第82話
帝都の外でクロスと、そして新たなミツキの二人と合流し、旅の物資を補充する。何着かの着替えに数日分の携帯食料、そして短剣に予備のナイフ、新品のバックラーを手持ちに入れる。
ソードの荷物はメイスとクロスが運び出していてくれた。武器の損耗も少なめで済んだ事もあり、武器の補充はしなかった。
新たなミツキは自らの名をグレイと名乗ることにしたようだ。クロスが命名し、由来はグレイが選んだ薙刀からだった。
グレイは、ソードと同じく両手足のナイフに加え、腰から短剣と片手剣を共に二本ずつ下げている。盾は無く、身長程もある薙刀を背に背負う。メイスやクロスと同じ防具に外套を纏い、雑多な荷物はポーチと背負い袋に入れていた。
厚く雪の積もった峰を超え、四人のミツキは街道を北上する。
道中、会話は全くなかった。
皆が同じ方角を向き、無言のまま歩き続ける。とりわけソードの眼つきはやけに鋭く、すれ違う旅人たちは揃いも揃って、俯きながら急ぎ足で離れて行く。
馬も無く。来た時以上に時間を掛けて街に着く。ギルドに立ち寄ることもせず、人目を避けて物資を補充し街を発つ。
数日ばかり歩き続け、四人は街道を逸れる。草や木の葉に覆われた、獣道にも似た道は、旧都を中心に広がる旧街道の入り口だった。
旧街道の崩れかけた橋を越える。ソードは腰のカンテラに炎を灯すと手に持って、通り抜けられるかもわからない洞窟の中へと入っていく。
洞穴内に吹き込む風が唸りのような音を奏でる。特に興味を惹かれるような物も無く、灯りも届かぬ闇の奥へと、四人は黙って進む。
昼か夜かも分からなくなる程長い時間を歩き続ける。体感だけを当てにして適当な時間に食事を済まし、外套の中に包まって寝て、起きてなおまだ闇だった。
いつまでも続く闇に、メイスが口を開きかけた時だった。
四人の行く手に、ついに光が現れる。青くて白い、天より差し込む明るい月の光だ。ソードは頭を屈めて外に出ると、月の光の下に立った。
青い光の世界は、木々がわずかに点在するだけで、葉も花も無く枯れ木にも見える。砂を含んだ風が吹きソードの外套を強く引く。悪戯な風が笑いながら逃げる先には、崩落しかけた城が闇の中でなお、かつての威光を放っていた。
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