第4話 超絶美少女と傘

 今週末から梅雨入りをすると朝の天気予報で言っていた。

 その天気予報を見て俺は傘が折れていることを思い出した。

「春の嵐」が起こったその日に雨が重なった。俺は泣く泣く傘をさして帰ることとになり、案の定、ポキっと折れてしまった。それ以来、雨が降ることはなかったので新しい傘を買わずにいたのだが、さすがに梅雨入りとなると傘が必要になる。

 ということで、俺はデパートに傘を買いに来ていた。


「で、なんで七瀬さんがいるの?」

「ん~。たまたま?」


 顎に人差し指を当てておどけたように琴美は言った。絶対に嘘だなと俺は思った。

 そう思ったのは、昼休憩に琴美に傘を買いに行くと言ったからである。その時、琴美も一緒に行きたいと言ってきたのだが、もちろん丁重にお断りをさせてもらった。 

 その時の琴美がやけにあっさりと引き下がったと思ったらこういうことだったのか。


「後をつけてきただろ」

「あ、バレたか」


 琴美は、てへ、と舌を出して悪びれる様子もなく、どんなの買うのと勝手に話を進めている。俺の目の前には色とりどりの傘が並んでいた。赤、青、黄色、さらに水玉模様だったり、透明な傘もある。

 

「私はこの水玉のやつがいいと思うな~」

「嫌だよ。目立たないやつでいいよ」


 そう言いながら、俺はは透明な傘を手に取った。琴美はそれに納得してないのかなぜか頬を膨らませていた。


「もっと、目立てばいいのに、せっかく……」

「いいんだよ。目立つのは嫌いなんだよ」

「まあ、蒼月君がそういうならいいんだけどね」


 俺はその透明な傘を持ってレジに向かって支払いを済ませた。


「僕は帰るけど、七瀬さんはどうするの?」

「私も帰るよ。もう、ここに用はないしね」

「じゃあ、家まで送るよ」

「……え、大丈夫だよ。私の家ここから近いし」

 

 琴美はもじもじと恥ずかしそうに体を動かしていた。

 デパートから出ると、外はすっかりと暗くなっていた。俺の家はここから十分くらい歩いたところにある。琴美の家がどこにあるのかわからないけど、さすがにこの中を女性一人で歩かせるわけにはいかないよな。


「でも、せっかくだから途中まで送ってもらおうかな……」

「分かった。じゃあ、帰ろうか」


 俺は琴美を途中まで送り届けた。道中は琴美が恥ずかしがっていて会話はほとんどなかったが気まずいという感じではなかった。


「ここでいいよ。ありがと」

「うん。気を付けて」

 

 琴美とは交差点で別れることとなった。

 また明日ね、とこちらを振り返って手を振る琴美に俺も手を振り返した。

 琴美が見えなくなると、俺は一人、自分の家への帰路についた。

 

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