【感謝!!9万PV突破〜✨ 二年生編スタート】クラスメイトに超絶美少女がいるのだが、なぜか俺のことを餌付けしようとしてくる(仮)

夜空 星龍

一年生編

第1話 超絶美少女と餌付けの日々(鮭のおにぎり)

       

彼女———七瀬琴美ななせことみは、俺———佐伯蒼月さえきあいとのことを猫か何かと勘違いしているのではないだろうか。


「もう、逃げないでよ。せっかく作ってきてあげたのに~」


 昼休憩になってすぐに俺は教室から飛び出した。

 こっそり出たからバレてないと思っていたのに、可愛いものを愛でるような目をした琴美が手作り弁当を持って追いかけてくる。

 これは、餌付けだ。美味しいものをたくさん食べさせて俺のことを配下にしようとしてる。


「やっと捕まえた。さあ蒼月君、食べなさい」

 

 足が絡まって俺はこけてしまった。

 俺の背中の上に琴美はまたがるように乗った。

 にやっと笑った琴美の顔が近くにあった。ほんのりとシャンプーのいいにおいが漂ってくる。こうなってしまっては逃げようもない。それに無理やり逃げてしまったら変なところに当たりかねない。

 俺は観念して琴美が箸で差し出した唐揚げを食べることにした。


「……どう?」

「うん。美味しいよ」

「よかった~」

 

 正直、琴美の料理は美味しい。だから、食べるのが嫌というわわけではない。餌付けされるのもまあ、嫌というわけではない。ただ、俺が嫌なのはこうして視線を向けられることだ。殺気がこもったような、羨ましがるような、羨望するような生徒達からの視線。

 琴美は自分が学校でどんな立ち位置にいるのかわかっていない。琴美と関わるようになってから、俺は学校にいることが少しだけ憂鬱になっていた。


「……あの、そろそろ降りてもらってもいいかな?」

「……あ、ごめん」

 

 よほど、俺にご飯を食べさせることに夢中になっていたのか、琴美は自分がどんな状況なのかに気が付いて耳まで真っ赤にしていた。


「ほんとにごめんね」

「もう、いいよ。それに唐揚げ美味しかったし」

 

 琴美は俺の上から降りて、申し訳なさそうな顔をして目の前にペタンと座っている。

 ほんとに、自分の可愛さを理解してほしい。

 床にまで届きそうな艶のある手入れの行き届いた黒髪に、それとは対照的な透き通るような白い肌、くりくりとした大きくて可愛らしい瞳、形のいいピンク色の唇、すべてのパーツが琴美のためにあるようだった。こうして座っていると日本人形のように見える。

 琴美が超絶美少女と呼ばれるのも頷ける。それに比べて俺は地味だ。とても、琴美と釣り合うはずがない。と、周りの生徒は思ってるんだろうな。


「じゃあ、はい。残りも食べてね」

「……え、あ、うん」

「このお弁当は蒼月君のだから」


 はい、と琴美は手に持っていた弁当を差し出してきた。

 生徒たちからの視線が痛い、でも受け取らないと後で怖いんだよな。俺はしぶしぶ、琴美から弁当を受け取った。


「ねぇ。なんでそんな顔してるのかな?」


 琴美が俺の頬をツンツンとしながら不満そうに頬を膨らませた。

 このまま、機嫌を損ねられても嫌なので琴美の手作り弁当の中からおにぎりを選んで食べることにした。中には鮭が入っていた。塩加減もちょうどよくてすごく美味しいおにぎりだった。

 (美味しいんだよな〜)

 美味しそうに食べる俺の顔を見て満足したのか、琴美は不満そうな顔からニコニコとした顔に変わっていた。


「全部食べるまでここから動くの禁止ね」

「え。それはなんでも……」

「うそ、うそ。教室に戻ろ、蒼月君!」


 琴美は立ち上がって、俺に手を差し出した。  

 もう、生徒たちからの視線を気にするのは諦めた。この先ずっと付きまとうことだろうし、気にしてもしょうがないと思った。きっとこの先も琴美は俺に餌付けをしてくるだろうと思っていた。

 俺が琴美の手を取って立ち上がると、そのまま彼女に連れらるような形で教室に帰っていった。


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