第5話 超絶美少女のドキドキ1

 これって、もしかしてデート?

 制服デートってやつ?


 私は今、蒼月君と一緒にデパートにいる。正確には、私が彼の後を勝手につけたのだけど。彼が放課後に傘を買いに行くということはお昼休憩に一緒にご飯を食べている時に教えてもらった。その時は、断られてけど、そんなことで諦める私ではないのだ。

 結局、蒼月君には後をつけてきたことがバレてしまったけど、彼は怒ることはなかった。というより、少し呆れているように見えた。

 

 私の目の前には色とりどりの傘が並んでいる。蒼月君はどんな傘を選ぶのだろうか、私だったら、この水色を基調とした水玉の模様の傘を選ぶんだけど……。


「私はこの水玉のやつがいいと思うな~」

「嫌だよ。目立たないやつでいいよ」


 やっぱり……。

 蒼月君は私の予想通り、透明な傘を手に取った。

 もっと目立てばいいのにな~。

 蒼月君、見た目は悪くない。それに優しい。きっと蒼月君の魅力に気が付いたら好きになる人がいるんだろうな。

 蒼月君はどうして目立つことを嫌っているのだろうか。

 まあ、私としてはありがたいんだけどね。蒼月のことを独り占めできるし。


 蒼月君が透明な傘を買って、一緒にデパートを出た。


 まさか、家まで送るよなんて言われると思ってはいなかった。

 本当に不意打ちはやめてほしいな~。ドキドキしちゃうじゃん。自分の頬が赤くなるのを感じた。

 

 結局、私は途中まで送ってもらうことにした。

 優しいんだよな~。しかも、それをさりげなくやってるからかっこいい。


 あの時もそうだった。

 私は、あの日お母さんと喧嘩をして家を飛び出して、どこにも行き場所がなくて、雪の降る中さまよっていた。もう、このまま凍えて死んでしまうのではないかと覚悟もしていた。

 そんな私に、蒼月君は手を差し伸べてくれた。おでんをくれた。

 それがどんなに私の心を温めてくれたか。彼はなんとも思っていないかもしれないけど、私はそれで助けられた。だから、私は彼に恩返しがしたいと思っている。

 その後、私はお母さんとちゃんと仲直りができた。本当に蒼月君には感謝しても感謝しきれないくらいだ。

 

 どうにかして、お礼をしようと思って、あの後も何度も蒼月君と出会った道に行ってみたけど、一度も会えなかった。だから、高校で、しかも同じクラスで再会できた時は、奇跡だと思った。嬉しかった。

 

 私はその時に決めた。蒼月君に恩返しをしようと。

 

 蒼月と別れた後、今度は私がドキドキさせてやるんだからと、琴美はひそかに心に決めるのであった。

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