第91話

 翌朝、まだ太陽が昇る前。ミツキ達は早くも起き出し、準備にかかる。

 万能ベルトを腰に巻き、グローブのバンドを二カ所で止める。いつもの防具を胴に装着すると、四つのナイフを両手両足に着けた。これを基本の型として、四人のミツキは自らの名前に合った武器を身に着ける。

 ソードは赤い片手剣、そして普通の片手剣に、二本の短剣を腰から下げる。小さな盾を腕に着けて、旅隊から奪い取った外套を纏う。最後に両手剣を斜めに背負うと、三点ベルトで固定した。

 メイスは二つのメイスと短剣と、腕には盾を、背にはフレイルを一つずつ。クロスは矢筒と二丁のクロスボウ、グレイは短剣と片手剣と、新しい薙刀を背負う。

 着替えは全て置いていく。そのほか戦闘に使わない荷物も全て残していく。可能な限り整理して、小さなポーチだけで済ませる。

 もし万が一、着替えが必要になったなら、その時は取りに戻って来ればいい。

 三人のミツキ達の間を抜けて、馬の首に手を当てる。脈動はグローブ越しでも感じられるほど力強く、そして温かい。真っ黒な瞳に映る自分を見ながら、二度、三度、首筋に沿い撫で上げた。

 重くて長い、先端が平たくなった騎兵用の槍に、同じく騎兵用の大きな盾を手に持って黒い毛並みの馬に跨る。相当な重量だが馬は何とも思わぬようで、よろめく事もなかった。

 山と山の合間から陽が昇る。新しい夜明けの光だ。

 全員の準備がようやく整った。各々の馬に跨り槍と盾を携えて、鹵獲した外套を風に膨らませる。ソードは三人へと振り返ると槍の柄で地を突いた。

「じゃ。予定通りに」

 ミツキ達は無言で頷き背を向ける。予定通りに。それ以上の言葉は一切必要ない。それぞれがそれぞれの方角へ、姿を消すのを見届けると、馬の腹を蹴り上げて街道を帝都に向かって駆けだした。

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