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「白川くん、運命って信じる?」
突然、道子はそんなことを唄に言った。
「運命? 人の一生は全部、生まれたときには決まっているって言うこと?」唄は言う。
「そうじゃなくて、人には誰でも、その人と対となる運命の相手がいるってこと」
道子は言う。
「結婚相手が決まっているってこと?」唄は言う。
……結婚、という言葉に道子は少し反応して、その顔を赤くする。
「そこまでは言わないけど、……まあ、そうかな。この人と結ばれる運命にあるって思える人がこの世界のどこかにいるってこと」
道子は言う。
「わからない。でも、あんまり運命って言葉は信じてないかな」唄は言う。
「神社の家に生まれたのに?」ちょっとだけ驚いた顔をして道子は言う。
「生まれた家は関係ないよ」小さく笑って唄は言った。
そこで二人の会話はまた途切れた。
唄は雨降りの庭を見て、道子は薄暗い明かりの灯っていない天井を見つめた。
柱にかかっている時計は四時十五分を指している。
「白川くんはお家継ぐの?」
道子がいう。
「たぶん、継ぐと思う」
唄が言う。
「神社の神主さんになるんだ。白川くん」道子は言う。
「うん。そうなると思う」
道子を見て、唄は言う。
「そっか。白川くん。もう自分の将来のことについて、ちゃんと考えているんだ。えらいね」本当に感心したような顔をして、道子は言った。
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