第8話 超絶美少女と梅雨明けの学校
俺の風邪が完全に治ったのは梅雨明けだった。
結局、琴美がお見舞いに来てくれた後、俺は2日間学校を休んだ。久しぶりにひいた風邪はかなり強力だったようだ。
すがすがしいほどの快晴に見舞われて、久しぶりに学校へと登校した。
教室の中に入るとまず、声をかけてきてくれたのは俺の唯一の友達の
英彦は俺の机までやってきた。
「よう、元気になったのか?」
「まあ、なんとかな」
「そうか、よかったな。ところで蒼月よ、七瀬さんが看病しに来てくれたんだって」
「……え」
「お、その反応は本当だったみたいだな」
英彦はニヤニヤとしていた。
学校に着くなり、そんなことを言われたもんだから俺は軽く混乱していた。琴美が自ら言いふらすとは考えにくい。だとしたら、いったいどこから。
「なんで、俺が知ってるかって顔してるな」
「う、ん」
「それはな……。おっと、噂をすれば本人様の登場だぜ」
英彦は俺から視線を外して、後ろの方を見ていた。俺もそちらに視線を向けてみれば、教室の後ろのドアのところに琴美が立っていた。
琴美と目が合った。その瞬間、琴美の顔が崩れるのが分かった。
「じゃあ、俺はこれで失礼するよ。ああ、なんで俺が知ってるのかだけど、アリスと友達なんだ。蒼月の女神様は」
英彦が俺にしか聞こえない声でそういうと自分の席に戻っていった。
アリスっていうのは、英彦の彼女で、琴美の友達だ。なるほど、そういうことか。琴美がアリスに話して、アリスが英彦に話したってわけだ。
まったく、勘弁してくれよ。これが英彦だったからよかったものの、他の生徒に知られでもしたら、ほんとに学校にいられなくなってしまう。
ちゃんと口止めしておくんだったな。お見舞いに来てくれたのはありがたいけど、それで、穏やかな学校生活が送れなくなるのは最悪だ。
といっても、あの時の状態じゃ、そこまで頭が回らなかったんだけどな。
「……蒼月君、元気になったんだね」
「……おかげさまで」
「よかった~。あの後二日も学校に来なかったし、家にも来るなって言われてたし、心配してたんだよ」
「ごめん。心配かけたみたいだね。体調が完全に治るまで休んでたんだ」
「どれだけ、私が、心配したか」
琴美は今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ていた。それだけで、俺のことをどれだけ心配してくれていたかが分かる。俺は申し訳ない気持ちになった。そう思ったら自然と、琴美の頭を撫でていた。
「……え、蒼月君?」
「あ、ごめん……」
クラスの視線が二人に集まっていた。俺はやってしまったという顔をした。なんてことをしてしまったのだろうか。穏やかな学校生活が崩れていく音が聞こえた。
「あーあ。とうとう本性をみせやがったか」
「うるせぇ」
その様子を見ていた英彦が茶化してきた。
俺は顔を赤くして英彦の方にグーパンチをお見舞いしてやった。
「もう、隠すことないんじゃないか」
「別に、何も隠してない……」
「そうかよ。認めないんだな」
「あの、えっと、蒼月君、さっきのは?」
「……え、悪い、忘れてくれ」
琴美は顔を真っ赤にして、無理だよと小さく呟いた。
クラスメイトのしかも男子たちから殺気の混じった視線が飛んできていたが、もう俺は開き直った。
「とにかく、もう大丈夫だから、自分の席に戻ってくれないか」
「は、はい」
琴美は逃げ出すように自分の席に向かっていった。
これから学校生活がどうなるのか。それを考えるだけで、俺は憂鬱になった。
案の定、授業と授業の間の休憩や、昼休憩は男子生徒からの質問攻めにあうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます