだ、自慢か?」

「まあな」


 英彦は笑って軽く俺の肩をパンチする。

 俺も痛いだろ、と仕返した。その後はお互いに笑いあった。

 こうやって冗談を言い合えるから、俺は英彦と一緒にいるのが楽なんだろうな。


「それより、女神様は、一位だったらしいな」

「負けたよ」

「凄いな。まさに完璧超人」

「だな」


 俺はクラスメイトに囲まれている琴美の方を見た。

 そこにはクラスメイト楽しそうに笑って話をしている琴美の姿があった。

 実は、どんなことを聞かれるのだろうかと内心ドキドキしていた。

 すると、琴美がこっちを向いて、目が合って、微笑んだ。

 その微笑みに俺はさらにドキドキすることになった。



 そして、土曜日がやってきた。

 時間通りに琴美はやってきた。


「ん、荷物持つよ」

「ありがと」


 いつものように荷物を持って、琴美を家にあげた。

 俺はキッチンに荷物を持って行って、小さく深呼吸をする。

 さて、何を聞かれるのやら。俺はソファーに座って琴美を待つことにした。

 手洗いうがいを終えた琴美がリビングにやってきて、俺の隣に座る。

 

「さてさて、蒼月君。覚悟はいいかい?」


 琴美はニヤッと笑ってこっちを見ている。


「ああ、なんでも答えるよ」

「ふ~ん。何を聞こうかな~」

「まだ決めてないのかよ」

「ううん、決めてるよ」

「じゃあ、早く言えよ。こっちはずっとドキドキしてるんだから」

「へぇ~。ドキドキしてるんだ」


 琴美がずいっと顔を近づけてきた。ほんのりと甘い匂いがする。

 あまりにも近すぎて、俺は顔をそらした。


「じゃあ、言うね」

「ああ……」

「蒼月君の誕生日を教えて」

「へ……。そんなことでいいのか?」

「うん」


 琴美がコクっと頷く。本当にそんなことでいいのだろうか。俺はてっきり、あんなことやこんなこと(目立ちたくない理由とか)を聞かれると思って身構えてたのに。

 拍子抜けだった。そんなことなら、聞かれればいつでも教えるのに。


「本当にそれでいいのか?」

「それがいいの」

「分かったよ。そのくらいのことなら聞かれたらいつでも教えるんだけどな。俺の誕生日は、八月二十日だ」

「ふむふむ、一ヶ月後か~。ちゃんと覚えとくね」


 琴美は俺の誕生日をメモしていた。

 その顔は満面の笑顔で、またしても俺はドキッとするのであった。


  

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