第2話 超絶美少女と初めての餌付け(おでん)

蒼月あいと琴美ことみと初めて出会ったのは、高校生になる少し前のことだった。

 中学生活最後の冬休み、蒼月は雪の降る中、コンビニで夕飯を買って帰っているところだった。手に持っていた袋の中には熱々のおでんが入っていた。


 もうすぐ家に到着するというところで、ひと際目立ったものがあった。ものというより人だった。綺麗な立ち姿をした女性だな。俺はそう思って、ちらっとその人を横目に見て前を通り過ぎようとした。なんでそんな悲しそうな顔してるんだ。


「……あの、大丈夫ですか?」

「……え、大丈夫、です」

 

 月明かりに照らされて目の前の女性の顔がはっきりと見えた。幼いながらに美少女の顔がそこにあった。年齢は同じくらいだろうか。それに、学生服を着ている。蒼月の学校の制服でない。美少女は大丈夫と言っているけど、とても大丈夫そうな顔には見えないけどな。美少女は今にも泣き出しそうな悲しそうな顔をしていた。


「大丈夫そうな顔には見えないですけど……」

「大丈夫、です。気にしないでください」

「けど……」

「ほんとに……」


 そこで美少女のお腹から音が鳴った。美少女の顔がみるみるうちに赤くなっていくのがわかる。その音は俺の耳にも届いていた。

(お腹がすいてるみたいだな)


「もしかして、ご飯食べてないの?」

「……はい」

 

 美少女は恥ずかしそうにしていた。どうしたものか。さすがに家に連れて行くわけにはいかないし、そもそもついてこないだろう。

 そうだ。俺は今持っている袋に視線をやった。


「よかったら、これ」

「……え」

「大丈夫、毒とか入ってないですから。ただのコンビニのおでんです」

「でも、これ、あなたのやつじゃ……」

「僕のはカバンの中に入ってるので」


 本当は入ってなんかいないけど、俺は背中にしょっていたリュックを指さした。


「じゃあ、いただきます」


 美少女は遠慮しながらも俺からおでんの入った袋を受け取った。よほど、お腹がすいていたのだろう。


「じゃあ、僕はこれで」


 俺は立ち去ろうとしたが、美少女が服の袖をつかんだ。


「……あの、ありがとうございます」

「いえ、どういたしまして。じゃあ、今度こそ、これで失礼しますね」


 俺は美少女に頭を下げて家への帰路についた。

 途中で振り返ってみると、美少女はまだこちらを向いていた。


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