ハカセ

勇者が魔王と対峙し、力尽きて膝をつくまで暴れまわり

そして力尽きて倒れてしまった・・その日。


魔王が村人数名を呼んで勇者と対面をさせた。


「この子が勇者、肉体的精神的にも深刻な傷を負って

いるが、まぁ大丈夫だろう。まだ生きてるしね」


魔王は淡々と言うが、医者であるハルトにも

一般人であるシキにもその姿は「生きている」様には見えなかった。

体中に残る無数の傷跡

虚ろに開いた瞳には何も映してはいない。

乾いた唇が常に何かを呟いている。


「・・いつもみてーに、ちゃっと治せねーのかよ、魔王様・・」

「体の傷はもう治っている。後は中身の問題だ。

これからはハルト君と協力して・・」


「殺したまえよ」


その言葉は静かに、深く部屋に響いた。


「そんな「もの」生きているとカテゴライズ出来まい。

魔王様が勇者に固執するのも分かるが、貴様様の「趣味」で

命を弄ぶような事は時に役には立つが、基本的に美しくない」

「命を弄ぶ?僕はそんな事はなしい、助けようと・・しているんだ」

「いいかね魔王様、この少年はもう死んでいる或いはこう言った方が良いのか?

死を願っている。永眠させたまえ。」

「嫌だ」

「ならば結構。私からの発言は以上だ。他の2人は?

ぼーっと突っ立っていないで発言したまえ」


ハルトは勇者を見て「魔王様がまだ生きてると言うんだ・・・僕は出来る限り協力したい」

シキは「俺に判断する・・基準がわからねぇ・・。」

「ふ・・、シキ、君というサルは。まだ私の特別授業が必要か?」

「うるせぇ!魔王様が助けたいって言ってんだ!好きにさせろよ。つか今回

てめーに頼る事なんかひとつもねーし、あとはドクターと魔王様で何とかすっからよ!

黙ってろよハカセ!」


ハカセは眼鏡を指先で上げる。


「今回の会合はこれで終わり、で、よろしいか?魔王様」

「・・う、うん・・。僕は・・勇者を皆に紹介したかっただけだから・・、会合って訳じゃ・・。」


魔王の言葉が終わる前にはハカセは部屋を後にしていた。


「・・会わせるタイミングが悪かったよ、魔王様・・。せめて僕だけに説明してもらえれば・・」


ハルトが勇者の顔を覗き込もうとすると


「近づくと危ないよ」魔王に肩を掴まれ、後ろに下がった時

瀕死とは思えない力とスピードで拳が飛んで来た。

勇者は目だけでハルトと魔王を威嚇し、体を起こそうとする。


「・・・が・・・・。ま・・お・・・、す・・ころ・・す・・」


低い唸り声がして、勇者は体を起こす事は出来ないまでもシーツが破れる程

強い力で拳を握りしめ2人を睨んでいる。


「・・これは・・中々・・難しいかもしれないね・・」

「この狂戦士の呪詛が解ければ、もう少しは落ち着くと思う。僕はその解除を成功させてから

ハルト君の所に連れて行く事にしよう」

「そうしてくれるとありがたいよ・・」


シキはその光景をみながら、ハカセの発言を思い出す。

『もう人間ではない』

しかしハカセの意見を認めた様で嫌だったので忘れる事にした。


ハカセはいつでも表情ひとつ変えず、正しい意見を言い放つ。

ただ「いつでも」そうなので村人からも少なからず嫌煙されている。


しかし結局・・最後はハカセの言った通りになるのをシキやハルトは

何度も経験して知っていた。


そしてその会合から数か月後・・・



ウゾはモンスターである。


牛の頭に人間の胴体、下半身は獣。

ミノタウロスと呼ばれるモンスターだ。


彼は魔王やシキ、ハカセやドクターと話合い

城に近づく人間を「軽く脅す」役も担っていた。

そして彼も「ハカセ」が苦手だった。


「そういう訳なので、適当に追い払うよう」


ウゾに命令ができるのは魔王のみ。

そう自分自身でも思っていた。

だがウゾはハカセのいう事には逆らえない。

いや、一言逆らえば五万の言葉で返される・・・・・

それを聞くのが嫌だなだけだ。


ただウゾはハカセが「嘘は言わない人間だ」と言う事を

知っている。

だから従うしか無いのだ。


「おめーさんも苦労するよな・・・」


シキに言われ、ハルトも頷いた。


「すまないウゾ・・ハカセは言い出したら聞かないから」


魔王にも言われウゾは承諾するしかない。


「人間2匹、脅すくれーはいいんすけど・・・、そのアンジュて娘子は

どうするんすか?村に連れて」

「それは無い!絶対にだ!恐怖を味あわせて王国に追い返せ!

・・ウゾ、私の話を・・・もう一度聞きたいと?

君は、繰り返し私に理由を尋ね、私の貴重なこの時間・・一分一秒を無駄にすると、

そう言うのかね?」

「・・そ・・・ゆぅ・・訳じゃ・・・ない・・す・・はい」

「ならば良し!今日の会合は終わりだ!!!それで良いかな?魔王様」

「・・・は、はい・・・」


魔王もハカセの進言には逆らえない・・・。


「あと魔王様、貴様様のあの綿ゴミ、あれはいい研究材料になった。

もう5000個程の調達を、丁寧に、進言する」

「えー?!あれ造るの結構つかれ」

「・・・・もう一度・・?同じ事を進言させると?この私にか?」

「・・あ、・・その・・頑張って・・造ってみます・・」


魔王城を守る会合第136回はこうして幕を閉じた。


「嫌な事は嫌だって言っていんだぜ?ウゾ」


シキに胸を軽く叩かれ、ウゾは

「それって・・可能なんすか?」と、一応尋ねてみた。

答えは無い。


会合は城の中、モンスターの居住区の前で行われる。

この会合に参加するのは魔王、シキ、ハルト、ハカセと決まっている。

城と村の関係を知っていて、村人の安全を任された5名だ。


しかし発言権はほぼハカセが握っており・・・・

しかもハカセの進言は適格且つシンプルなので誰も何も言い返せない。


「ハカセの報告によれば、その騎士とアンジュはあと2.3日もすれば城にたどり着く

と言うし・・・、アンジュのチートは魔法を見破る事だと・・ハカセが言うんだから

そうなのだろう・・。村が疫病に侵されているなら助けてあげたいけど・・・

僕が助けたら、この村の存在がばれてしまう可能性もある・・

魔王様に至っては、その娘の前に出たら存在そのものを肯定してしまう事になるから・・


その村は救ってあげられない・・んだよね・・・」


『勇者があんなにはしゃいで笑った日から、まだ3か月も経たないのに・・・』


魔王はこの事実を勇者が知ったらどんな顔をするのか・・想像もつかない。


「ウゾが出張る前に、魔王様とハカセの魔法でなんとかして下さいよ?

ウゾに、人間殺しなんかできねーんだからよぅ」

「わかっている・・、うん、僕も少し本気を出さなければいけないね・・・娘子には

申し訳ないけれど・・僕はこの城の城主。村長だ。・・・多分!

うん・・多分・・!よし!やるぞ!!」


魔王は久しぶりにやる気を出した。



アンジュと共に魔王城に向かう騎士の前には、相変わらず霞がかかっていた。


「本当にこの道で良いのか?娘!」

「はい。この霧は目くらましの魔法です。このまままっすぐ走って下さい!」


視界は悪く、一寸先も確認できない。

霧は昨日より濃くなっている気がした。


騎士が手綱を引き、馬の脚を止める。


「?騎士様・・、どうして」

「ええぃ!こうも霧が深くては、もしモンスターと遭遇しても反応が出来ぬ」

「でも、この森に入ってから・・モンスターには一度も・・。

モンスターもこの魔力の前には恐れをなして出て来ないのでしょう」

「黙れ!貴様にモンスターが倒せるとでもいうのか!!!」


騎士はアンジュを乱暴に馬から降ろした。

よろけてその場に座り込むアンジュを見下ろし


「貴様を拾ってから霧はますます濃くなった!よもや貴様が魔王の手下では

あるまいな・・・」

「そんな!!私は村を救いたくて・・、王国にご案内しようと・・」

「黙れ!!!」


騎士が叫ぶと馬が暴れて2.3歩歩みを進めた。

その先は・・・


「何!!こんな所に崖が・・・・」


騎士は驚いて馬を退かせるが

馬も何かを察したのか暴れ出し制御が出来ない。

しかも崖はすぐ目の前で、騎士は仕方なく馬を降りた。

その瞬間、騎士の手から手綱が外れ、馬は主人を置いて走り去ってしまった。


「くそ!馬が・・・。アンジュ・・貴様・・」

「崖なんてありません!ここはただの平地です!どうか信じて下さい!!!」

「黙れ!信用が欲しくば、その崖を渡ってみるが良い!!」


騎士は剣を抜いた。

アンジュは剣に怯えながら崖に向かって歩き出す。


「大丈夫です・・こんなの・・ただの・・」


アンジュには平地に見えたその崖に、脚が滑り落ちた。

「!!え、どうして・・・・・きゃ・・・!!!」


そのまま真っ逆さまに崖に落ちるアンジュの悲鳴が遠ざかる。


「・・・矢張り・・偽りであったか・・。信じていたら危ない目に遭う所だった・・

・・とにかく・・王国へ戻らねば・・馬も・・食料も尽きてしまった・・」


騎士は剣を納め、元来た道を歩き出す。


その時、大地を揺らす音が聞こえて、霧の中でひときわ大きな影が動いた。

騎士は剣を抜き身構える。


「・・魔物か・・」


霧の中、急に目の前に出て来たミノタウロスに騎士は何も出来ず、

ただ立ち尽くすしかない。


「ウゴアアアアアアーーー!!!」


その雄叫びを聞いて騎士は声をあげながら、剣も捨てて走り去った。


「これだけ脅せば大丈夫っしょ・・」ウゾは騎士の後ろ姿を見送り

気を失って倒れているアンジュに近づく。


アンジュに崖に落ちた、と錯覚させたのは魔王の魔法だ。

あまりにリアルな錯覚と、実際平地に存在する隆起した窪みに足を

取られ、ほんの少し躓いただけで気を失ってしまっていた。


「魔王様、大丈夫っす」

『わかった。ではその娘を出生の村の前まで転移させる。ウゾは城に戻っておいで』

「了解っす」


白い光に包まれたアンジュの体はその場から消えた。

後に残ったのは深い霧だけだった。



パチパチと木が燃えて弾ける音がする・・それに焦げ臭い・・

アンジュは目を開けて・・体を起こした。


「・・・・え・・・・・」


村が燃えている・・その周りには騎士の鎧を着た兵士が数名松明を持っていた。

村は燃え・・もう誰の声も聞こえない。


「・・・え、どうして・・、どうして?私は・・お医者様・・を・・・」

「ここにも行き残りがいるぞ!燃やせ!!」


兵士の一人が燃えさかる松明をアンジュに近づける。


「どうして・・?どうして・・いや、死にたくない・・、せっかく病院の外に出られたのに・・

産まれ変わったのに・・いや・・嫌・・・・お願い・・殺さないで・・・」


アンジュは膝を抱えて丸くなる。

それくらいしか、身を護る術を思いつかなかった。


「死にたくなの・・だから、頑張ってきたの・・・」



炎で身を焼かれるその寸前、アンジュの体は白い光に包まれた。



「何故そこで少女を助けた」


明らかに不満げなハカセを前に、魔王は意思を固め・・・た風に見せかけて

シキとハルト・・ウゾに視線を送るが無視された。


「何、故、に、と私は、問うているのだよ!貴様様」

「その・・「貴様」様と僕を呼ぶのは辞めてくれないか・・・絶対侮辱しているだろう?

僕の事を」


ハカセは眼鏡を指先で上げる。


「侮辱か?・・ふっ・・貴様様も人間の言葉を理解しつつあるのだな貴様様。

貴様様は私に侮辱される覚えがあっての質問だろうと解釈するが良いかな?


再度、私の貴重な時間を割いて問おう、何故に少女を助け、迷いの森から出した!」


「彼女が殺されるとは・・村が焼かれるなんて・・僕は知らなかった・・・し、

彼女は生きる事を求めた・・だから・・、王国に行けば・・何とか・・」

「何とか助かるか?!その「助かる」というパーセンテージは幾らか?魔王!」

「・・・・王国に・・行けば・・彼女は・・・ただの子供だ・・・、気の毒にと救いの手を差し伸べる

者も居ると・・僕は・・かんがえ」

「有り得ぬ」


ハカセは天を仰ぎ、溜息をついた。


「それは有り得ぬのだよ、貴様様・・・・。

あの娘は風土病の村出身、そして王国から派遣された騎士が未だ行方不明の事実がある。


この結果、国は娘をどう思うかね貴様様?


娘が、騎士をチートで殺したと、確定するに決まっておるだろうが!


こんな、こんな単純な事も・・理解出来ぬのかね貴様様!

あの娘は、あの村で・・兵士に顔も見られている・・・・

だからあの村で、焼かれて死ぬのが運命だったのだよ!貴様様!!!」

「そんな事はない!人間の・・弱い・・幼い・・女の子だ!きっと誰かが守るさ!

それが人間と言うものだろう?!」


魔王の必死な言葉をハカセは鼻で笑う。


「貴様様・・・人間とは。

魔王のような魔力は無いが

己たちが描く魔王の様な凶暴性を持っているのだよ、分からぬ訳ではなかろう貴様様よ。


あの娘を殺せ、今すぐに」


「嫌だよ!そんな事をしたら・・・おそらく・・勇者に嫌われる・・」


空気が止まる・・・・

誰もがそう思っていた事を

誰もが思っていた理由で魔王は跳ねのけた。



「ほう・・・、貴様は勇者の、人間の気持ちそのもので、己自身では全く思考せずに事を

成したと、そう・・・私の、前で・・・言うのか」


「か、考えたよ!!でも・・、まさか村があんな事になってるなんて・・知らなかったから」

「馬鹿な・・馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!!!!!!!!」


ハカセが吠える。


「貴様様には関係ないだろう、こういった時代の風土病は根絶やしにするしかないのだ!

何故?特効薬が無い、しかも感染力が強い。

だから村ひとつくらいは焼き払うのだよ、徹底的に!!!


何がおかしい?何が間違っている?大半の細菌は熱に弱い、当然の結果だ!

だから燃やし尽くすのだよ!


それが予測できなかった・・・だと?貴様・・様・・。


制約で・・貴様様には従属するよう、貴様を「様」をつけて呼ぶことで言葉の縛りを受けているが・・・

貴様様よ・・言い方はどうとでもあるのだよ・・貴様様。


この結果が何を招くか分かっての行動であろうな?

この村、及び魔王城、魔王の存在の確定は、新たな・・あの小熊より幼い勇者をこの城に

向かわせると言う事だ!!


勇者を殺すのは、やはり貴様なのだよ・・魔王様。

あの娘はおそらく転生組だ、その娘が両親を、生まれ育った村を焼き払われた事に

恨みを持たずに「優しい誰か」に育てられ一生を終わるものかよ貴様様。


貴様様のそのお優しさは、そうして新たな勇者を生み。

この村の破滅をもたらすだろう・・あぁ・・・しかし・・・「魔王様」には関係のない事・・・・・・

魔王様が少し御眠りになれば、また新しい転移、転生した者が現れ、小熊のように懐いてくれる

勇者も現れよう・・・


だがそこに、私達は居ないのだがね。」


「その辺でやめろや、くそったれがよ・・」


シキがハカセの前に立ち塞がる。



「魔王様はアホだから!!子供が殺されるのは許せなった、それだけだ!

その後に国がどう動こうと魔王様には関係ねぇわ!


悪ぃのは国の人間だろーがよ!

そんだけ、毎回偉そうな事言うならよ!てめーが王国に寝返って

魔王様を倒せばいいだけの事じゃねーか!!!」


「それも計算うち、考えたのだが、今の私の魔力ではまだ足りない」


「・・え?!」


ハルトはハカセと魔王を交互に見るしかなかった。


「はっ!まだ魔王様を倒せねーんなら大人しくしとけや!」

「無論、そうしている」

「大人しくねーだろ!」

「国の情報を得て、こちらに有益な情報は絶えず伝えている。

この村の為だけにだ。

この無防備な村が、シキ、お前などの力で増強しなければならない理由を述べよ」

「・・っ・・く・・、またそれかよ・・!!知らねぇよ!!!!」

「この村、いや、城はあまりに無防備なのだよ。

無防備だとどうなるのかね、ハルト」

「え?!・・あ、攻撃・・され・・る?」

「無論、さぁ、魔王城を攻撃するのは誰かね?サル・・いやシキ・・・」

「・・・・おう・・こく・・???」


ハカセは拍手をした。


「ご名答なのだよ、シキ。お前にも物を考える脳が出来て来た様だ。

いいかね、王国にも我らのような・・まぁ、私以外の天才は居ないだろうが・・それなりの

チートを持った者が転移、転生している。

王国はその事実を知っているのだ。

そして他の国にもその転移、転生者が居るとわかっている・・、私達は国によっては大きな

戦力なのだよ、たとえ一人でもね。王国はその力を欲している。

国政に誰より先に勘づき、動き、この村から転移、転生者を王国に漏らさず「管理」してきたのは

私だ・・逆に言うと・・どうだね貴様様」


ハカセの質問に魔王は少し考えて・・・


「ハカセの意見次第では・・村人を率い王国に寝返る事も容易」


ウゾは手にした大斧を握りなおし

シキとハルトは魔王を伺う・・


「繰り返すが、今の私には魔王様程の魔力はない、もしも、魔力というものが

魔王様を守っているのならばすべて・・どの部位からでもいいから取り出し吸収したいものだ。


なので、私は未だにこうして、貴様様やら口の悪いサルやらドクターやウゾと、こうして話し合いの

場を設けているのだよ、ここまでは理解できたかね?そして、

これからこの村に起きる危険も予言しているのだよ。」


場は静まり返る。



「た、確かにハカセの言う事は・・そこそこ当たっていた」

「90%を超えれば「そこそこ」ではなく「確実」だ、貴様様」

「・・あぁ。うん・・、でも、僕は魔王だ、勇者を救う、村を守る。それは僕の使命だし。

その為の魔力だ。まずは城主である僕を信じて欲しい。」


魔王は一同を見渡す。


「僕は・・皆に笑って、穏やかに過ごして欲しくてこの村を作ったんだ。

城主として至らない点もあるかと思うけれど・・」


魔王が初心を思い出し熱く語る・・・・が


「そういう心情に訴えかける言葉に私が納得するとでも?」


ハカセにバッサリ斬り落とされた・・・。


「あと貴様様よ、あの仔熊と戯れてどれくらいの時が過ぎたと体感している?」

「え?!・・そうだな・・勇者が元気になって・・ちょっと?」

「相変わらず時間の観念というものがないのだなバ・・貴様様よ。

貴様様は村人を放っておいて、もう1年近くたつのだぞ」

「・・へー(今・・バカって言いかけたのかな・・・?)」

「へーではない、サルとハルトの顔を見るがいい」


魔王はハカセに言われた通り、シキとハルトを見る


「え、・・・半年ぐらいだと思ってたっす・・・」

「あぁ、僕も、もう少し短いものだと・・」


「この村には季節が無い、何せ植物は常に実り、季節の温度管理は私が行って

いるからな。常に過ごしやすい春である。


村人は魔王が勇者にかまけている間何を考えたと思う?

そうして、危機を感じた私はサルに「暇になったら私の所に来るよう」伝言した、

随分前にな、だから今回の「チート持ちの少女」の情報はこれ程近々になったのだよ。


貴様様はいつになったらあの仔熊を手放し、暇になるのだろうな?貴様様」


「ゆ、勇者はまだ子供だよ!まだ保護が必要で・・・・まだニホン転移も1回しかしてないし、

もっと楽しい事教えてあげなくちゃいけないよ!・・と思って・・居ます・・はい・・」


魔王の主張もハカセの眼力を前に弱くなる。


「ふむ。ドクターもこの意見には賛成かね」

「賛成も何も・・あの子の力は勇者そのものだよ・・、魔王様の側から離すのは少し危険だ。

今はね。でも魔王様の意見も最もで、彼にはまだ休息が必要だ」

「一年近く経ってもかね」

「人間のトラウマは2年近く費やさないと克服できな」

「それは君の意見か?それとも」

「・・はい・・学会の・・・総評です・・」

「素直に認めるのは良い行いだ。例外は少なからずある、と言う事だな?」

「・・・僕の口からは何とも・・」


とうとうハルトまで言いくるめてしまったハカセは、白衣を翻し魔王を指差す。



「丁度良い頃合いだろう。


仔熊を私の所に連れて来るがいい貴様様。


私が、一日でそのトラウマを克服、及び呪詛を解き放ってくれよう!!!」


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