第13話 超絶美少女と中間テスト期間(カツ丼)
テスト期間は部活も委員会もない。
そもそも、部活に入ってない俺には関係のないことだけど、野球部に入ってる英彦にとっては苦痛らしい。
英彦は脳筋だからな。いつも体を動かしてる時間に動けないというのは苦痛以外のなにものでもないらしい。
「はぁ~。テストだりぃ~」
「そんなこと言ってないで勉強しろよ。テスト大丈夫なのか?」
俺たちは、テスト勉強をするためにファミレスにやってきていた。
脳筋の英彦からの誘いだった。それなのに、こいつやる気あるのか。さっきからポテトを食べながらスマホをいじっていた。
「勉強しないなら帰るぞ」
「待ってくれよ。見捨てないでくれ~」
「なら、まじめに勉強しろ」
はいはい、やるから、っと英彦は笑いながらスマホをテーブルに置いた。
「で、何からするんだ」
「そうだな。全部分からんからな」
「笑ってる場合じゃないだろ。それやばくないか」
「まあ、何とかなるだろ。赤点さえ取らなければ」
これが、こいつのいいところでもあって、悪いところでもあるんだよなと俺は思った。何事にも楽観的で、テキトーなところ。だから、いろんな生徒から好かれるんだろうな。一緒にいる人を楽しくさせることのできる人間だ。俺も一緒にいて楽しいしな。そんな英彦のことを羨ましいと思うこともたまにある。俺には無理だからな。やろうと思ってできるものじゃない。
「てか、平子さんに教えてもらえよ。七瀬さんから聞いたど、頭いいんだろ」
「まあな。でも、頼るのはな。ほら、恥ずかしいじゃん」
「なんだよそれ。てか、お前がバカっだってことは知ってるんだろ。幼馴染なんだから」
「お前、バカって言ったか」
英彦は笑いながら俺の頭を軽くたたいた。
いてぇな、と俺も同じくらいの力で英彦をたたき返した。
「てか、なんでそのこと知ってんだ?」
「ん? 何のことだ?」
「俺と、アリスが幼馴染ってこと。誰にも言ってないはずだけど」
「ああ、七瀬さんから聞いた」
「ああ、そういうことかよ」
まったく、いつの間にそんなに仲良くなったんだか。と英彦はニヤニヤと笑っていた。
俺はそれには答えずにポテトを口に運んだ。
それから、俺たちは一時間集中して勉強した。
英彦はやればできるやつだ。一回集中したら、周りの音が聞こえてないみたいに集中して勉強をしていた。てか、こいつ頭いいんじゃないか。
俺は、スラスラと問題集を解く英彦の姿を見てそう思った。
テスト前の最後の休日。
今日も琴美が家にご飯を作りにやってきてくれた。
「一緒に勉強していい?」
いつものように手洗いうがいを終えた琴美がリビングに入ってきて、俺の隣に座ってそう言った。
「いいよ」
「よかった。今は何やってるの?」
「数学」
「じゃあ、私も数学しよーっと」
そう言って、琴美は自分のカバンから問題集を取り出して、無言で解き始めた。
スラスラと手を動かしている。やっぱり、琴美は頭がいいんだな。
俺も、琴美と同じ問題集を解いているのでそれなりにレベルが分かる。
それにしても、美人だよな。たまに、髪を耳にかけるしぐさがなんとも色っぽかった。
「どうしたの?」
俺の視線に気がついてのか、琴美が問題集から顔をあげてこっちを見た。
どうしたのという風に首を少しかしげていた。耳にかかっていたサラサラの髪が流れ落ちる。
「いや、なんでもない。今日のご飯は何かなって思ってただけだ」
「ふ~ん。てっきり、私の横顔を見てるのかと思った」
「そ、そんなわけないだろ」
「ふふ、なんでそんなに動揺してるのかな?」
琴美はいたずらな笑みを浮かべていた。からかわれてる。
俺は琴美の横顔を見ていたことがバレて恥ずかしくなって顔をそらした。
「ちなみに、今日のご飯はね。カツ丼だよ」
「おお。いいな」
「ほら、明後日からテストだからゲン担ぎ的な」
「それだと、俺にもゲン担ぎになるけどいいのか?」
「いいんだよ。どっちが勝ってもいいんだから」
それって、テスト勝負する意味あるのか、と俺は思ったが琴美が楽しそうなので、まあいいかと思った。
「もう少ししたら作るから楽しみにしててね~」
「ああ」
それから、三十分くらい集中して勉強をした。
ちょうど、お腹がすき始めた頃に琴美がかつ丼を作り始めた。
ほんとにいい嫁になるな。キッチンで調理をしている琴美の姿を眺めながらそう思った。できればずっと見ていたかったが、ずっと見てるとさっきみたいにからかわれそうだったので、俺は再び問題集に視線を落として勉強をすることにした。
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